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公開日:2009年3月30日

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平成21年3月30日 答申第458号(香川県情報公開審査会答申)

平成21年3月30日(答申第458号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

1 平成20年8月19日付け20土改第25076号による諮問(以下「平成20年度諮問1号」という。)関係

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分1」という。)は、妥当である。

2 平成20年11月13日付け20土改第36310号による諮問(以下「平成20年度諮問2号」という。)関係

実施機関が行った一部公開決定(以下「本件処分2」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

  • (1)平成20年度諮問1号関係
    異議申立人は、平成19年12月17日付けで、香川県情報公開条例(平成12年条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
    土地改良課作成の平成19年11月定例会の経済委員会の付託番号第○○の「陳述調書」中の1の「平成19年11月21日に検査の実施済みである」とした事実に関する一切の資料(検査の結果を含む。)
  • (2)平成20年度諮問2号関係
    異議申立人は、平成20年3月19日付けで、条例第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
    • ア 平成19年12月6日付19東土改第33001-3号文書中に記載した平成19年12月25日までに提出させた対応策を記載した一切の文書
    • イ 平成19年12月6日付19東土改第33001-3号文書の一切の起案文書及びその一切の添付書類・附属書類の各全部

2 実施機関の決定

  • (1)平成20年度諮問1号関係
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として、「土地改良法第133条に基づく土地改良区の検査結果について(平成19年12月6日付け)」(以下「本件行政文書1」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成19年12月28日付けで本件処分1を行い、異議申立人に通知した。
  • (2)平成20年度諮問2号関係
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として、本件行政文書1及び「土地改良区の検査結果の是正について(平成19年12月19日付け)」(以下「本件行政文書2」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成20年4月2日付けで本件処分2を行い、異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により、実施機関に対し、平成20年1月17日付けで本件処分1を不服とする異議申立てを、平成20年4月7日付けで本件処分2を不服とする異議申立てを行った。
なお、異議申立人は、行政不服審査法第25条第1項ただし書の規定により、実施機関に対し、本件処分1については平成20年5月15日に、本件処分2については7月29日に口頭意見陳述を行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

  • (1)平成20年度諮問1号関係
    「本件処分1を取り消すとの決定を求める」というものである。
  • (2)平成20年度諮問2号関係
    「本件処分2を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

  • (1)平成20年度諮問1号関係
    • (a)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分1を取り消し、全部公開をする必要がある。
    • (b)本件「通知書」記載の「公開しない理由」は、条例に規定する非公開事由に該当しない。
    • (c)本件「通知書」記載の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分1は無効である。
  • (2)平成20年度諮問2号関係
    • (a)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分2を取り消し、全部公開をすべきである。
    • (b)本件「決定通知書」記載の「非公開理由」は、条例に規定する非公開事由に該当しない。
    • (c)本件「決定通知書」記載の「非公開理由」は、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分2は無効である。

3 口頭意見陳述における主張

  • (1)平成20年度諮問1号関係
    • (a)本件処分通知書別紙の公開しない部分に「個人の氏名及び役職名」とあり、その公開しない理由を記載している。これは間違っている。土地改良区は公共団体であり、例えば、理事長の氏名というものは個人の氏名であっても公務員の名前は隠せないので、公開しない理由にならない。
    • (b)本件処分通知書別紙の公開しない部分に、当該行政文書に添付されている「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」とあり、その公開しない理由を記載している。これらの部分は、土地改良法に基づく検査であるので公開すべきである。
    • (c)本件処分通知書別紙の公開しない部分に、当該行政文書に添付されている「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」とあり、その公開しない理由を記載している。
      この理由に「土地改良区の検査に関する情報であり、公にすることにより、県の検査に係る事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるため」とあるが、土地改良区は公共団体であり、公開しない方が「県の検査に係る事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがある」ので、解釈を間違っている。公にすることによって、県の事務の適正な執行ができる。土地改良区は公共性のある団体であり、秘密にすることはおかしい。
  • (2)平成20年度諮問2号関係
    • (a)土地改良法第133条に基づく土地改良区への検査請求やその同意者は、検査の結果等について知る権利がある。土地改良法解説(全国土地改良事業団体連合会発行)では検査請求者に対して、検査結果を回答する義務はないと書いてあるが、義務がある。仮に義務がないとしても、検査結果についての請求があれば回答するべきである。行政は公開が原則である。
    • (b)非公開理由欄の記載には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分2は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 平成20年度諮問1号関係

