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公開日:2011年6月9日

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平成23年6月9日 答申第481号(香川県情報公開審査会答申)

平成23年6月9日(答申第481号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県収用委員会(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成22年10月12日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、「新内海ダム開発事業に係る土地その他の収用に関する平成22年7月発表の裁決書の全部」という内容の行政文書の請求を行った。

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として、「二級河川別当川水系別当川内海ダム再開発工事並びにこれに伴う県道及び町道付替工事(以下「本事業」という。)に係る権利取得裁決申請事件及び同明渡裁決申請事件に関する裁決書」(以下「本件行政文書」という。)を特定し、別表の左欄の「公開しない部分」が右欄の「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、平成22年11月10日付けで異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成22年11月13日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。

  • (a)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であるから、本件処分を取り消し、全部公開をする必要がある。
  • (b)「決定通知書」記載の「公開しない理由」は、条例に規定する非公開とできる理由には該当しない。
  • (c)「決定通知書」記載の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条の規定に違反し本件処分は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、次のとおりである。

1 条例第7条第1号の該当性について

条例第7条第1号は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、同号ただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。

  • ア 「個人の住所及び氏名並びに言動等」
    非公開部分に記載されている「個人」とは、法第8条第3項に規定する関係人、土地所有者の相続人、法第88条の規定により通常受ける損失の補償を受ける者、起業地上の立竹木に掛けられた札に氏名等が記載された者、収用委員会に対し意見書等による主張を行った者、土地所有者のうちその所有する土地に物件所有者のための使用権が存在することを認定した者等(登記又は公告により氏名が明らかとなっている者、公務員等を除く。)である。
    同じく「言動等」とは、発言及び行動のほか、相続の事実、土地の境界に関する問題等である。
    これらの情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの又は公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。
  • イ 「物件等の補償金額、種類、数量等」
    非公開部分に記載されている「物件等」とは、工作物及び立竹木のほか、法第88条に規定する通常受ける損失等である。
    同じく「補償金額、種類、数量等」とは、補償金額、種類、数量のほか、権利割合、設置態様、持分割合等である。
    これらの情報は、個人の財産権の具体的内容であり、公開すれば当該個人の権利利益を害することが明らかである。
    また、物件等の存する土地の大半は見通しの悪い山林又は草木が覆うなどした畑地であり、物件等は必ずしも一般人の目に触れるものとは限らず、公開することが予定されている情報ということもできない。
    よって、これらの情報は、個人に関する情報であって、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。
  • ウ 「土地の補償金額」
    非公開部分に記載されている「土地の補償金額」とは、起業者の補償申立額、収用委員会の認定額等である。
    これらの情報は、個人の財産権の具体的内容であり、公開すれば当該個人の権利利益を害することが明らかである。
    また、本件においては、近隣に参考となる公示価格はなく取引事例も稀であるし、昨今の社会経済情勢の急激な変動等の特殊な要素もあることから、一般人にとって本件土地の補償金額の見当をつけることは容易ではない。よって、これらの情報は、性質上不特定の者に知られうる状態にあるものであって公開することが予定されている情報であるとすることはできない。
    以上より、これらの情報は、個人に関する情報であって、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。
  • エ 「委任状況」
    非公開部分に記載されている「委任状況」とは、法第136条第1項の規定に基づく委任関係に係る受任者の住所、氏名等である。
    これらの情報は、個人の意思表示に係る情報であり、公開すれば委任者の権利利益を害することが明らかである。
    また、これらの情報は、法第136条第2項の規定により書面で証明されるものであるが、当該書面は収用委員会に対して提出されるにとどまり、広く一般に公表されるものではない。
    よって、これらの情報は、個人に関する情報であって、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。
  • オ 「交渉経過」
    非公開部分に記載されている「交渉経過」とは、起業者が主張する面談の日時及び結果並びに起業者からの交渉の申入れに対する地権者の対応の状況である。
    これらの情報は、地権者の対応の状況等について具体的に述べたものであり、個人の意見等を推認させるものである。
    よって、これらの情報は、個人に関する情報であって、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。
  • カ 「印影」
    非公開部分に係る「印影」とは、法第66条第2項の規定により行われた収用委員会の会長及び委員の押印に係る印影である。
    収用委員会の会長及び委員は非常勤特別職の公務員であり、公務員の印影に関しては、供覧欄及び決裁欄の職員の印影について、職務遂行に係る職員の氏名と認められる場合には条例第7条第1号ただし書ウの規定により公開すべきとした答申がある(平成17年3月31日香川県情報公開審査会答申第313号)。
    しかし、本件印影は、法第66条第2項の規定による署名押印に係るものであり、職務遂行に係る職員の氏名を表示するためのものではなく、当該文書が真正かつ真意に基づいて作成された文書であることを示すためのものである。
    また、本件印影は、収用委員会の会長及び委員の私印に係る印影であり、仮にこれを公開した場合には、これらの者が作成する各種書類の偽造等に悪用されるおそれなどが考えられる。
    すなわち、本件印影は、条例第7条第1号ただし書ウに規定する「公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名」には該当しないか、仮に該当するとしても、同号ただし書の括弧内に規定する「公にすることにより、当該個人の権利利益を不当に害するおそれがあるもの」に該当し、同号ただし書には該当しないものと考える。
    よって、本件印影は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、かつ、条例第7条第1号ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないことから非公開とした。

