ここから本文です。
答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成24年8月8日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成24年8月24日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める。」というものである。
異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
意見書による主張は、次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、次のとおりである。
条例第7条第2号の該当性について
本号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本号に該当するとして非公開とした本件行政文書は、いずれも県農協がその運営に当たって必要とされる各種事業の取扱い等を定めたものであり、専ら法人内部で使用し、その内容等を法人外に明らかにしているものではない。
したがって、これらを公にすることにより、当該法人の自由な事業活動や競争上の地位が損なわれるなど正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号本文に該当する。また、同号ただし書に該当しない。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
本件行政文書1は、県農協において、農業協同組合法(昭和22年法律第132号。以下「法」という。)第11条に基づき、同法第10条第1項第3号の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めたものであり、事業の種類及び事業の実施方法に関して主務省令で定める事項が記載されている。
本件行政文書2は、県農協において、法第11条の23に基づき、同法第10条第3項の信託の引受けの事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めたものであり、事業の実施方法及び信託契約に関して農林水産省令で定める事項が記載されている。
本件行政文書3は、県農協において、農業倉庫業法(大正6年法律第15号)第6条に基づき、同法第1条又は第2条の各号の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めたものである。
本件行政文書4は、県農協において、法第11条の29に基づき、同法第10条第5項の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めたものであり、事業の実施方法及び宅地等供給事業に係る契約に関して農林水産省令で定める事項が記載されている。
本件行政文書5は、県農協において、法第11条の7に基づき、同法第10条第1項第10号の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めたものであり、事業の種類その他事業の実施方法、共済契約、共済掛金及び責任準備金の額の算出方法に関して農林水産省令で定める事項が記載されている。
本件行政文書6は、県農協において、法第11条の7に基づき、同法第10条第1項第10号の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めた共済規程の附属書として、自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に基づいて県農協が行う自動車損害賠償責任共済の事業の実施方法、共済契約及び共済掛金に関する事項について定めたものである。
本件行政文書7は、県農協において、業務の能率的運営及び責任体制の確立をはかることを目的として、証券業務に関する組織、業務分掌及び職務権限の基準を定めたものである。
本件行政文書8は、県農協において、国債証券及び地方債証券並びに政府保証債券(以下「国債証券等」という。)に係る保護預り業務及び口座管理業務について必要な事項を定めたものである。
本件行政文書9は、県農協において、国債証券等の売買における価格形成を公正ならしめ、もって投資家の保護に資することを目的として、国債証券等の買取等の価格設定について必要な事項を定めたものである。
本件行政文書10は、県農協において、法第11条に基づき、同法第10条第1項第3号の事業を行うため、香川県知事の承認を得て必要な事項を定めた信用事業規程の実施に必要な詳細事項について定め、香川県知事へ届け出ることとされている信用事業方法書(以下「信用事業方法書」という。)のうち、為替業務を行うに当たって必要な事項を定めたものである。
本件行政文書11は、県農協において、信用事業方法書のうち、資金の貸付け及び手形の割引、債務保証並びに有価証券の貸付けを行うに当たって必要な事項を定めたものである。
本件行政文書12は、県農協において、信用事業方法書のうち、法第10条第6項第6号及び同項第17号に係る事業を行うに当たって必要な事項を定めたものである。
本件行政文書13は、県農協において、信用事業方法書のうち、法第10条第6項第5号及び同条第7項に係る事業を行うに当たって必要な事項を定めたものである。
本件行政文書14は、県農協において、信用事業方法書のうち、法第10条第7項に係る業務のうち、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項第10号に掲げる有価証券について、同法第33条第2項第2号に掲げる行為を行うに当たって必要な事項を定めたものである。
本件行政文書15は、県農協において、信用事業方法書のうち、金融機関等の業務代理を行うに当たって必要な事項を定めたものである。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした本件行政文書について検討する。 審査会において見分したところ、本件行政文書は、県農協がその運営等を行うために作成する諸規程であることから、一般的には、専ら法人内部でのみ使用し、内容等を法人外に公にすることのない情報であるものと認められる。
一方、異議申立人は、本件行政文書は、法人外の多数の組合員個人に開示されているものであり、公開される必要があると主張している。
そこで、本件行政文書を詳細に確認したところ、本件行政文書1、2、4、5及び6については、法第29条の2第2項において、組合員及び組合の債権者は、組合の業務時間内は、いつでも、理事に対し、閲覧の請求又は謄本若しくは抄本の交付の請求をすることができると規定されており、閲覧等を請求できる者が限定されていることから公にされているものではないと認められる。異議申立人は、組合員を法人外と主張するが、法律で定義するまでもなく、農協は組合員で構成されていることは明らかであることから、当該主張は当たらない。1、2、4、5及び6以外の本件行政文書については、法及び香川県農業協同組合定款に閲覧等に関する規定が置かれておらず、公にされることが予定されていない。なお、本件行政文書8で定める保護預り規定兼振替決済口座管理規定は、利用者へ交付することとされているが、交付される者が利用者に限られていることから、本件行政文書8は公にされているものではないと認められる。
よって、これらの規程が条例により広く一般に公開された場合には、当該法人の運営方針など内部管理に関する情報が明らかとなり、自由な事業活動や競争上の地位が損なわれるなど正当な利益を害するおそれがあると認められる。
また、異議申立人は、農協の法的性質を理由に、条例第7条第2号ただし書の該当性を主張しているが、本件行政文書が、当該法人の事業活動により、現に発生しているか、将来発生するおそれがある危害から、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報であると解すべき事情は見当たらない。この点について、異議申立人も、当該法人の事業活動によって危害が生じ、又は生ずるおそれについて具体的に言及していないことから、異議申立人の当該主張は当たらない。
したがって、本件行政文書は、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
なお、異議申立人は、仮に、当該行政文書が一切開示されないと仮定すると、法令により香川県知事に付与された指導監督権限の行使を、県民が適正に監視することができなくなると主張している。しかしながら、条例は、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深めることを目的としているが、個別の公開請求の公開・非公開については、条例第7条各号に掲げる非公開情報該当性を判断するものであることから、個別の事務に関する当該主張が当審査会の上記判断を左右するものではない。
条例の解釈、運用に関するものではないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
このページに関するお問い合わせ