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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成21年7月15日付けで、香川県情報公開条例(平成12年条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
実施機関は、本件請求の(1)に対応する行政文書として、「土地改良法第133条に基づく土地改良区の検査結果について(平成19年12月6日付け)」(以下「本件行政文書1」という。)を、本件請求の(2)に対応する行政文書として、「土地改良区の検査結果の是正について(平成19年12月19日付け)」(以下「本件行政文書2」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成21年7月27日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成21年7月29日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により、実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書1は、東讃土地改良事務所長が県農政水産部長に土地改良法第133条に基づく特定土地改良区の検査結果を報告した文書であり、表紙、「土地改良区の検査結果について」と題する当該法人あての通知書の写し及び「土地改良区等検査結果報告書」から構成されている。
本件行政文書2は、当該法人から東讃土地改良事務所長に提出された検査結果の是正策を報告する文書の写しである。
条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書1のうち「土地改良区等検査結果報告書」に記載された特定土地改良区の立会人の氏名及び役職名である。
これらはいずれも個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であることから、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
次に、ただし書の該当性について検討する。
土地改良区の検査における立会人の氏名及び役職名は、一般に慣行として公にされ、又は公にされることが予定されている情報とは認められないので、ただし書アに該当せず、その他のただし書にも該当しないと判断される。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書2のうち特定土地改良区理事長の印影である。
印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がそのような管理をしていないと認められる場合には、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
本件処分により非公開とされた印影は、特定土地改良区が東讃土地改良事務所に検査結果の是正方針を報告するために提出した文書に押印されているものであり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、実施機関等に限定されていると考えられる。
すなわち、本件印影はいずれも当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人の各種書類の偽造等に悪用されることなどが考えられる。
よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、公開することにより、将来の当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
実施機関が非公開にした部分は、本件行政文書1のうち「1是正を要する事項」、「検査結果に基づく意見」、「検査土地改良区の運営上の問題点等」、別紙「役員選任の経緯」及び別紙「審査表」、並びに本件行政文書2のうち「是正方針」であり、これらには、検査での具体的な指摘事項、それに対する対応策、検査における聴取内容等の検査に関する情報が記載されている。
本件検査は、土地改良法第133条の規定に基づき行われたものであり、検査を拒んだ場合は罰則の対象となる。しかし、このような検査権限は、捜査機関による捜索や差押のように直接的・物理的な強制力の行使を伴うものとは異なり、罰則による間接的な担保により心理的に検査の受忍を強制しようとするものであることから、間接強制による担保が用意されているからといって直ちに対象者の全面的な協力が得られるわけではない。したがって、検査の実施に当たり関係者への事情聴取や書類の提出によって正確な事実を把握するためには、土地改良区の検査への協力が必要であり、その協力は検査に関する情報が公開されないという前提によって得られるものであるとの実施機関の主張は是認できる。
また、検査結果には、役員選任に関する詳細な経緯といった役員選任に関わった役員又は組合員など限られた者しか知りえない内部運営に関する情報や特定土地改良区の評価に関わる情報など、当該法人にとって機微な情報が含まれている。
そうすると、仮にこれらの情報が公にされることになれば、今後、土地改良区が検査に対して非協力的又は消極的な態度をとり、その結果、検査における適正かつ公正な評価や判断の前提として正確な事実を把握することが困難になるなど、検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
よって、当該情報は、条例第7条第4号に該当すると判断される。
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
公開しない部分 | 公開しない理由 |
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個人の氏名及び役職名(ただし、公開される部分を除く) | (条例第7条第1号本文該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。 |
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公表しない部分 | 公表しない理由 |
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印影 | (条例第7条第2号本文該当) 当該法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため。 |
「是正方針」 |
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