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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成22年5月18日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
実施機関は、上記請求の(1)(以下「本件請求」という。)について、請求対象となる行政文書の存否を答えることにより、不活動宗教法人対策事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという点で条例第7条第4号に該当する非公開情報を公開することになるので、条例第10条により当該行政文書の存否を明らかにしないとして、本件処分を行った。また、上記請求の(2)及び(3)について、一部公開決定を行い、それぞれ平成22年6月2日付けで異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成22年6月14日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
異議申立書において主張している趣旨は、おおむね次のとおりである。
本件処分の取消し並びに各法人の平成20年度及び平成21年度の法第25条第2項第2号、第3号、第5号及び第6号に掲げる文書の公開を求める。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
意見書による主張は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。また、条例第10条は、公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとなるときは、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該請求を拒否することができると定めている。
本件請求は、「各法人が法第25条第4項規定よる書類の写し(最新)の提出をしていることを証明できる文書」であり、当該請求に対して対象となる行政文書の有無を明らかにすることは、法第25条第4項の規定に基づき各法人の所轄庁である実施機関に提出された文書が存在するか否かという情報を明らかにすることになる。
法第25条第4項の規定によると、宗教法人は、毎会計年度終了後4月以内に、宗教法人の事務所に備えられた法25条第2項第1号から第6号に掲げる書類(以下「事務所備付書類」という。)のうち、第2号(役員名簿)、第3号(財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表)、第4号(境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類)及び第6号(公益事業又は収益事業を行う場合には、その事業に関する書類)に掲げる書類の写し(以下「所轄庁提出書類」と総称する。)を所轄庁に提出しなければならないとされている。しかし、不活動状態にある宗教法人が所轄庁提出書類を提出することはないため、所轄庁提出書類の提出状況が不活動宗教法人であるか否かを判断する際の一つの目安になるものである。
そうすると、仮に各法人が不活動宗教法人であった場合、所轄庁提出書類が不存在であることを公にすると、各法人が不活動宗教法人であるということが明らかとなり、その結果、その法人格を買収して悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動宗教法人の解散を推進し、法人格の悪用を防止するといった不活動宗教法人対策事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
したがって、本件請求に対して請求対象行政文書の存否を答えることは、条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することになるため、条例第10条に基づき当該行政文書の存否を明らかにしないものである。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
また、条例第10条は、行政文書が存在するか否かを答えるだけで非公開情報を公開することとなる場合については、その存否の応答を拒否することができることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が条例第10条に該当するとして請求対象行政文書の存否を明らかにせずに非公開としたことの妥当性について検討する。
実施機関は、本件請求に関して、「請求対象行政文書の存否を明らかにするだけで条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することとなるため、条例第10条により本件処分を行った。」と主張する。
そこで、本件請求に対し、請求対象行政文書が存在するか否かを明らかにすることが、条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することとなるか検討する。
本件請求は、「各法人が法第25条第4項規定による書類の写し(最新)の提出をしていることを証明できる文書」であることから、本件請求に対して対象となる行政文書の有無を明らかにすることは、各法人から提出された最新の所轄庁提出書類が存在するか否かという情報を明らかにするものと認められる。
同条同項の規定によると、宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、所轄庁提出書類を所轄庁に提出しなければならないとされている。しかし、不活動状態にある宗教法人が所轄庁提出書類を提出することはないため、所轄庁提出書類の提出状況が不活動宗教法人であるか否かを判断する際の一つの目安になるものと考えられる。
そうすると、仮に各法人が不活動宗教法人である場合、所轄庁提出書類が不存在であることを公にすると、各法人が不活動宗教法人であるということが明らかとなり、その結果、その法人格を買収して悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動宗教法人の解散を推進し、法人格の悪用を防止するといった不活動宗教法人対策事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
また、異議申立人は各法人が活動宗教法人であるから、請求対象行政文書の存否を明らかにしないことは失当であると主張する。
しかしながら、仮に各法人が活動宗教法人である場合には請求対象行政文書の存否を明らかにし、不活動宗教法人である場合には請求対象行政文書の存否を明らかにしないとなれば、結果として不活動宗教法人を明らかにすることにつながり、同様に不活動宗教法人対策事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められ、さらに、条例による公開請求は、いずれの請求権者に対しても等しく認められるものであるから、異議申立人が各法人について活動宗教法人であると認識しているか否かは、条例第7条第4号に規定する非公開情報の公開・非公開の判断に影響を与えるものではないので、異議申立人の当該主張は認められない。
よって、本件請求に対して請求対象行政文書の存否を答えることは、条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することになるため、実施機関が条例第10条に基づき行政文書の存否を明らかにしなかったことは妥当であると判断される。
異議申立人は、法第25条第3項を理由に請求対象行政文書の公開を求めることを主張する。
しかしながら、条例による公開請求は、請求の目的のいかんを問わずいずれの請求権者に対しても等しく認められるものであり、法第25条第3項に基づき事務所備付書類の閲覧を各法人に請求する権利を異議申立人が有するか否かは、条例第7条第4号に規定する非公開情報の公開・非公開の判断に影響を与えるものではないので、異議申立人の当該主張は当たらない。
また、異議申立人は、異議申立書及び意見書で各法人の平成20年度及び平成21年度の法第25条第2項第2号、第3号、第5号及び第6号に掲げる文書について公開を求めている。これは、新たな公開請求であって本件処分に対する不服を申し立てたものではないと考えられるため、不適法である。
その他、異議申立人は種々の主張をしているがいずれも審査会の上記判断を左右するものではない。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
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