平成24年1月27日 答申第490号(香川県情報公開審査会答申)
平成24年1月27日(答申第490号)
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県監査委員(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、平成23年4月14日付けで次の内容の行政文書の公開請求を行った。
- (1)現場ポリスメン、職員、教師などどのようなハレンチ罪、刑法、民法上の非行があったとき、どのような懲戒(4段階)をするのか基準(以下「本件請求1」という。)
- (2)過去22年間(H1年より昨年度まで)の処分と非行の対応の報告書、リスト、グラフ(以下「本件請求2」という。)
2 実施機関の決定
実施機関は、公開請求のあった行政文書が不存在として、平成23年4月26日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。
3 異議申立て
異議申立人は、本件処分を不服として、平成23年5月17日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
第3 異議申立ての内容
1 異議申立ての趣旨
おおむね「監査委員や監査委員事務局員自体も非行処分はあったはずであるから、公開すべきである。」というものである。
2 異議申立ての理由
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
- (1)平成元~22年間、毎年の、県職全分野の処分・非行に関する全文書、レポート、辞令、始末書、リスト、グラフなどだが、カンサ事務局には一人もいなかったから自分の分野でないから回答しなくてよいと誤解しているのか。
- (2)カンサ委員や事務局員自体も非行処分はある(あった筈)であるから、その処分基準及び実際の22年間の全データを出すべし。少なくとも、全く非行、処分がなかったのなら、自分野のみについては、処分実績がないので処分に関わる作成文書は皆無「不存在」で非開示、との回答はできるのでないか。
第4 実施機関の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は、次のとおりである。
- 異議申立人から公開請求のあった、請求対象行政文書を作成し、又は取得しておらず、保有していないため非公開決定を行った。
- 本件請求1の対象となる行政文書
当委員では、監査委員事務局職員に対する懲戒処分は行った事実はなく、懲戒処分に係る基準を作成していない。
本件請求1で請求されている「ハレンチ罪、刑法、民法上の非行」に係る事案についても、懲戒処分を行った事実はなく、これらの事案を想定した懲戒処分の基準は、知事部局においても作成されておらず、当委員会においても作成していない。
なお、これらの事案があった場合には、人事院の懲戒処分の指針や、他県の類似案件、本県の過去の類似案件等を参考とすることが考えられるが、現在のところ事案がなく、そのような文書を他部局から取得したことはなく、保有していない。
- 本件請求2の対象となる行政文書
当委員では、監査委員事務局職員に対する懲戒処分は行った事実はなく、したがって、本件請求2の対象となる行政文書は作成しておらず、保有していない。
また、念のため、当委員で保有する行政文書について精査したが、本件請求2の対象となる行政文書は存在しなかった。
以上のことから、本件請求対象行政文書を作成し、又は取得しておらず、保有していない。
第5 審査会の判断理由
1 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
2 本件請求対象行政文書の存否について
- (1)本件請求1について
本件請求1における懲戒処分とは、「懲戒処分(4段階)」と記載していることから、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条に定める戒告、減給、停職又は免職の処分と考えられる。そこでまず、地方公務員法、職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和26年香川県条例第39号)並びに同規則(昭和28年香川県人事委員会規則第3号)を見分したところ、懲戒処分の基準(以下「基準」という。)の策定に関する規定等は無いことが確認された。よって、実施機関が基準を策定しなければならない理由は見当たらない。
また審査会で確認したところ、知事部局では「職員の交通事故及び違反に係る懲戒処分の基準」(平成18年11月1日から適用)及び「不正な会計処理に係る懲戒処分の基準」(平成21年10月1日から適用)を任意により策定していたが、実施機関では同趣旨の基準を策定していなかった。
加えて、異議申立人が請求書に記載している「ハレンチ罪、刑法、民法上の非行」がいかなる処分案件を想定しているかは明らかではないが、これらについては広範囲かつ多岐にわたる案件の存在が容易に想定されるところ、知事部局においても策定していない案件に関する基準を、より少ない人員である実施機関が独自に策定しているとは考えられない。