2 条例第7条第2号の該当性について

条例第7条第2号は、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。

  • ア 「物件所有者等の住所及び氏名並びに言動等」
    非公開部分に記載されている「物件所有者等」とは、物件を所有するものであって条例第7条第2号に規定する法人等であるものである。
    本件の物件所有者等(以下「本件団体」という。)は、審理において事業を中止すべき旨主張しており、その住所及び氏名並びに言動等を公開すると、物件所有者等に対する外部からの圧力や干渉、事態の混乱を招くことになると判断される。そのような事態となれば、本件団体がその事業に関して自律的な意思決定を行うことが困難となるなど、その正当な利益を害されるおそれがあると考えられる。
    よって、これらの情報は、法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがあることから非公開とした。
  • イ 「物件の補償金額、種類、数量等」
    非公開部分に記載されている「物件」とは、工作物である。
    同じく「補償金額、種類、数量等」とは、補償金額、種類、数量のほか、権利割合、設置態様、持分割合等である。
    本件団体は、権利能力なき社団であり、これらの物件がその資産の大半を占める可能性がある。よって、これらの情報は内部管理情報といえる。
    また、これらの情報は本件団体の活動実態を推認させるものであり、アの情報と並び、公開すると物件所有者等に対する外部からの圧力や干渉、事態の混乱を招くことになると判断される。そのような事態となれば、本件団体がその事業に関して自律的な意思決定を行うことが困難となるなど、その正当な利益を害されるおそれがあると考えられる。
    以上より、これらの情報は、法人等に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがあることから非公開とした。
  • ウ 「委任状況」
    非公開部分に記載されている「委任状況」とは、土地収用法第136条第1項の規定に基づく委任関係に係る委任者及び受任者の住所、氏名等である。
    これらの情報は、法人等又は事業を営む個人の業務に係る情報であり、公開すれば委任者及び受任者の権利利益を害することが明らかである。また、これらの情報のうち、受任者の住所、氏名等については、本件の受任者のうち事業を営む個人に関して、受任者の住所、氏名等を公開すると受任の事実から思想や信条が推認され今後の受任者の事業の傾向に影響するなど、その正当な利益を害するおそれがあると考えられる。
    よって、これらの情報は、法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利又は正当な利益を害するおそれがあることから非公開とした。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件行政文書の内容について

本件行政文書は、土地収用法(以下「法」という。)第47条の2第1項の規定により実施機関が行った、二級河川別当川水系別当川内海ダム再開発工事並びにこれに伴う県道及び町道付替工事に係る権利取得裁決申請事件及び同明渡裁決申請事件に関する裁決書である。
裁決書は、本文部分と別添資料部分とからなり、本文部分は当事者の表示、主文、事実、理由から構成されており、当事者の表示及び主文には、収用する土地の区域又は使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間など、法第48条第1項及び第49条第1項に定める事項が、事実には起業者及び土地所有者等の主張の要旨が、理由には実施機関の判断が記載され、末尾には収用委員の記名・押印がなされている。
別添資料部分には、「収用委員会の裁決に係る訴訟手段について」、修正率算出表、別表の番号及び名称を記載した目次、そして権利者ごとの土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償を整理した別表など(別表1~9-2(2)まで)が添付されている。

