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答申
香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分1」という。)及び一部公開決定(以下「本件処分2」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成18年4月5日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
実施機関は公開請求のあった行政文書として、別表1に掲げる行政文書(以下それぞれの行政文書を「行政文書1」、「行政文書2」などと示す。)を特定し、行政文書1~3については公開決定を、行政文書4~6については別表2の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分1を、行政文書7~10については別表3の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分2を行い、平成18年5月30日付けで、異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分1及び本件処分2を不服として、平成18年8月3日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分1及び本件処分2を取り消すとの決定を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
実施機関は、条例第7条第1号、同条第4号の非公開事由に該当するとして完全に非公開としているが、これらは条例の非公開事由の拡大解釈である。
百歩譲って、条例第7条第1号又は同条第4号に該当する情報が含まれているとしても、その部分だけを非公開とすればよいのであり、そのような情報が含まれていることを理由として、当該文書全文を非公開とすることは、これらの条項を不当に拡大解釈するものである。
なお、一部公開決定処分をされた文書の中でも、行政文書7、8及び10の県立学校教職員の懲戒処分等についての3件の調査報告書は文書自体が完全非公開であるので、一部公開決定通知書ではなく、非公開決定通知書の中に含めるべきものであり、事務手続き上も不適切である。
昨年の元・中学校教員による強制わいせつ事件が示すように、問題が指摘されたときに学校や教育委員会の調査や対応が不適切であったことが事件を繰り返させ、さらなる被害者を生むことにつながっている。
今回、非公開となった文書は、何か問題が指摘されたときに実施機関の調査が適切に行われているかどうかを示すものであり、仮に条例第7条第1号、同条第4号に該当する部分が一部含まれているとしても、その部分のみを厳密に区分した上で、いつ、どのような調査が行われたのか、あるいは、行われなかったのか、などを示す文書自体は公開されるべきものである。
もし、今回の決定のように、これらの文書が完全に非公開とされると、県民は実施機関がきちんと調査をしているのかどうかさえ判断することができない。
なお、行政文書9のような安易な黒塗り非公開も、条例の非公開事由を厳密に適用しているとは言えず、極めて不適切である。
意見書による主張は、おおむね次のとおりである。
平成17年10月に生徒に対する強制わいせつ事件を起こした元・中学教員は前任校でも問題を起こしていたことがわかった。この事件においては、問題が指摘されたときに、学校や教育委員会がどのように調査し、どのように対応をしたのかが、大きな問題となった。指摘事項や調査結果の記録をきちんと残し、後で検証できるようにすることが大変重要だということが改めて明らかになったのである。
実施機関は、「学校でのセクハラ・体罰110番」に寄せられた情報について2000年末から2001年初めにかけて調査をしたはずであるが、今回の公開請求に対して特定された文書の中には、県内中学教員によって繰り返された2件のセクハラ事件以外、調査結果の記録はなく、他の指摘事項などについては、実施機関が文書での記録を残していないことがわかった。
こうした問題が繰り返されている現状を考えると、教員の体罰やセクハラなどの訴えがあった場合、きちんと調査し、その結果を記録しておくことによって、問題が繰り返されることを防いだり、実施機関の対応について検証できるようにしておくことの重要性はますます高まっている。
そして、県民の情報公開の請求に対しても、実施機関の対応について説明責任を果たせるような公開がなされるべきである。
また、実施機関の非公開理由等説明書は、非公開や一部公開の根拠として、平成15年に出された審査会答申第229号、第245号、第256号などをあげている。
これらの審査会の判断に対しては、条例の拡大解釈であると反論しておきたいが、仮に、平成15年当時はこうした答申が妥当だったとしても、平成17年10月に教員によって繰り返された強制わいせつ事件が発覚し、教育行政の当時の対応や調査、情報共有のあり方などが大きな問題とされた後は、実施機関が説明責任を果たすための公開の範囲について再考されてしかるべきだと考える。
被害生徒のプライバシーなどを口実に安易に全面非公開とすることは、条例第1条に掲げられた条例の目的に反する。
条例第7条を厳密に運用した上での非公開部分はあるにしても、実施機関が一体どのような調査をしたのか、その調査の内容が適切なものであったのかどうかを検証するためには、少なくとも、条例第8条第1項により、最小限の非公開情報を除いた部分を公開すべきである。
意見陳述による主張は、おおむね次のとおりである。
一昨年強制わいせつ事件を起こした先生がいたが、その先生は以前にも問題が起きていたのに、うやむやにしており、その情報は全く共有されていなかった。ここにやはり問題の根っこがあると思う。そこで、実施機関がどういう対応をしたのか、どういう調査をしたのかということをきちんと検証する必要があると思い、今回情報公開請求をしたのである。こうした問題があったときに、責任を問われる側が調査・対応をすると、どうしてもうやむやにしてしまう。
