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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った本件処分1は、妥当である。
実施機関が行った本件処分2は、妥当である。
異議申立人は、本件処分1及び本件処分2を不服として、平成24年1月6日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して併合して異議申立てを行った。
「本件処分1及び本件処分2を取り消すとの決定を求める。」というものである。
異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
平成20年度医療提供体制推進事業費補助金(平成20年度歯科衛生士養成所初年度設備整備費補助金550万円、平成20年度歯科衛生士養成所施設整備費補助金6,045万円)特定社団法人会館建設費補助金2,377万5千円については、国民、県民の血税であり、その使途・使用方法、金の流れは適正かつ、公明正大でなければならない。この知る権利が対象の法人の権利や競争上の地位その他の正当な利益を害するものではない。
意見書による主張は、おおむね次のとおりである。
平成24年4月13日付け24香情審第4270号回答について、意見申し立ておよび、改めて情報公開請求をするものである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第2号の該当性について
条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
非公開とした部分は、法人の口座情報である。当該情報は、一般に公開されていない法人が事業活動を行う上で経理上極めて重要な内部管理情報に属する情報であり、公開することにより当該法人に不利益を与えることが明らかであることから、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書きに該当しない。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たって、非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書1は、特定専門学校新築工事に対する補助金について、当該専門学校の開設者である特定社団法人に対して支出するための支出命令書である。
本件行政文書2は、特定社団法人会館新築工事に対する補助金について、特定社団法人に対して支出するための支出命令書である。
本件行政文書3は、特定専門学校新築工事に伴う設備整備に対する補助金について、当該専門学校の開設者である特定社団法人に対して支出するための支出命令書である。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開としたのは、本件行政文書のうちの法人の口座情報が記載された部分である。
口座情報は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開べき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がそのような管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
本件処分1及び本件処分2により非公開とされた口座情報は、実施機関が特定社団法人へ補助金を交付するための支出命令書に記載されており、当該法人がこのような情報を提出する相手方は、実施機関等に限定されていると考えられる。
よって、本件口座情報は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件口座情報を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
なお、異議申立人は意見書において、実施機関の非公開条項該当性の説明に対し、本件のように国民の税金から拠出されている補助金の取り扱いに関する情報については、公の利益に関係するものであるから、条例第7条第2号ただし書にいう「公にすることが必要と認められる情報」として非公開情報から除かれるという主旨の主張をしていると解される。
しかし、本件行政文書の非公開部分は法人の口座情報であり、条例で規定する「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは考えられない。したがって、異議申立人の当該主張は認められず、条例第7条第2号ただし書には該当しない。
異議申立人は意見書において、それぞれの文書の名称を訂正すべきであるという旨の主張をしている。異議申立人の当該主張は、本件行政文書の記載内容が誤っているため記載内容を変更すべきであるという本件行政文書の記載内容の是非に関するものである。
このような請求対象行政文書の記載内容の是非に関する主張はそもそも条例の解釈、運用に関するものではないため、審査会では判断しないものとする。
なお、条例は第1条に規定するとおり、県民の行政文書の公開を請求する権利を定めこれを保障しているが、これは文書の記載内容を審査して変更又は訂正を求める権利までをも含むものではないから、当該主張は条例の保護する異議申立人の権利利益に係る違法、不当の主張ではない。そのため当該主張は、行政不服審査法の趣旨から行うことができない主張であり、いずれにせよ当たらない。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
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