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公開日:2009年9月11日

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平成21年9月11日 答申第462号(香川県情報公開審査会答申)

平成21年9月11日(答申第462号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成20年10月16日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)平成18年4月以降の小学校、中学校、高校の教員の懲戒免職処分の内容、件数の分かる一切の文書
  • (2)上記(1)の処分に関して県内各教育委員会から提出された一切の報告書類
  • (3)懲戒処分の基準を記載した一切の文書
  • (4)懲戒処分の公表の基準を記載した一切の文書

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として別表1に掲げる行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定し、本件行政文書1~4については、別表2の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、本件行政文書5~7については、公開決定を行い、平成20年12月15日付けで異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成20年12月19日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

  • (1)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」記載の非公開理由は、誤りである。特に記者発表資料には、非公開情報は含まれていない。
  • (3)本件「決定通知書」記載の非公開理由は、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例(平成7年香川県条例第5号)第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 本件行政文書の内容について

本件行政文書は、別表1の文書で構成されており、教職員に対する懲戒処分を行うに当たっての調査の内容及び検討事項等が記載され、処分等の検討、決定、報道発表等に用られたものであり、個別の内容については次のとおりである。

  • (1)本件行政文書1-(a)、2-(a)、3-(a)
    • 関係教育事務所長から県教育委員会教育長あての学校事故報告書の進達書
  • (2)本件行政文書1-(b)、2-(b)、3-(b)
    • 関係市町教育委員会教育長から県教育委員会教育長あての学校事故報告書の副申書
  • (3)本件行政文書1-(c)、2-(c)、3-(c)
    • 学校長から関係市町教育委員会教育長あての学校事故報告書の写し
  • (4)本件行政文書1-(d)、2-(d)、3-(d)
    • 香川県教育職員等分限懲戒審査委員会に提出した資料
  • (5)本件行政文書1-(e)、2-(e)
    • 関係教育事務所長から県教育委員会教育長あての県費負担教職員の処分についての進達書
  • (6)本件行政文書1-(f)、2-(f)、3-(e)
    • 関係市町教育委員会教育長から県教育委員会教育長あての県費負担教職員の処分についての内申書
  • (7)本件行政文書1-(g)、2-(g)、3-(f)、4-(a)
    • 解雇予告除外認定申請書の起案文書の表紙、起案理由
    • 県教育委員会教育長から関係市町長及び香川県人事委員会委員長あての解雇予告除外認定申請書案
    • 県教育委員会教育長から関係市町長あての解雇予告除外認定申請書鑑案
    • 義務教育課長から関係教育事務所長あての通知文案
  • (8)本件行政文書1-(h)、2-(h)、3-(g)、4-(a)
    • 関係市町長及び香川県人事委員会委員長から県教育委員会あての解雇予告除外認定書
  • (9)本件行政文書1-(i)、2-(i)、3-(h)、4-(b)
    • 県費負担教職員、県立学校教職員の懲戒処分等の起案文書の表紙、起案理由
    • 処分等の内容が記載された辞令書案
    • 処分理由が記載された処分説明書案
    • 調査報告書・県教育委員会教育長から関係市町教育委員会教育長、関係教育事務所長、関係県立学校長及び香川県人事委員会委員長あての懲戒処分通知案
  • (10)本件行政文書1-(j)、2-(j)、3-(i)
    • 県教育委員会会議録
  • (11)本件行政文書1-(k)、4-(c)
    • 記者発表用資料
  • (12)本件行政文書1-(l)、4-(d)
    • ホームページ掲載用資料