  • (1)条例第7条第1号該当性について
    条例第3条第2項において、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報が保護されるよう最大限の配慮をしなければならないと規定し、原則公開を基本とする行政文書の公開制度の下においても個人に関する情報については、最大限の配慮をして、プライバシーの保護が図られるようこの条例を解釈及び運用するよう求めている。
    これを受けて、条例第7条第1号本文においては、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
    個人の尊厳及び基本的人権尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であるかどうか不明確である場合も含めて、個人に関する情報は非公開を原則としている。
    本件行政文書1のうち本号に該当するため非公開とした部分は、「土地改良区等検査結果報告書」の「1検査土地改良区の名称及び立会人」のうち、個人の氏名及び役職名である。
    これらは、土地改良区の検査に立ち会った当該土地改良区の役職員の氏名及び役職名であり、特定の個人が識別できる個人に関する情報であるので、条例第7条第1号本文に該当する。
    なお、土地改良区の役員の氏名は土地改良法の規定により公告され公にされているが、非公開とした部分は、土地改良区の検査にどの役職員が立ち会っていたかという情報であり、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報ではないので、同号ただし書アに該当しない。また、同号ただし書の他のいずれにも該当しない。
  • (2)条例第7条第2号該当性について
    条例第7条第2号本文においては、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
    本件行政文書1のうち本号に該当するため非公開とした部分は、「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」、並びに「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」である。
    これらは、検査を受けた土地改良区の内部運営に係る情報や、当該土地改良区の検査内容及び結果並びに当該土地改良区に対する評価等に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがある。
    よって、条例第7条第2号本文に該当する。また、これらの情報は、同号ただし書には該当しない。
  • (3)条例第7条第4号該当性について
    条例第7条第4号は、県の機関、国の機関、県以外の地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、公社又は出資法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
    • ア 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
    • イ~オ 略
      本件行政文書1のうち本号に該当するため非公開とした部分は、「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」、並びに「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」である。
      本件行政文書1には、香川県が土地改良法(昭和24年法律第195号)第133条に基づき土地改良区に対して実施した検査に関する情報が記載されているが、当該検査は、土地改良区の健全な運営を確保する観点で行っているものであり、司法上の強制調査権とは異なり、行政法上の任意調査権として位置づけられている。当該検査の実施に当たっては、事実をありのままに記した資料の提出や説明等についての土地改良区の協力が必要であり、検査を効果的、効率的に実施するための前提となっている。そして、このような検査への協力は、香川県が検査によって取得した情報が、守秘義務によって公開されないことに基づいている。
      したがって、これらは、香川県が検査によって取得した情報であり、公開すれば、検査で提供した情報が公開されるということで、今後の検査における土地改良区の協力が得られなくなり、正確な事実の把握が困難となるなど、検査に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
      よって、条例第7条第4号に該当する。
      以上により、本件行政文書について一部公開決定を行ったものである。

2 平成20年度諮問2号関係

  • (1)条例第7条第1号該当性について
    本号に該当するため非公開とした部分は、本件行政文書1の「土地改良区等検査結果報告書」の「1検査土地改良区の名称及び立会人」のうち個人の氏名及び役職名である。
    これらは、土地改良区の検査に立ち会った当該土地改良区の役職員の氏名及び役職名であり、特定の個人が識別できる個人に関する情報であるので、条例第7条第1号本文に該当する。
    なお、土地改良区の役員の氏名は土地改良法の規定により公告され公にされているが、非公開とした部分は、土地改良区の検査にどの役職員が立ち会っていたかという情報であり、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報ではないので、同号ただし書アに該当しない。また、同号ただし書の他のいずれにも該当しない。
  • (2)条例第7条第2号該当性について
    本号に該当するため非公開とした部分は、本件行政文書2のうち印影及び是正方針、並びに本件行政文書1の「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」並びに「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」である。
    これらは、検査を受けた土地改良区の内部管理・管理に係る情報や、当該土地改良区の検査内容及び結果並びに当該土地改良区に対する評価等に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがある。
    よって、条例第7条第2号本文に該当する。また、これらの情報は、同号ただし書には該当しない。
  • (3)条例第7条第4号該当性について
    本号に該当するため非公開とした部分は、本件行政文書2のうち是正方針、並びに本件行政文書1の「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」並びに「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」である。
    本件行政文書1には、香川県が土地改良法第133条に基づき土地改良区に対して実施した検査に関する情報、また本件行政文書2には、当該検査の結果に対する土地改良区の対応策が記載されているが、当該検査は、土地改良区の健全な運営を確保する観点で行っているものであり、司法上の強制調査権とは異なり、行政法上の任意調査権として位置づけられている。当該検査の実施に当たっては、事実をありのままに記した資料の提出や説明等についての土地改良区の協力が必要であり、検査を効果的、効率的に実施するための前提となっている。そして、このような検査への協力は、香川県が検査によって取得した情報が、守秘義務によって公開されないことに基づいている。
    したがって、これらは、香川県が検査及び検査結果の通知によって取得した情報であり、公開すれば、検査に関して提出した情報が公開されるということで、今後の検査における土地改良区の協力が得られなくなり、正確な事実の把握が困難となるなど、検査に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
    よって、条例第7条第4号に該当する。
    以上により、本件行政文書について一部公開決定を行ったものである。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 審査の併合について

