平成19年10月17日 答申第450号(香川県情報公開審査会答申)
平成19年10月17日 答申第450号
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県東讃土地改良事務所長(以下「処分庁」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 審査請求に至る経過
1 行政文書の公開請求
審査請求人は、平成17年6月3日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、次の内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- (1)条例の実施機関たる香川県東讃土地改良事務所長が公開手数料減免申請に対して平成8年11月以降の前例の基準に反して本年4月以降の新たな基準による補正を求める根拠とした一切の文書
- (2)本年4月以降に公開手数料減免申請書に対して補正を求めた際の一切の起案文書
- (3)条例の実施機関たる香川県東讃土地改良事務所長が同一人からの公開請求に対しては、先の請求に対する行政処分の完了後でなければ、後の公開請求に対する行政処分ができないとする法的根拠を記載した一切の文書
2 処分庁の決定
処分庁は、平成17年6月15日付けで、次の処分を行い、それぞれ審査請求人に通知した。
- (1)本件請求の(1)について、「公開手数料減免申請については、条例第17条第1項及び香川県情報公開条例施行規則(平成12年香川県規則第148号。以下「規則」という。)第11条の規定に基づいて処理しており、公開請求にかかる新たな基準となる行政文書が存在しないため。」との理由により行った非公開決定
- (2)本件請求の(2)に対応する行政文書として次の行政文書を特定し、減免申請者の郵便番号、住所、氏名、電話番号、印影、FAX番号及びFAX送信者の表示部分が条例第7条第1号に該当するとして行った一部公開決定
- (a)行政文書公開請求に係る手数料の減免申請について(平成17年5月18日起案文書)
- (b)行政文書公開請求に係る手数料の減免申請について(平成17年5月23日起案文書)
- (c)行政文書公開請求に係る手数料の減免申請について(平成17年5月27日起案文書)
- (d)行政文書公開請求に係る手数料の減免申請について(平成17年5月27日起案文書)
- (3)本件請求の(3)に対応する行政文書として条例第13条及び第1条(以下「本件行政文書」という。)を特定し、「香川県立文書館等において管理されている行政文書であって、一般に閲覧させ、又は貸し出すことができるものである。」ため、条例第28条第4項に該当するとして行った本件処分
3 審査請求
審査請求人は、本件処分を不服として、平成17年6月16日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。
第3 審査請求の内容
1 審査請求の趣旨
「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。
2 審査請求の理由
審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
- (1)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、直ちに全部公開をすべきである。
- (2)本件「決定通知書」記載の非公開理由は、条例に規定する非公開事由に該当しない。「公開請求に係る行政文書」の特定を誤っているものである。
- (3)本件「決定通知書」の非公開理由欄の記載には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。
第4 諮問庁の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
審査請求人が情報公開を請求した文書の内容は、香川県東讃土地改良事務所長が「同一人からの公開請求に対しては、先の請求に対する行政処分の完了後でなければ、後の公開請求に対する行政処分ができない。」とする法的根拠を記載した一切の文書であるが、これは条例に定める公開決定等の期限の特例に関するものであり、その法的根拠は、公開決定等の期限の特例について定めた条例13条及び条例の目的を定めた第1条である。
また、条例第28条第4項は、香川県立文書館、県民室等の行政文書であって、一般の県民の利用に供することを目的に管理しているものについて、条例の規定による公開をしないことを定めたものである。
当該行政文書は、県民室等において管理されている行政文書であって、一般に県民に閲覧させ、又は貸し出すことができるものとされていることから、条例第28条第4項に定める公開をしない行政文書に該当する。
第5 審査会の判断理由
1 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
2 本件行政文書の内容等について
本件行政文書は、条例第13条及び第1条である。
3 本件処分の妥当性について
- (1)本件請求対象について
諮問庁は、条例に定める公開決定等の期限の特例に関するものであり、その法的根拠は、公開決定等の期限の特例について定めた条例第13条及び条例の目的を定めた第1条であると主張している。
審査請求人は、「公開請求に係る行政文書」の特定を誤っているものであると主張している。
そこで、条例第13条及び第1条が本件請求対象となるかどうかを検討する。
諮問庁に本件請求に至る経緯について説明を求めたところ、「特定請求者から特定の部署に公開請求に係る対象が広範囲にわたる一の請求があり、条例第13条に定める公開請求に係る行政文書が著しく大量であって、そのすべてについて前条の定める期限内に公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずる場合であることから、公開決定等の期限の特例の措置を行っていた。その後、同一請求者から順次複数の請求が同一所属に提出されたため、特定事務担当課等に対して、一定期間に集中して複数の公開請求が行われた場合であり、期間の延長を検討すべきであると判断した。そして、前の請求に対する公開決定等の期限の延長を行っており、処分庁は前の請求に対して合理的な期間を設定し、情報公開事務を行っていることから、後の請求は前の請求の処理後とならざるを得なかった。そのため、先の請求に対する行政処分の完了後でなければ、後の公開請求に対する行政処分ができなかったものである。」とのことであった。
条例第1条は、「県民の行政文書の公開を請求する権利につき定めること等により、実施機関の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とする。」と規定しており、本条は、条例の目的を明らかにしたものであり、条例解釈の指針となるものである。したがって、各条文の解釈及び運用は、常に本条に照らしながら行わなければならないと解される。
条例第13条は公開決定等の期限の特例として、「公開請求に係る行政文書が著しく大量であるため、当該請求書が提出された日から起算して60日以内にそのすべてについて公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、前条の規定にかかわらず、実施機関は、公開請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に公開決定等をし、残りの行政文書については、相当の期間内に公開決定等をすれば足りる。」と規定している。
本条は、公開請求に係る行政文書が著しく大量であって、そのすべてについて前条の定める期限内に公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずることを避けるため、公開決定等の期限の特例を定めたものであると解される。
さらに、本条は公開決定等の期限の特例についての規定であり、複数の公開請求の公開事務をどのように処理するかまでは規定していないが、公開請求の処理と他の行政事務の遂行との適切な調和を図るための規定と解されることから、先の請求に対して公開事務処理を行っているような場合、その後の請求に対する公開事務の処理は先の公開事務処理の期間を考慮したうえで合理的な期限を設定することとなり、公開決定等の期限を合理的に決定するためには、同時並行して処理を行うのか、請求順に処理を行うのかは、請求の状況や決定文書数のほか、情報公開事務の体制等によって変わるものであり、請求順にしか処理できないとするものではないが、合理的な期間の判断において根拠とした条例第13条及び第1条を本件請求対象として特定したものと判断される。
また、審査請求人は、「公開請求に係る行政文書」の特定を誤っていると主張するのみで、請求対象行政文書の存在について何ら具体的な主張をしておらず、その他存在をうかがわせる事情も認められない。
よって、条例第13条及び第1条を請求対象として特定したことは妥当であると判断される。
- (2)条例第28条第4項の該当性について
そもそも、法令という情報そのものが条例上の行政文書に該当しないことは言うまでもなく、条例に基づく公開請求の対象とならないものであることは明らかである。
しかし、本件請求は「法的根拠を記載した文書」を公開請求したものであり、これは法令という情報そのものを公開請求する趣旨ではないことから、処分庁においては、条例の該当条文が印刷された文書を請求対象行政文書として特定したものであると考えられる。
そして、審査会で確認したところ、県民室において条例が一般の閲覧に供されていることが確認された。
したがって、本件請求に対して、条例第13条及び第1条を特定し、これが県民室において一般に閲覧にされていることを理由とし、条例第28条第4項に該当するとして非公開としたことは、妥当であると判断される。
4 第3の2審査請求の理由のうち、(3)について
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)