ここから本文です。
答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成21年7月1日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
実施機関は、公開請求のあった行政文書として次の行政文書(以下「本件行政文書1」ないし「本件行政文書5」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成21年7月14日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成21年7月22日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本件行政文書については、個人に対する融資等に関する部分が含まれている。当該部分には、個人の氏名が記載されており、特定の個人が識別され得るとともに、当該個人と○○農協との取引状況等が記載されているので、公開することにより個人の権利利益を害すると認められる。
よって、条例第7条第1号に該当し、ただし書に該当しない。
条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本件行政文書については、本号に該当するとして非公開とした部分には、○○農協並びに○○農協と取引のある法人その他の団体及び事業を営む個人(以下「取引先法人等」という。)の具体的な情報が記載されている。当該情報を公開すれば、○○農協と取引先法人等との取引状況、取引先法人等の資金調達の方法、○○農協及び取引先法人等の財務状況、○○農協の取引先法人等に対する評価、県の○○農協及び取引先法人等に対する評価等が明らかとなる。○○農協と特定の取引先法人等がどのような取引状況にあるのか、また、どのような財務状況にあるのか、○○農協が特定の取引先法人等をどのように評価しているか等の情報は、双方の経営上重要な内部管理に関する情報であり、公開することにより競争関係にある者等によって利用されるなど、○○農協と取引先法人等の運営に支障を及ぼすとともに、不測の事態を招くおそれもあり、○○農協と取引先法人等に不利益を与えることが明らかである。
よって、条例第7条第2号に該当し、ただし書に該当しない。
条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。
本件行政文書については、農業協同組合法(昭和22年11月19日法律第132号)第94条に基づく検査の結果を記載したものである。この検査は、農協の健全な運営を確保するために行っているものであり、行政法上の任意調査権として位置づけられ、司法上の強制捜査権とは異なり、一方的に事務所に侵入し、書類その他の物件を押収し、また農協役職員の身柄を拘束することはできず、権限の行使に当たっては、常に相手方の承諾を必要とする。
また、検査の実施に当たっては、事実をありのままに記した資料の提出や説明など、農協役職員の協力が必要不可欠であり、被検査団体との一定の協力関係が、検査を効果的、効率的に遂行できる前提条件になっている。その「承諾」、「協力」については、検査員が入手した情報が守秘義務によって公開されないことによって成立している。
したがって、検査メモ及び検査指示書の中には、○○農協から検査によって入手した情報が記載されており、それを公開すれば、組合員等に動揺を与えること、競争関係にある者等に利用されることなどによって、その運営上不利益を与えるだけでなく、提供した情報が公開されるということで、今後の検査において、「承諾」、「協力」を得ることができなくなり、正確な事実の把握が困難となるため、検査事務の公正若しくは適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
よって、条例第7条第4号に該当する。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書は、県が農業協同組合法第94条の規定により、○○農協に対し検査を実施することに関して、通知した文書である。これらの文書の個別の内容については、次のとおりである。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
審査会で見分したところ、本件行政文書2のうち「表題及び日付以外の部分」、並びに本件行政文書3のうち「総評」、「主要指摘事項」、「監事監査」及び「その他指摘事項」については、○○農協の検査により明らかとなった事実や検査員が分析、検討した個別具体的な運営上又は事務処理上の指摘事項等が記載されていることが確認された。
これらの情報は、○○農協にとって今後の運営方針の決定や事務の改善のために重要な情報であり、事業上秘密にすべき内部管理情報である。また、これらの情報は、○○農協の取引先法人等の内部管理情報でもある。
よって、これらの情報を公にすることは、他の金融機関等との競争上、○○農協にとって不利益となるばかりでなく、取引先法人等との信用関係において大きな影響を与え、○○農協の運営全般に重大な支障を生じるおそれがあると認められる。
また、本件行政文書3のうち「目次の具体的な指摘事項が分かる部分」については、当該部分に記載されている内容が分かるだけで、○○農協の評価に関わる憶測等が起こる可能性があり、貯金事業等の信用事業を行う○○農協においては、憶測等であっても経営に重大な影響を及ぼすおそれがあることから、公にすることにより、○○農協の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると判断される。
したがって、本件行政文書2のうち「表題及び日付以外の部分」、並びに本件行政文書3のうち「目次の具体的な指摘事項が分かる部分」、「総評」、「主要指摘事項」、「監事監査」及び「その他指摘事項」については、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
公開しない部分 | 公開しない理由 |
---|---|
|
|
このページに関するお問い合わせ