2 一部公開の該当性について

  • (1)本件行政文書1-(a)(b)(c)、2-(a)(b)(c)、3-(a)(b)(c)
    これらの文書は、学校長、関係市町教育委員会教育長及び関係教育事務所長から提出された学校事故報告書、副申書及び進達書であり、教員及び関係者の所属、職名、氏名、年齢、性別、住所、事故発生及びその後の経過に係る日付、時間、場所、学校名、市町名、市町教育委員会名等が記載されており、これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    さらに、当該文書には関係者しか知り得ない当該事故に関する詳細な情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれを生じることから、条例第7条第4号に規定するところの、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれのある情報であることは明白である。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、学校事故報告書については、審査会答申第226号及び第227号により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。
  • (2)本件行政文書1-(d)(e)(f)(i)、2-(d)(e)(f)(i)、3-(d)(e)(h)、4-(b)
    • (a)本件行政文書1-(i)、2-(i)、3-(h)及び4-(b)のうち、調査報告書について
      調査報告書には、対象職員の所属、職名、氏名、経歴、関係者から事情聴取した事件の概要、経緯、関係機関への照会に対する回答、懲戒処分等を行うに当たっての検討事項など具体的な状況が記載されている。これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
      県教育委員会においては、事件が発生した場合、事件の当事者である本人のほか、上司、同僚等の関係者に対する事情聴取を行うとともに、関係機関に照会を行い、必要に応じて関係資料の提出を求め、調査、分析を行っているが、これらの事情聴取等は、県教育委員会に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われているものである。したがって、調査報告書が公開されることにより、関係当事者間の協力関係、信頼関係を損ない、正確な情報を収集することが困難となるため、調査に支障をきたすおそれがある。さらに、処分等を行うに当たっての考え方及び身分取扱いの具体的な状況等については、懲戒処分等を公正に行うため、秘密を前提に記載されるのが通常であることから、一般に知られることにより、的確な記載がされず、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する。
      以上のことから、調査報告書は非公開に該当するものである。
      なお、調査報告書については、審査会答申第245号及び第446号により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。
    • (b)調査報告書以外の文書について
      香川県教育職員等分限懲戒審査委員会付議事案には、対象職員の所属、職、氏名、本人の弁明等、懲戒処分等に当たっての検討事項、処分等案など具体的な状況が記載されている。県費負担教職員の地方公務員法に基づく懲戒処分については、市町教育委員会の内申を待って決定する事務を行っており、その内申書は、関係教育事務所長から県教育委員会教育長あて進達されるものである。これらの文書には、教員及び関係者に係る所属名、職名、氏名、年齢、性別、処分内容、関係教育委員会名、関係教育事務所名、関係教育委員会の公印の印影等が記載されており、これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
      また、懲戒処分等に当たっての検討事項、処分等案などについては、人事管理に関する情報であり、公開することにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する。
      以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (3)本件行政文書1-(g)(h)、2-(g)(h)、3-(f)(g)、4-(a)
    これらの文書は、教職員の懲戒処分に係る解雇予告除外認定申請書及び認定書であり、被処分者及び関係者に係る所属、所属先の所在地、職名、性別、雇入年月日、処分等の対象となった事件の発生及びその後の経過に係る年月日・日時・場所、学校名、関係市町名、関係教育事務所名、関係市町の公印の印影等の情報が記載されており、これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (4)本件行政文書1-(j)、2-(j)、3-(i)
    これらの文書は、香川県教育委員会臨時会の会議録であり、教員及び関係者に係る職名、氏名、年齢、関係する年月日、住所等の情報が記載されており、これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    また、懲戒処分等の人事に係る事務に関し、委員の発言内容が公になるということになると、率直な意見の交換が損なわれるおそれがあり、公正かつ円滑な審議の確保に支障を及ぼすおそれがあることから条例第7条第4号に該当する。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、県教育委員会会議録については、審査会答申第256号により、条例第7条第1号に該当すると判断されているものである。
  • (5)本件行政文書1-(k)(l)、4-(c)(d)
    これらの文書は、記者発表資料等であり、被処分者の所属先の所在地、職名、年齢、性別及び事件に関する具体的な情報が記載されており、これらの情報は、被害者等の特定につながる情報であるので、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報である。
    また、「懲戒処分等の公表基準」により、懲戒免職処分の場合と被処分者が管理職である場合等、社会に及ぼす影響が著しい場合は、被処分者の所属及び氏名を明らかにして処分の概要等を公表しているが、これらの文書に係る事件は、いずれもセクシュアル・ハラスメント又はわいせつ事案というセンシティブな内容であることから、その取扱いは十分慎重に行われるべきであり、報道機関に被害者等の個人が特定されないように配慮を依頼した上で情報提供したものであった。したがって、通常の記者発表とは性格が異なることから、当該情報が、公表済み情報であるとまでは言えず、同号ただし書に該当しない。
    以上のことから、当該文書は、非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、記者発表資料等については、審査会答申第256号及び第446号により、条例第7条第1号に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断されているものである。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