3 非公開情報該当性について

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられる情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
    • ア 個人の住所及び氏名並びに言動等について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、次の情報であった。
      • (a)個人の住所、氏名及びそれらがわかる部分(登記又は公告により公になっている者を除く)
      • (b)法第8条第3項に規定する関係人であることが分かる部分
      • (c)特定個人の土地の相続状況に関する部分
      • (d)任意団体の代表者の氏名
      • (e)特定個人の所有する土地の境界問題に関する部分
        これらは、特定の個人を識別できる情報又は識別はできないが、公にすることにより、個人の人格権を侵害するなど権利利益を害するおそれがある情報であるため、条例第7条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
    • イ 物件の補償金額、種類、数量等について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、次の情報であった。
      • (a)個人が所有する、または所有する可能性があるとして、収用委員会が認定した、または起業者が申し立てた工作物、立竹木
        使用権(以下「工作物等」という。)の名称、規格、数量、持分割合、補償金額単価及び金額
      • (b)法第88条に規定する通常受ける損失の対象となる権利の名称、補償金額及びそれらがわかる部分
        特定個人がどのような工作物等を有するかについては、公示されるものではなく、また、必ずしも外部に明らかになっているものではない。そして工作物については、その外見は確認できるものの、その価格要因のすべてが明らかとなっているものではなく、工作物の構造、使用資材、設置態様、損耗の状況等の詳細まで外部に明らかになっているとはいえない。
        また立竹木については、それが存在する土地に立ち入らずに、樹種、樹高等を正確に把握することは困難である。
        さらに特定の土地の使用権についても、登記されるなどして公示されるものではない。
        そうすると、当該工作物等の名称や内容、使用権の名称、当該工作物等の権利割合等及びこれらに対する補償金の単価及び金額は、一般人であればおおよその見当をつけることができるとは考えられず、当該情報を公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
    • ウ 土地の補償金額について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、次の情報であった。
      • (a)収用委員会が認定した土地に対する補償金額、起業者が申し立てた土地に対する補償金額及びそれらがわかる部分(地方公共団体が所有する墓地を除く)
      • (b)地方公共団体が所有する墓地に対する評価額、補償金額及びそれらがわかる部分
      • (a)収用委員会が認定した土地に対する補償金額、起業者が申し立てた土地に対する補償金額及びそれらがわかる部分(地方公共団体が所有する墓地を除く)について
        収用委員会が認定した土地に対する損失の補償金額は、個人の収入又は財産に関する情報であり、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
        次に、ただし書アの該当性について検討する。
        県が行う公共事業に必要な土地等の損失補償額は、「香川県公共用地の取得に伴う損失補償基準に関する規程」(昭和43年7月10日)に基づき、正常な取引価格をもって補償するものとされており、この正常な取引価格は、近隣の買収単価や取引事例、土地価格形成上の諸要素等に基づいて算定されるものである。そうすると通常の土地に対する損失補償額は、一般人がおおよそ見当をつけられる額と考えられる。
        しかし審査会で見分したところ、補償対象である土地は、近隣での公示価格がなく、取引事例も極稀にしかないと思われる場所であった。したがって、当該補償金額は、一般人であればおおよそ見当をつけることができる金額であるとはいえない。
        よって当該補償金額は、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報とは認められないのでただし書アに該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。
      • (b)地方公共団体が所有する墓地に対する評価額、補償金額及びそれらがわかる部分について
        審査会で確認したところ、地方公共団体が所有する墓地に対する評価額が公になれば、墓地使用権に対する損失の補償金額を計算により導き出せると認められた。
        墓地使用権に対する損失の補償金額については、特定個人の財産に関する情報であって、当該情報を公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
        よって当該評価額及びそれがわかる部分については、墓地使用権に対する損失の補償金額がわかる部分として、条例第7条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
    • エ 委任状況について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、事務を委任した個人の氏名、その代理人の住所、職名及び氏名であった。
      これらは一体として特定個人の事務委任に係る情報であり、公開することにより個人の権利利益を侵害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。そしてこれらの情報を公表する法令又は条例はなく、また一般に慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報でもないことから、ただし書アに該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。
    • オ 交渉経過について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、裁決書24ページ第2行目から第6行目までの、「(2)任意での交渉について」として複数の特定個人の代理人と実施機関との間における任意交渉の経緯を整理し、記録した部分であった。
      これは、特定個人を識別することはできないが、公開することにより、委任者がその代理人をして、具体的にいかなる対応をとらせているかが明らかとなり、その権利利益を侵害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。そしてこれらの情報を公表する法令又は条例はなく、また一般に慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報でもないことから、ただし書アに該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。
