平成21年11月27日 答申第465号(香川県情報公開審査会答申)
平成21年11月27日(答申第465号)
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、平成21年3月15日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の請求を行った。
- (1)香川県内の企業で受け入れている中国人研修生その他の各国の研修生の出身国別の受け入れ人数の分かる資料及び各研修生を受け入れている企業名の分かる資料
- (2)上記(1)の各研修生の受け入れの条件(労働条件その他)の分かる資料
- (3)上記(1)の各研修生と受け入れ企業との間の紛争について記録した一切の文書
2 実施機関の決定
実施機関は、公開請求のあった行政文書として、請求の(1)については一部公開決定を行い、請求の(2)及び(3)については、不存在として本件処分を行い、それぞれ平成21年3月26日付けで異議申立人に通知した。
3 異議申立て
異議申立人は、本件処分を不服として、平成21年4月2日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
第3 異議申立ての内容
1 異議申立ての趣旨
「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
2 異議申立ての理由
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
- (1)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
- (2)本件「決定通知書」記載の非公開事由は、虚偽である。厚生労働省その他の行政官庁からの通知文書又はその写しを香川県は保有しているのである。
- (3)本件「決定通知書」の非公開事由の2の記載も、虚偽である。例えば、香川県知事作成名義の平成16年7月20日付の知事への手紙の○○○○氏に対する回答文書が存在しているのである。
第4 実施機関の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
- 行政文書公開請求書の請求内容である「上記(1)の各研修生の受け入れの条件(労働条件その他)の分かる資料」については、外国人研修生とそれを受け入れている個々の企業との間の研修受入条件を記載した文書を請求しているものと解釈した。
外国人研修生の受入については、現地法人等以外は、中小企業団体などが受入れを行い、その指導・監督の下に組合員である企業が研修生を受け入れる制度となっている。
外国人研修生の受入条件については、県から中小企業団体、企業等に対して調査をしておらず、中小企業団体、企業、外国人研修生等からもそのような文書を取得していないので、この請求内容に該当する行政文書を保有していない。なお、本件異議申立て後に、異議申立人から別の公開請求があり、平成21年5月15日付け21経支第9812号の行政文書一部公開決定通知書により、国等から送付された外国人研修生に関する通知書等である「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針(法務省入国管理局 平成19年12月改訂版)」、「JITCO総合パンフレット」及び「技能実習制度利用企業向け『雇用労働条件管理ハンドブック』(JITCO)」を公開している。
- 行政文書公開請求書の請求内容である「上記(1)の各研修生と受け入れ企業との間の紛争について記録した一切の文書」については、県から中小企業団体、企業等に対してそのような紛争に関する調査をしておらず、中小企業団体、企業、外国人研修生等からもそのような紛争に関する相談を受けていないので、この請求内容に該当する行政文書を保有していない。
第5 審査会の判断理由
1 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
- (1)本件請求の(2)の存否について
本件請求の(2)は、香川県内の企業における外国人研修生の受け入れ条件が分かる行政文書を請求したものである。
審査会で確認したところ、実施機関は中小企業団体、企業等に対して外国人研修生の受入条件については調査をしておらず、中小企業団体、企業、外国人研修生等からもそのような文書を取得していないことが認められた。
また、実施機関は、本件請求は外国人研修生とそれを受け入れている個々の企業との間の研修受入条件を記載した行政文書を請求しているものと解したため、国等から送付された外国人研修生に関する通知書等は該当しないと判断したと主張している。
外国人研修生の受け入れは、中小企業団体等が受入れを行い、その指導・監督の下に組合員である企業が研修生を受け入れる制度となっていることから、その受け入れ条件の詳細は、各中小企業団体又はその組合員である各企業ごとに異なる場合があると考えられる。
そうすると、本件請求が「香川県内の企業で受け入れている」と地域を限定していることから、一般的又はモデル的な受け入れ条件ではなく、香川県内の各中小企業団体又はその組合員である各企業が、現在定めている具体的な受け入れ条件がわかる行政文書の公開を求めたものと解されるため、国等から送付された指針等は本件請求対象行政文書に該当しないという実施機関の主張は是認できる。
よって、実施機関が請求対象行政文書が存在しないとして、非公開とした本件処分は妥当であると判断される。
- (2)本件請求の(3)の存否について
本件請求の(3)は、外国人研修生と受け入れ企業との紛争について記録した行政文書を請求したものである。
審査会で確認したところ、香川県行政組織規則に記載されている実施機関の分掌事務において、実施機関は外国人研修生と受け入れ企業との紛争に関することは所管しておらず、そうした紛争についての調査、相談及びあっせん等の事務を行わなければならないとする法的根拠はないこと、そして実際に、実施機関が外国人研修生と受け入れ企業との紛争についての調査、相談及びあっせん等の事務を行っていないことが認められた。そのため、実施機関が外国人研修生と受け入れ企業との紛争について行政文書を作成したり、外国人研修生又は受け入れ企業から文書を取得する必要性もないことから、実施機関は外国人研修生と受け入れ企業との紛争について記録した文書を保有していないという主張は是認できる。
なお、異議申立人は、特定個人からの知事への手紙に対する回答文書が、本件行政文書に該当する旨主張するが、当該回答文書については、その存否を答えるだけで、特定個人が外国人研修生について知事へ手紙を提出したか否かという情報が明らかとなり、条例第7条第1号の非公開情報を公開することになる。よって、当該回答文書の有無は、条例第10条に定める、行政文書の存否を明らかにしないで、公開請求を拒否できる情報に該当すると認められるため、審査会では判断しない。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
401号~450号 451号~500号 501号~