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公開日:2019年12月27日

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平成18年12月26日 答申第410号(香川県情報公開審査会答申)

平成18年12月26日 答申第410号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県東讃土地改良事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成17年10月22日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「新条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)香南町から香川県中部土地改良事務所長に対して提出された土地改良法に基づく土地改良事業施行の認可申請の中の「香南町○○地区」の基盤整備促進事業に関する認可申請書及びその一切の添付図面類その他の書類の全部
  • (2)上記(1)の認可申請に対する一切の起案文書の全部

2 処分庁の決定

処分庁は、公開請求のあった行政文書として「香南町土地改良事業施行認可申請書(平成11年5月14日付)」(以下「本件行政文書」という。)及び別表1に掲げる行政文書を特定し、本件行政文書については別表2の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、また別表1に掲げる行政文書については公開決定を行い、平成17年11月4日付けで審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、平成17年11月15日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、直ちに全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」記載の非公開理由は、香川県の情報公開条例に規定する非公開事由に該当しない。
  • (3)本件「決定通知書」の非公開理由欄の記載には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 諮問庁の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 香川県公文書公開条例(昭和61年香川県条例第30号。以下「旧条例」という。)第6条第1号の該当性について

本件行政文書には、個人の氏名が記載されているが、これは、特定の個人が識別され得る個人に関する情報であることは明白である。よって、旧条例第6条第1号本文に該当し、ただし書に該当しない。

2 旧条例第6条第2号の該当性について

本件行政文書には、法人の所有地及び当該法人の印影が記載されているが、これは、財産管理及び事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報と言える。この情報を当該法人の事業活動に関わりなく一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人に不利益を与えることから、これが旧条例第6条第2号本文に該当することは明白であり、ただし書に該当しない。

3 旧条例第6条第5号の該当性について

本件行政文書には当該地方公共団体の事業の事務等に関する情報が記載されているが、これらの情報を一般に公開することは、当該地方公共団体の事務に関する公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。このことから、これらの情報が旧条例第6条第5号本文に該当することは明白である。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

新条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、新条例の施行日である平成12年10月1日前に作成し、又は取得した旧条例第2条第1項に規定する公文書に該当する行政文書であって平成18年4月1日前の公開請求の対象となったものについては、新条例附則第3項により、旧条例第6条各号の解釈、運用が適正であったか否かにより非公開情報の該当性について判断するものである。
また、非公開情報の該当性の判断に当たっては、処分庁が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件行政文書の内容等について

土地改良法(昭和24年法律第195号)の規定により、香南町が土地改良事業を行うために平成11年に提出した施行認可申請書であり、土地改良事業計画書、公告した事項を記載した書面、同意書、事業費の細目及び資金計画を記載した書面、従前地各筆調書等が添付されている。

3 非公開情報該当性について

次に掲げる各非公開条項についての基本的な考え方に基づき、別表3のとおり判断する。

  • (1)旧条例第6条第1号の該当性について
    旧条例第6条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る個人に関する情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれのあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
  • (2)旧条例第6条第2号の該当性について
    旧条例第6条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
  • (3)旧条例第6条第5号の該当性について
    旧条例第6条第5号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。

4 第3の2審査請求の理由のうち、(3)について

旧条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

(省略)

別表1

  1. 土地改良事業計画書の適否調査について 基盤整備促進事業 香南中部地区 特定団地(平成11年5月14日付起案文書)
  2. 土地改良事業施行認可申請に対する適否の決定通知および公告について 基盤整備促進事業 香南中部地区(特定団地)(平成11年5月24日付起案文書)
  3. 土地改良事業計画の適否決定に伴う公告について(通知)(平成11年6月25日付農林水産部長通知)
  4. 土地改良事業の認可について 基盤整備促進事業 香南中部地区(特定団地)(平成11年8月9日付起案文書)
  5. 土地改良事業計画の認可に伴う公告について(通知)(平成11年9月10日付農林水産部長通知)