    • カ 印影について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、収用委員の印影であった。
      個人の印影については、特定の個人を識別することができるものであることから、条例第7条第1号本文に該当する。
      一方、本件においては、条例第7条第1号ただし書ウに該当するとして、すでに各収用委員の氏名は公開されているところである。
      そこで本件印影が、条例第7条第1号ただし書ウに該当するかを検討する。
      条例第7条第1号ただし書ウは、「職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名(公にすることにより、当該個人の権利利益を不当に害するおそれがあるもの及びそのおそれがあるものとして実施機関が定める職にある公務員の氏名をのぞく。)」を公開することを定めている。
      まず、一般職の多くの公務員は、当該公務のため準備した印章を用いており、公開したとしても当該公務員個人の権利利益を不当に害するおそれがあるとは考えられない。
      しかし特別職である行政委員会の各委員が公務において用いる印章は、各委員が個人または個人事業主として常用している印章を用いていると考えられる。そこで本件行政文書を確認したところ、特殊な字体の印影や主に個人事業のための印章を押印したと推認される印影もあったことから、これらの印章が、当該公務のみに用いられているとは考えられない。
      そうすると、本件印影を公開すれば、各委員が個人または個人事業主としても用いる可能性の高い印章の形状を公開することになり、当該委員個人の権利利益を不当に害するおそれがあると考えられる。
      よって本件印影は、条例第7条第1号ただし書ウに該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。
  • (2)条例第7条第2号該当性について
    条例第7条第2号本文においては、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
    • ア 物件所有者等の住所及び氏名並びに言動等について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、次の情報であった。
      • (a)法第8条第3項に規定する関係人である団体の住所及び名称
      • (b)特定団体による本件申立てに対する主張
      • (a)法第8条第3項に規定する関係人である団体の住所及び名称について
        本件団体が本件裁決に関わる物件等を所有していることは、登記されるなどして公示されるものではなく、また本件団体が関係者であることも公示されていない。
        一方実施機関は、本件団体は本事業の中止を求めている団体であると述べているが、そうすると、その住所及び団体名を公にすれば、意見を異にする者からの干渉や圧力によって、当該団体の自由な意思決定、主張及び活動等に支障をきたし、その正当な利益を害するおそれがあると考えられることから、条例第7条第2号に該当すると判断される。
      • (b)特定団体による本件申立てに対する主張について
        本件団体の具体的な主張は、本事業に対する当該団体の活動の一環であるとも考えられる。これを公にすれば、意見を異にする者からの干渉や圧力によって、当該団体の自由な意思決定、主張及び活動等に支障をきたし、その正当な利益を害するおそれがあることから、条例第7条第2号に該当すると判断される。
    • イ 物件の補償金額、種類、数量等について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、本件団体が所有する工作物等の名称、規格、数量、設置態様、持分割合及びそれらがわかる部分であった。
      一般に、法人及び団体がどのような工作物等を有するかについては、公示されるものではなく、また、必ずしも外部に明らかになっているものではない。そして工作物については、その外見は確認できるものの、その価格要因のすべてが明らかとなっているものではなく、工作物の構造、使用資材、設置態様、損耗の状況等の詳細まで外部に明らかになっているとはいえない。また特定の土地の使用権についても、登記されるなどして公示されるものではない。
      そうすると、工作物等の内容及びこれらに対する補償金の単価及び金額は、一般人であればおおよその見当をつけることができるとは考えらず、当該法人及び団体の内部管理情報であると考えられる。
      仮に本件団体が通常の経済活動を行う法人であれば、当該工作物等は当該法人の資産の一部に過ぎないと考えることが妥当であり、例えその内容や補償金額が内部管理情報であったとしても、これらの情報を公にすることによって当該法人に不利益が発生するおそれはないと考えられる。
      しかし本件団体は任意団体であることから、当該工作物等やそれに対する補償金が当該団体の資産に占める割合は不明であり、その団体規模からすれば、主要な部分を占める可能性も考えられなくもない。そうすると、これらの情報を公にすれば、当該団体に不利益が生じるおそれがあると考えられる。
      よってこれらの情報は、条例第7条第2号に該当すると判断される。
    • ウ 委任状況について
      審査会で見分したところ、実施機関が非公開としたのは、特定の団体の名称、その代理人の住所、職名及び氏名であった。
      これらは一体として当該団体の事務委任という取引に関する内部管理情報であり、公開することにより当該団体の正当な利益を害するおそれがあることから、条例第7条第2号に該当すると判断される。
  • (3)第3の2の審査請求の理由のうち、(c)について
    条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
    よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)

別表

公開しない部分 公開しない理由
  • 個人の住所及び氏名並びに言動等
  • 物件の補償金額、種類、数量等
  • 土地の補償金額
  • 委任状況
  • 交渉経過
  • 印影
(条例第7条第1号本文該当)
個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるため、又は公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるため。
  • 物件所有者等の住所及び氏名並びに言動等
  • 物件の補償金額、種類、数量等
  • 委任状況
(条例第7条第2号本文該当)
法人等に関する情報であって、公にすることにより法人等の正当な利益を害するおそれがあるため。

401号~450号 451号~500号 501号~

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