実施機関は、県教育委員会事務局及び学校その他の教育機関の職員並びに県費負担教職員について、服務義務違反やその他の法令違反等の非違行為の疑いがある場合又は公務能率の維持向上のため必要がある場合には、その任命権に基づき、必要な調査、情報の収集、事実関係の把握を行い、地方公務員法(昭和25年法律第261号)に基づく懲戒処分若しくは分限処分又は服務監督権に基づく措置を行う必要性を検討し、県費負担教職員に対しては、市町教育委員会の内申をまって、同法に基づく懲戒処分又は分限処分を行う必要性を検討し、その措置の内容をそれぞれ決定する事務を行っている。
本件行政文書は、教職員の非違行為に対し、学校、市町教育委員会及び県教育事務所から提出された文書に基づき調査を行い、県教育職員等分限懲戒審査委員会で審査し、県教育委員会に付議の上、当該懲戒処分を決定する過程で実施機関が作成又は取得した行政文書であり、その調査内容及び検討事項等が記載されている。これらの行政文書の個別の内容については、実施機関の説明のとおりである。

3 非公開情報該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。

  • (1)別表2の「公開しない部分」の1(調査報告書)について
    審査会で見分したところ、調査報告書は、いずれもセクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為に関する事件について調査した結果をまとめた文書であり、被処分者の所属、氏名、住所、年齢及び経歴、事件の概要及び経緯、事件当事者やその家族の主張及び行動、懲戒処分を行うに当たっての検討事項等が、具体的かつ詳細に記載されている。これらの情報は、加害者である被処分者、被害者等の個人に関する情報であり、関係者からの事情聴取等によって取得した情報又はそれに基づいて作成した情報である。そして、その事件の性格から、個人情報の中でも特に取扱いに注意すべきセンシティブな情報であり、関係者しか知り得ない情報であると認められる。
    よって、調査報告書は、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、個人の人格権を侵害するなど権利利益を害するおそれがある情報であるので、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    また、このような事件が発生した場合、実施機関は、事件の当事者である本人のほか、上司、同僚等の関係者から事情聴取を行うとともに、関係機関に照会を行い、必要に応じて参考となる関係資料の提出を求め、調査、分析を行っている。そして、これらの事情聴取等は、実施機関に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われるものであり、調査報告書を公にすれば、関係当事者間の協力関係や信頼関係が損われるとの実施機関の主張は是認できる。
    したがって、調査報告書を公にすれば、将来の同様な事件の調査において、関係者からの事情聴取等に際し関係者が報告することに躊躇したり、調査に対し十分な協力をしなくなるなど、懲戒処分の決定に必要とされる正確な情報を収集することが困難になると認められる。
    よって、調査報告書は、公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当すると判断される。
  • (2)別表2の「公開しない部分」の2のうち、本件行政文書1の(j)、2の(j)及び3の(i)の県教育委員会会議録の非公開部分について
    審査会で見分したところ、本件行政文書の県教育委員会会議録には、関係者の役職名、氏名、学校名、関係する日時及び場所、事件の経緯、事件当事者の主張及び行動、関係者に対する評価、懲戒処分を行うに当っての検討事項等の事件関係者の権利利益に関わる情報が全体にわたって記載されていること、質疑を始める前に、議案が条例第7条第1号及び第4号に該当するため会議を非公開とする議決をしていること、非公開部分は、質疑の内容全部とそれ以外の部分のうち一部であることが確認された。
    県教育委員会会議録の非公開部分については、上記(1)と同様に、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、個人の人格権を侵害するなど権利利益を害するおそれがある情報であると認められる。
