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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成21年3月15日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の請求を行った。
実施機関は、公開請求のあった行政文書として、請求の(1)については「中小企業団体による外国人研修生の共同受入状況について(平成20年10月1日現在)」(以下「本件行政文書1」という。)及び「中小企業の外国人研修生共同受入事業に関する調査票(平成20年10月1日現在)」(以下「本件行政文書1」という。)を特定し、本件行政文書1のうち「外国人研修生を受け入れる中小企業団体の名称」及び本件行政文書2が条例第7条第2号及び第4号に該当するとして本件処分を行い、請求の(2)及び(3)については、不存在として非公開決定を行い、それぞれ平成21年3月26日付けで異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成21年4月1日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。
外国人研修生共同受入事業に関する調査については、法令に基づく調査ではなく、強制的に調査をすることができない性格のものであり、県から経済産業省四国経済産業局へ報告するため、中小企業団体の任意の協力によって行っているものである。
また、外国人研修生は、上記(1)のとおり、中小企業団体等の企業活動に従事していることになるので、当該調査は、中小企業団体等の経営に関する調査と認められる。そして、当該調査の依頼文書には、提出された調査票を公開しない旨の文言は記載されていないが、当該調査に回答した中小企業団体は、通常、当該中小企業団体の承諾なく一般に公開されることはないという前提で提出していると考えられる。
したがって、本件行政文書1の中小企業団体の名称及び本件行政文書2を公開すれば、今後の同様な調査において公開されることをおそれて、調査の一部又は全部に対して回答をしなかったり、回答が実態を正確に反映しなくなるなど、中小企業団体の協力が得られなくなることが容易に予想される。
よって、これらの情報を公開すれば、外国人研修生の受入状況を正確に把握することが困難になり、国への調査報告に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書1の「中小企業団体による外国人研修生の共同受入状況について(平成20年10月1日現在)」は、県が、経済産業省四国経済産業局に中小企業団体による外国人研修生の共同受入状況の実態を報告するため、県から各中小企業団体に依頼して提出された調査票の集計結果である。
また、本件行政文書2の「中小企業の外国人研修生共同受入事業に関する調査票(平成20年10月1日現在)」は、県が、経済産業省四国経済産業局に中小企業団体による外国人研修生の共同受入状況の実態を報告するため、県から各中小企業団体に依頼して提出された調査票である。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、公開することにより、将来の当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
本件行政文書は、県が各中小企業団体に対して行った、外国人研修生共同受入事業の実施状況等に関する調査の集計結果及び調査票である。本調査は法令に基づく調査ではなく、総務庁(当時)が通商産業省(当時)に対して、「外国人の就労等の実態把握の充実を図る」ための措置を講ずる必要があるとの勧告を行ったことを踏まえて平成4年度から開始されたものであり、県は中小企業庁からの協力依頼に基づき、平成4年度以降、毎年度任意で実施しているものである。
審査会で見分したところ、本件行政文書1には、外国人研修生共同受入事業を行っている中小企業団体が、「研修生受入中」、「審査完了、交付決定」、「交付申請、審査中」、「入管相談中」及び「内部検討中」の各段階に分けられ、各中小企業団体の名称、当該中小企業団体の外国人研修生共同受入事業の実施期間、受入企業数、外国人研修生の送り出し国及び受入人数が記載されていた。また本件行政文書2には、外国人研修生を受け入れている企業の名称や従業員数、外国人研修生の年度ごとの受け入れ人数及び研修の内容や実施方法等、各中小企業団体の外国人研修生共同受入事業に関する情報が記載されていた。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書1の中小企業団体の名称及び本件行政文書2である。
まず、本件行政文書1には、各中小企業団体が外国人研修生共同受入事業の実施段階別に整理され、各中小企業団体の外国人研修生共同受入事業の計画又は実施状況が記載されているが、これらは通常は公にされない当該中小企業団体の内部管理情報であり、当該中小企業団体の積極的な協力がなければ、正確には回答され得ない情報であると考えられる。
また、本件行政文書2には、受け入れ企業の従業員数や、年度ごとの外国人研修生の受け入れ人数といった各企業の経営情報、今後の外国人研修生の受け入れ方向といった各中小企業団体の経営方針、研修の内容・実施方法といった外国人研修生共同受入事業に関する各企業の具体的なノウハウ情報、外国人研修生の受け入れに対する各中小企業団体の見解など、通常は公にされない当該中小企業団体の内部管理情報を問う設問及びそれに対する回答が記載されている。そのため、これらについても、当該中小企業団体の積極的な協力がなければ、正確には回答され得ない情報であると考えられる。
そうすると、各中小企業団体は、外国人研修生共同受入事業についての調査結果が一般に公開されることはないという前提で、その内部管理情報を明らかにして回答しているとの実施機関の主張は是認できる。
したがって、仮にこれらの情報が公にされることになれば、今後、外国人研修生共同受入事業について調査を行うにあたり、中小企業団体が非協力的又は消極的な態度をとり、調査の一部又は全部に対して回答をしなかったり、回答が実態を正確に反映しなくなったりするなど、調査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
よって、本件行政文書1のうち外国人研修生を受け入れる中小企業団体の名称及び本件行政文書2は、条例第7条第4号に該当すると判断される。
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
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