平成20年度諮問1号及び平成20年度諮問2号に係る異議申立ては、同一の異議申立人から提出されたものであり、相互に関連している事案であるため併合して審査する。

3 本件行政文書について

本件行政文書1は、東讃土地改良事務所長が県農政水産部長に土地改良法第133条に基づく特定土地改良区の検査結果を報告した文書であり、表紙、「土地改良区の検査結果について」と題する特定土地改良区あての通知書の写し及び「土地改良区等検査結果報告書」から構成されている。
本件行政文書2は、特定土地改良区から東讃土地改良事務所長に提出された検査結果の是正策を報告する文書である。

4 条例第7条第1号の該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書1の「土地改良区等検査結果報告書」に記載された特定土地改良区の立会人の氏名及び役職名である。
これらはいずれも個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であることから、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
次に、ただし書の該当性について検討する。
土地改良区の検査における立会人の氏名及び役職名は、一般に慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報とは認められないので、ただし書アに該当しないと判断される。
また、異議申立人は、口頭意見陳述において、土地改良区の理事長は公務員なので、その氏名等は公開すべきである旨の主張をしているが、条例第7条第1号ただし書ウに規定する公務員等とは、国家公務員法第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法第2条第2項に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)及び地方公務員法第2条に規定する地方公務員並びに独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に規定する独立行政法人等)、総務省設置法第4条第15号の規定の適用を受ける法人(独立行政法人等であるものを除く。)、地方独立行政法人(地方独立行政法人法第2条第1項に規定する地方独立行政法人)、公社及び出資法人(県が資本金その他これに準ずるものを出資している法人(地方独立行政法人又は公社であるものを除く。)のうち実施機関が定める法人)の役員及び職員のことを指しているのであるから、土地改良区の役職員が条例に定める公務員に該当しないことは明らかである。よって、ただし書ウには該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。

5 条例第7条第2号の該当性について

条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書2のうち特定土地改良区理事長の印影である。
本件印影は、特定土地改良区から東讃土地改良事務所に提出された検査結果の是正方針を記載した報告書に押印されているものであり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、県に限定されていると考えられる。
すなわち、本件印影は当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人の各種書類の偽造等に悪用されることなどが考えられる。
よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。

6 条例第7条第4号の該当性について

条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、公開することにより、将来の当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書1のうち「1是正を要する事項」、「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、「役員選任の経緯」及び「審査表」、並びに本件行政文書2のうち「是正方針」であり、これらには、検査での具体的な指摘事項、それに対する対応策、検査における聴取内容等の検査に関する情報が記載されている。
本件検査は、土地改良法第133条の規定に基づき行われたものであり、検査を拒んだ場合は罰則の対象となる。しかし、このような検査権限は、捜査機関による捜索や差押のように直接的・物理的な強制力の行使を伴うものとは異なり、罰則による間接的な担保により心理的に検査の受忍を強制しようとするものであることから、間接強制による担保が用意されているからといって直ちに対象者の全面的な協力が得られるわけではない。したがって、検査の実施に当たり関係者への事情聴取や書類の提出によって正確な事実を把握するためには、土地改良区の検査への協力が必要であり、その協力は検査に関する情報が公開されないという前提によって得られるものであるとの実施機関の主張は是認できる。
また、検査結果には、役員選任に関する詳細な経緯といった役員選任に関わった役員又は組合員など限られた者しか知りえない内部運営に関する情報や当該土地改良区の評価に関わる情報など、当該土地改良区にとって機微な情報が含まれている。
そうすると、仮にこれらの情報が公にされることになれば、今後、土地改良区が検査に対して非協力的又は消極的な態度をとり、その結果、検査における適正かつ公正な評価や判断の前提として正確な事実を把握することが困難になるなど、検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
よって、当該情報は、条例第7条第4号に該当すると判断される。

7 異議申立人のその他の主張について

異議申立人は、実施機関が行った口頭意見陳述において、その他種々の主張をしているが、当審査会の上記判断を左右するものではない。

8 第3の2の異議申立ての理由のうち、(1)(c)及び(2)(c)について

条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。

(省略)

別表

土地改良法第133条に基づく土地改良区の検査結果について(平成19年12月6日付け)
公開しない部分 公開しない理由
個人の氏名及び役職名 (条例第7条第1号本号該当)
特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。
「土地改良区の検査結果について」のうち「1是正を要する事項」

「土地改良区等検査結果報告書」のうち「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」
(条例第7条第2号本号該当)
当該法人の運営内容及び当該法人に対する評価等に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため。

(条例第7条第4号該当)
土地改良区の検査に関する情報であり、公にすることにより、県の検査に係る事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるため。
土地改良区の検査結果の是正について(平成19年12月19日付け)
公開しない部分 公開しない理由
印影 (条例第7条第2号本号該当)
当該法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため。
「是正方針」 (条例第7条第2号本号該当)
当該法人の運営等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の自由な活動や正当な利益を害するおそれがあるため。

(条例第7条第4号該当)
土地改良区の検査に関する情報であり、公にすることにより、県の検査に係る事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるため。

401号~450号 451号~500号 501号~

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