    よって、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    また、本件行政文書の県教育委員会の会議については、香川県教育委員会傍聴人規則(昭和52年香川県教育委員会規則第8号)第6条の規定に基づく議決により非公開で行われ、出席者は非公開を前提として、教員の懲戒処分という人事管理に関する意見交換を行っている。さらに、その懲戒処分の理由が、セクシュアル・ハラスメント又はわいせつ行為というセンシティブなものであることから、このような質疑を会議後に公開すれば、将来の同様な非公開の会議において、公開されることをおそれて率直に意見を交換することに躊躇するなど、公正かつ円滑な審議に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
    よって、県教育委員会会議録の質疑の部分は、条例第7条第4号に該当すると判断される。
  • (3)別表2の「公開しない部分」の2のうち、本件行政文書1の(j)、2の(j)及び3の(i)の県教育委員会会議録以外の非公開部分について
    審査会で見分したところ、当該非公開部分には、関係者の役職名、氏名、年齢、性別、住所、学年組、教科、学校名及びその特定につながる部分、関係する日時及び場所、被害の程度、事件当事者やその家族の主張及び行動、懲戒処分を行うに当たっての検討事項等が記載されている。
    実施機関は、これらの情報は、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると主張している。
    本件行政文書は、全てセクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為の事件に関するものであり、加害者である教員は全て懲戒免職処分となっており、本件公開請求により既に公開している情報だけでなく、事件に関係する学校の生徒、保護者等が入手可能と思われる情報を合わせれば、当該非公開部分を公にすることにより、特定の学校の事件に関するものと推測され、結果的に被害者が識別されるおそれがあることは否定できない。
    また、当該非公開部分のうち、特定の個人を識別することができる可能性が少ないと考えられる部分であっても、セクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為の事件に関するセンシティブな内容が記載されているので、公にすることにより、被害者等に精神的な苦痛を与え、人格権を侵害するなど個人の権利利益を害するおそれがあるので、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
    しかし、これらの情報のうち、本件行政文書1の(k)、1の(l)、4の(c)及び4の(d)の記者発表資料等の非公開部分については、懲戒処分決定時に記者発表していることから、同号ただし書アに該当し、公開すべき情報であると考えられないこともない。
    この点について、実施機関から「香川県教育委員会の懲戒処分等の公表基準」により、免職の懲戒処分である場合と被処分者が管理職である場合は、被処分者の所属及び氏名を明らかにして処分の概要等を公表しているが、当該事案はセクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為というセンシティブな内容であることから、被害者等の個人が特定されないよう配慮を依頼した上での情報提供であったとの説明があり、通常の記者発表資料とは性格が異なることが認められ、当該情報が、公表済み情報であるとまでは言えず、同号ただし書アには該当しないと判断される。
    また、ただし書イ~エについては、審査会で見分したが、これらの規定に該当する情報は記載されていないと認められる。
    よって、当該非公開部分は、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。

4 異議申立ての理由のうち、(3)について

条例の解釈、運用に関するものではないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。

(省略)