別表2

公開請求にかかる行政文書香 南町土地改良事業施行認可申請書(平成11年5月14日付)
公開しない部分 公開しない理由
  • 同意書名簿において当該事業の施行申請について同意した者の総数及び同意率が記載された部分
  • 同意署名簿の「部落別同意署名状況一覧表」における左の内同意者数に関する部分
  • 同意書のうち住所、氏名、署名(記名)、印影が記載された部分
  • 宅地等地区編入同意書のうち所有者の印影、所有者以外の使用収益権者が記載された部分
  • 従前地各筆調書において耕作者の住所及び氏名が記載された部分
  • 非農用地設定に伴う農業振興地域整備計画協議資料における職業、非農用地を設定しようとする土地、変更後の土地用途、変更後の土地利用者、非農用地区域設定理由、施設の概要の転用予定に関する部分
  • 旧条例第6条第1号該当
    特定の個人が識別され得る個人に関する情報であるため
  • 旧条例第6条第5号該当
    町が行う土地改良事業の事務に関する情報であり、公開することにより、当該事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため。
宅地等地区編入同意書のうち所有者の印影(公開分は除く)
  • 旧条例第6条第2号該当
    当該法人の内部管理に関する部分であり、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがあるため。
  • 旧条例第6条第5号該当
    町が行う土地改良事業の事務に関する情報であり、公開することにより、当該事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため。

別表3

非公開部分 審査会の判断
  • 同意書名簿において当該事業の施行申請について同意した者の総数及び同意率が記載された部分
  • 同意署名簿の「部落別同意署名状況一覧表」における左の内同意者数に関する部分
  • 同意書のうち住所、氏名、署名(記名)、印影が記載された部分
  • 宅地等地区編入同意書のうち所有者の印影、所有者以外の使用収益権者が記載された部分
  • 従前地各筆調書において耕作者の住所及び氏名が記載された部分
  • 非農用地設定に伴う農業振興地域整備計画協議資料における職業、非農用地を設定しようとする土地、変更後の土地用途、変更後の土地利用者、非農用地区域設定理由、施設の概要の転用予定に関する部分
同意した者の総数、同意率、同意書のうち住所、氏名、署名(記名)、印影、所有者の印影、所有者以外の使用収益権者が記載された部分、耕作者の住所、氏名、職業、変更後の土地利用者、施設の概要の転用予定に関する部分については、本件土地改良事業の施行認可申請について個人が同意したか否か、当該同意が相続人によるものであるか否かがわかる情報、耕作者が誰であるかがわかる情報、利用者の氏名、職業がわかる情報等であり、個人の内心に関わる情報、資産に関する情報等であることから、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであると判断され、旧条例第6条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
審査会で見分したところ、「非農用地設定に伴う農業振興地域整備計画協議資料」は、換地の計画段階での町と県との協議資料であり、特定個人の財産の帰属に関する情報が記載されていた。当該資料における「非農用地を設定しようとする土地」欄のうち地番、地目、面積が記載されている部分、変更後の土地用途、変更後の土地利用者、非農用地区域設定理由が記載されている部分については、協議段階での暫定的な数値等が記載されており、本件土地改良事業は現在継続中であることから、これを公開すると、本件土地改良事業の計画変更に際して無用の混乱を生じ、町が行う土地改良事業の事務の円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められることから、旧条例第6条第5号に該当すると判断される。
宅地等地区編入同意書のうち所有者の印影(公開分は除く) 印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がそのような管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
本件処分により非公開とされた印影は、宅地等地区編入同意書に押印されている特定土地改良区理事長の印影であり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、土地改良事業の事業主体等に限定されていると考えられる。
すなわち、本件印影はいずれも当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人の各種書類の偽造等に悪用されるなどが考えられる。
よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、旧条例第6条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。

401号~450号 451号~500号 501号~

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