さらに異議申立人は、「現場ポリスメン、職員、教師など」として警察官等に関する基準も求めているが、地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条において普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理を監査することが任務とされている実施機関が、警察官等に関する基準を策定したり、取得したりする理由は見当たらない。
そして異議申立人は、本件請求1に係る行政文書の存在を推認させる具体的な理由を主張しておらず、またその存在を推認させる特段の事情もない。
よって、請求対象行政文書が存在しないため非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。
- (2)本件請求2について
本件請求2は、「過去22年間(H1年より昨年度まで)の処分と非行の対応の報告書、リスト、グラフ」という請求文言であるものの、その懲戒処分の対象者については明記していない。
そこで実施機関は、本件請求書の宛先が監査委員であること、また本件請求1の「現場ポリスメン、職員、教師など」という文言が本件請求2には記載されていないことから、本件請求2は地方公務員法第6条に定める任命権者である代表監査委員による、監査委員事務局職員(以下「事務局職員」という。)に対する懲戒処分に関するものと解し、当該行政文書を作成した事実がないことから非公開決定を行ったものである。
一方異議申立人は、異議申立書において「県職全分野の処分・非行に関する全文書、レポート、辞令、始末書、リスト、グラフなどだが、カンサ事務局には一人もいなかったから自分の分野でないから回答しなくてよいと誤解しているのか。」と、本件請求2は全ての香川県職員に対する懲戒処分に関する全ての行政文書を請求したものであり、実施機関による請求文言の解釈は誤りであると主張している。
しかしながら、本件請求2では「辞令、始末書」を含む「全文書」を請求していないことは、検討するまでもなく請求文言から明らかである。また「処分・非行に関する」という文言も、「処分と非行の対応の」という請求文言では特定されない、より広い範囲の行政文書を求めるものである。よって特定すべき行政文書の範囲について、本件請求2と異議申立書における主張には整合性がないと考えざるをえない。
また懲戒処分の対象者についても、同じ異議申立書において「カンサ委員や事務局員自体も非行処分はある(あった筈)であるから、その処分基準及び実際の22年間の全データを出すべし。少なくとも、全く非行、処分がなかったのなら、自分野のみについては、処分実績がないので処分に関わる作成文書は皆無『不存在』で非開示、との回答はできるのでないか。」と、事務局職員に対する懲戒処分を前提とした非公開(不存在)決定を求めている。よって異議申立書における懲戒処分の対象者に関する主張についても、一貫性がないと考えざるをえない。
これらの点から異議申立人の主張には、実施機関による請求文言の解釈を再検討すべき理由は存在しないと判断される。
したがって本件請求2は、実施機関が解したとおり、代表監査委員による事務局職員に対する懲戒処分について、過去22年間にわたる各懲戒処分案件と懲戒処分実績とを対応させた報告書、リストまたはグラフを請求したものと解するのが妥当である。
そうすると、請求対象行政文書の存否を判断するにあたっては、まず代表監査委員による事務局職員に対する懲戒処分の有無が争点となり、次に懲戒処分があった場合のみ、当該懲戒処分案件と懲戒処分実績とを対応させた報告書等が存在するか否かが問題となる。
この点について実施機関は、代表監査委員による事務局職員に対する懲戒処分を行った事実がないと主張している。そこで実施機関に対して調査したところ、過去22年間においてそのような処分事例はないことが確認された。
一方異議申立人は、監査委員や事務局職員にも非行処分はあったはずであると主張しているが、その理由は一切示していない。むしろ同時に異議申立書において、「カンサ事務局には一人もいなかったから」、「全く非行、処分がなかったのなら」と自ら仮定しており、この点についても一貫した主張はなされていないことから、異議申立人は実施機関の主張を疑うに足る具体的な理由を持ち合わせていないと考えられる。
よって、代表監査委員による事務局職員に対する懲戒処分がないという実施機関の説明に不自然なところはなく、そうすると実施機関が請求対象行政文書を作成することもありえないことから、作成していないため不存在であるとして非公開とした本件処分は妥当であると判断される。
なお仮に、本件請求2の趣旨を、全ての香川県職員に対する懲戒処分に関する各懲戒処分案件と懲戒処分実績とを対応させた報告書等と善解したとしても、地方自治法第199条において普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理を監査することが任務とされている実施機関が、そのような報告書等を作成したり、取得したりする理由は見当たらないことから、いずれにしても本件処分は妥当であると判断される。
- (3)異議申立人のその他の主張について
異議申立人は、その他種々の主張をしているが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
401号~450号 451号~500号 501号~