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答申
香川県中讃土地改良事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、本件行政文書2の「事業施行者」欄に記載された特定土地改良区の代表者の職名及び氏名については、公開すべきである。
審査請求人は、平成22年11月17日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金(○○地区)について(平成19年度~平成21年度実施)工事内容の明細とその費用の内訳及検査結果資料」という内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
処分庁は、公開請求のあった行政文書として次の行政文書を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成22年11月30日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。
なお、処分庁は、当初決定の通知書の「公開請求に係る行政文書」の欄に、本件行政文書1から4までの名称ではなく、本件請求の内容を記載していた。
審査請求人は、本件処分を不服として、平成22年12月6日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。
審査請求書において記載している趣旨は、おおむね次のとおりである。
黒ぬりの部分を開示してください。
審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
事業年月日、箇所等について、及び出費全額の明細(出費先を含む)について正しく知るため。
本件事業の利害関係者である為、(正しく)確認する必要がある。
意見書を求めたところ、平成22年度諮問第10号から平成22年度諮問第14号までに対するものと称する意見書がまとめて提出された。しかし、平成22年度諮問第14号についてのものと考えられる主張は記載されていなかった。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの又は特定の個人を識別できないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書きに掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本号に該当するため非公開とした部分は、本件行政文書2「平成21年度農山漁村活性化プロジェクト支援交付金竣工認定調査報告書」の「事業施行者」欄のうち、特定土地改良区の代表者の職名及び氏名である。
これは、事業施行者である当該土地改良区の代表者の職名及び氏名であり、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものである。
よって、この情報は条例第7条第1号に該当する。
条例第7条2号本文では、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
本号に該当するため非公開とした部分は、本件行政文書2のうち別紙の「請負人住所氏名」欄及び「受託人住所氏名」欄、本件行政文書3のうち別紙の「請負人住所氏名」欄及び「受託人住所氏名」欄、並びに本件行政文書4のうち検査資料の「請負人住所氏名」欄及び「請負人」欄であり、各欄には本件事業の請負人又は受託人である法人の名称、所在地、代表者の職名及び氏名が記載されている。
これらは、当該土地改良区の取引先に係る情報であり、法人の経理・経営等に関する内部管理情報のため、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがある。
よって、条例第7条2号本文に該当する。また、同号ただし書には該当しない。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たって、非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書の内容は、次のとおりである。
審査請求人は、本件事業の利害関係者であるため、本件行政文書の黒塗りの部分を開示するべきとの主張をしている。
しかしながら、条例による公開請求は、請求の目的のいかんを問わずいずれの請求権者に対しても等しく認められるものであり、審査請求人が利害関係者であるか否かは、条例の非公開情報の公開・非公開の判断に影響を与えるものではないので、審査請求人の当該主張は当たらない。
本件処分における「公開しない部分」及び「公開しない理由」の提示(以下「本件理由等提示」という。)の適否を、審査請求人は主張していないが、審査会として次のとおり考えるのでここに付言する。
条例第11条及び香川県情報公開条例施行規則(平成12年規則第148号)第4条に対応して定められている香川県情報公開事務取扱要領第3の7(2)イ(以下「当該規定」という。)では、行政文書一部公開決定通知書(規則第3号様式)の記載方法について、「『公開しない部分』欄にあっては、その内容が、専門的な知識を有しない人にも十分理解できるよう、分かりやすく、かつ具体的に記入するとともに、公開しない情報が判明しないよう配慮する。また、『公開しない理由』欄にあっては、公開しない部分ごとに、条例第7条の何号に該当するのか、また、当該規定を適用する理由をできるだけ具体的に記入する。なお、複数の非公開事項に該当するときは、該当する条項ごとにその理由を記入する。」とされている。
本件理由等提示は「公開しない部分」として単に「文書の一部」、また「公開しない理由」として単に「個人・法人が特定できるため」とそれぞれ記載しているにすぎない。まず、「公開しない部分」の「文書の一部」という記載は、余りにも包括的かつ抽象的な記載であり、公開しない部分の内容が具体的に記入されているということはできない。また、「公開しない理由」の「個人・法人が特定できるため」という記載は、条例第7条第1号本文及び条例第7条第2号本文該当という意味であると審査会では善解したが、第1に該当する非公開条項すら明示されていないこと、第2に非公開条項を適用する理由としてはあまりに抽象的な記載であること、第3に公開しない部分ごとにどの非公開条項に該当するのかがわかるように記載されていないことの3点から考えて、公開しない理由について当該規定の要求するような具体的な記入がされているということはできない。
以上のように、本件理由等提示は、当該規定に照らして適切ではないと判断される。
処分庁に対しては、今後同様な過誤がないように適切な行政文書公開事務の執行に努めることを望むものである。
また、諮問庁に対しても今後同様な過誤がないように処分庁への適切な助言、指導を望む。
なお、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合の理由の提示については、一般的規定として香川県行政手続条例(平成7年条例第5号)第8条が定められており、同条は条例上の一部公開決定における理由提示にも適用されると解されるが、同条に照らして本件理由等提示が適正か否かは、条例の解釈、運用に関するものではないため審査会では判断しないものとする。よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。第6 審査会の審査経過 当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。(省略)別表 公開しない部分 公開しない理由 文書の一部 個人・法人が特定できるため
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