大きく3点ほど異議申立書及び意見書を補足しながら説明すると、まず一点目は、懲戒処分等に関する調査報告書というものが3件とも完全非公開になっているのに、一部公開決定の中に含まれていることについてである。要は懲戒処分に関する一連の書類の中の調査報告書という位置づけなのかもしれないが、このような場合、一部公開決定の中に入れるのはおかしい。非公開決定の中に調査報告書を入れておくべきものではないのか。なにか紛れこませているような感じがした。
次に、二点目は、条例第8条の運用についてである。
例えば、先ほど述べた懲戒処分に関する調査報告書について、もちろんその中には被害生徒のプライバシーに関わることなど公開できない部分はある。しかし、それを除いた残りの情報というのは有意の情報だと思う。どういう調査をしたのかということが、やはりきちんと残ることが重要であり、簡単に非公開としてしまうことはおかしい。
こういう調査をしたときに、当事者にいつ聞いているのか、どの時点で聞いているのか、どういうことを聞いているのかということがわからないと、実施機関の対応を検証する資料にはならないのである。個人情報の部分が多く黒塗りになるとしても、もう少し情報がわかるものでないと、これでは条例第8条の運用誤りである。
そして、三点目は、実施機関が、非公開理由等説明書の中で、過去の審査会答申を引用していることについてである。審査会の答申というのはその時点では一つの結論として引用できるとしても、状況が変わると当然判断も変わるべきではないのか。教員による強制わいせつ事件が発覚して、結局、以前問題があったときにきちんと事故報告されていなかったことがわかったのだから、教員は基本的にそのようなことをするはずがなく、ここまで公にする必要はないという考えに基づき判断されていたものは変わるべきで、当然、実施機関としては、その後もっと説明責任を果たすべきである。したがって、過去の審査会答申は必ずしも絶対的な判断材料にはならない。
処分されるとそれは記録として残るが、そうでなければ残らないのではなく、問題があったときには、きちんと報告して、情報を共有すべきであり、そうすることが、どうやったら繰り返さずにすむのかということを考える上でとても重要なことなのである。また、きちんと記録が残れば、責任の所在を明らかにすることができるのだから、問題のある先生がいた場合にそれをうやむやにすれば、調査した者や対応した者も当然責任を問われるということで、いいかげんなことはできなくなっていくと思う。
非公開にして守らなければいけない部分もあるが、往々にして、被害生徒のプライバシーといいながら、守っているのは学校の都合であったり、教育委員会の責任を問われたくないという体質なのである。やはり、こういうところから正していかなければ、生徒の被害というものは続いてしまうと思う。
非公開理由等説明書及び意見陳述による説明は、おおむね次のとおりである。
異議申立人は、異議申立書において、今回非公開となった文書は、なにか問題が指摘されたときに実施機関の調査が適切に行われているかどうかを示すものであり、いつどのような調査が行われたのか、あるいは行われなかったのかなどを示す文書自体は公開されるべきものであると主張しているが、この異議申立人の主張は、本件行政文書の非公開情報該当性の議論とはなんら関係のないものであり、非公開理由に該当しないという主張になっておらず、理由のないものである。
今回、異議申立人がいう非公開となった文書がなにを示しているのかは定かではないが、調査報告書を示しているのであれば、前述のとおり、条例に基づいて非公開としているところであり、もし仮に、一部公開をしたとしても、調査報告書は懲戒処分若しくは分限処分を行うに当たって、最低限必要な情報が記載されていれば十分であって、この文書によって、実施機関の調査が適切に行われているか、調査が十分であるかを判断することは不可能である。
また、異議申立人がいう非公開となった文書が、行政文書5を示しているとすれば、上記で説明したように、個人の事件関係者の権利利益を害するおそれがある情報であり、条例第8条第2項による一部公開はできないものである。
さらに、異議申立人は、意見書において、平成17年10月に生徒に対する強制わいせつ事件を起こした教員等の事案を取り上げて、実施機関の調査のあり方や調査結果の記録等について指摘しているが、異議申立人の主張は、再発防止のために実施機関がどのようにやっていくべきか、そのためにはそのような文書を作って、どのように役立てていくべきかという議論であって、本件行政文書の非公開情報該当性の議論とはなんら関係のないものである。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が非公開とした部分について検討する。
異議申立人は、その他種々主張するが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
公開しない部分 | 公開しない理由 |
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行政文書4及び行政文書5 |
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行政文書6 |
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公開しない部分 | 公開しない理由 |
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1
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2 公開請求に係る行政文書のうち、次の部分(公開部分を除く。)
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