別表1

  1. 平成19年5月25日付け県費負担教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)教員の香川県青少年保護育成条例違反について(進達)(平成19年6月7日付)
    • (b)教職員の事故の発生について(報告)(平成19年5月25日付)
    • (c)学校事故報告書(職員等事故)(平成19年5月25日付)
    • (d)香川県教育職員等分限懲戒審査委員会付議事案
    • (e)県費負担教職員の処分について(進達)(平成19年5月23日付)
    • (f)県費負担教職員の処分について(内申)(平成19年5月23日付)
    • (g)解雇予告除外認定申請書について(平成19年5月23日付)
    • (h)解雇予告除外認定について(平成19年5月23日付)
    • (i)教職員の懲戒処分等について(平成19年5月25日付)
    • (j)平成19年度香川県教育委員会5月臨時会議事録
    • (k)記者発表資料
    • (l)教育委員会結果概要及び香川県情報NAVI用資料
  2. 平成20年8月7日付け県費負担教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)教職員による事故の発生について(進達)(平成20年7月22日付)
    • (b)教職員による事故の発生について(副申)(平成20年7月18日付)
    • (c)学校事故報告書(職員事故)(平成20年7月9日付)
    • (d)香川県教育職員等分限懲戒審査委員会付議事案
    • (e)県費負担教職員の処分について(進達)(平成20年7月25日付)
    • (f)県費負担教職員の処分について(内申)(平成20年7月24日付)
    • (g)解雇予告除外認定申請書について(平成20年7月28日付)
    • (h)解雇予告除外認定申請について(平成20年7月29日付)
    • (i)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成20年8月7日付)
    • (j)平成20年度香川県教育委員会8月臨時会議事録(平成20年8月7日付)
  3. 平成20年10月3日付け県費負担教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)教職員の事故について(進達)(平成20年9月12日付)
    • (b)学校事故について(副申)(平成20年9月10日付)
    • (c)学校事故報告書(職員等事故)(平成20年9月10日付)
    • (d)香川県教育職員等分限懲戒審査委員会付議事案
    • (e)県費負担教職員の処分について(内申)(平成20年9月22日付)
    • (f)解雇予告除外認定申請書について(平成20年9月22日付)
    • (g)解雇予告除外認定申請について(平成20年9月24日付)
    • (h)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成20年10月3日付)
    • (i)平成20年度香川県教育委員会10月臨時会議事録
  4. 平成20年11月12日付け県立学校教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)解雇予告除外認定申請書について(平成20年11月11日付)
    • (b)県立学校教職員の懲戒処分等について(平成20年11月12日付)
    • (c)記者発表資料
    • (d)教育委員会結果概要及び香川県情報NAVI用資料
  5. 職員の交通事故及び違反に係る懲戒処分の基準
  6. セクシャル・ハラスメント等に係る懲戒処分の基準
  7. 香川県教育委員会の懲戒処分等の公表基準

別表2

公開しない部分 公開しない理由
1.
  • (a)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成19年5月25日付)のうち、調査報告書
  • (b)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成20年8月7日付)のうち、調査報告書
  • (c)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成20年10月3日付)のうち、調査報告書
  • (d)県立学校教職員の懲戒処分等について(平成20年11月12日付)のうち、調査報告書
条例第7条第1号該当
特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため。

条例第7条第4号該当
関係者しか知り得ない当該事案に関する調査情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより、関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれがあるとともに、人事管理に関する事務若しくは、将来の同種の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
また、委員の率直な意見の交換が損なわれるおそれがあるなど、審議に支障を及ぼすおそれがあるため。
2.公開請求に係る行政文書のうち、次の部分(公開部分を除く。)
  • (a)教員及び関係者に係る役職名、氏名、年齢、性別、住所、部・学年組、所属部・学科、分掌名、担任をしている学年・組、教科、部活動、所属学校を設置している市町の別、被害の程度など、個人が特定され、または個人の権利利益を害する部分
  • (b)関係する年月日、曜日、時刻、校時など、日時が特定される部分
  • (c)個人及び学校の特定につながる場所の所在地・住所など
  • (d)警察署、病院等の名称及び所在地等に関する情報で、個人や学校の特定につながる部分
  • (e)事実関係、状況等のうち、個人及び学校の特定につながる部分、個人の権利利益を害することにつながる部分及び任意の協力に基づく調査等に関する情報、または人事管理に関する情報
  • (f)文書番号、校長の所属・氏名・公印の印影、市町教育委員会の名称・公印の印影・文書番号、市町教育委員会教育長の氏名及び教育事務所名など、学校の特定につながる部分

401号~450号 451号~500号 501号~

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