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答申
香川県小豆総合事務所長(以下「処分庁」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
審査請求人は、平成16年9月6日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、次の内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
処分庁は、平成16年9月16日付けで、本件請求の(1)、(3)及び(4)に対応する行政文書については、作成及び取得しておらず存在しないとして本件処分を行い、本件請求の(2)に対応する行政文書として、「一般海域における占用について」(平成15年10月31日付け起案文書)を特定して公開決定を行い、審査請求人に通知した。
審査請求人は、本件処分を不服として、平成16年9月23日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。
「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。
審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
香川県一般海域管理条例(平成12年香川県条例第12号)に基づく占用許可について、施設の占用許可期間が満了したときには、その設置者が施設を撤去して一般海域を原状に回復しなければならないことになっており(同条例第14条)、甲法人が設置した岩石積み出し施設についても、平成15年3月31日に占用許可期間が満了したため、設置者に対して施設を撤去するよう指導しているところである。施設の撤去義務は、その施設の設置者に課されているものであり、県において撤去する義務は存しないことから、撤去に要する費用について概算した文書は作成しておらず、当該文書は存在しない。
当該施設の撤去については、平成15年3月31日の占用許可期間の満了後、甲法人に対して、口頭及び文書により、数度にわたり撤去を指導しているところであるが、審査請求人からの平成16年9月6日付けの公開請求により開示した「一般海域における占用について(平成15年10月31日付け起案文書)」により行った以外の行政指導については、口頭により行っており、文書は作成しておらず、また取得した文書もない。行政手続法第35条第2項では、「行政指導が口頭でなされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない」と規定しているが、これによると、相手方から書面の交付を求められない場合は、行政指導についての書面を作成しないことは問題ない。
行政上の義務履行を確保するための一般法として行政代執行法(昭和23年法律第 43号)があるが、同法に基づく代執行の要件として、第2条で「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるとき」と定められており、現時点では、法律等に基づき命ぜられた行為でないこと、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められないなど、その要件に該当しないことが、客観的に明らかであることから、行政代執行法に基づく代執行について検討するための文書は作成しておらず、当該文書は存在しない。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
本件請求の(1)については、一般海域占用許可に係る岩石積み出し施設の撤去の概算費用について記載した一切の文書であるが、香川県一般海域管理条例に基づく占用許可期間が満了したときの当該施設の撤去費用は、当然その設置者が負担することになり、処分庁が撤去費用を積算する必要性はない。また、行政代執行法第2条に基づき香川県が自ら当該施設を撤去し、又は第三者に撤去させる代執行を行う場合には、設置者からその費用を徴収しなければならないため、その撤去費用について積算する必要が生じるが、諮問庁の説明によると、当該施設の撤去は、行政代執行法第2条の代執行をすべき 要件に該当しないことが、客観的に明らかであるとのことであるので、処分庁が撤去費用を積算する必要性があったとは考えられない。したがって、当該施設の撤去の概算費用について記載した文書を作成しなかったことに不自然な点があるとは認められず、その存在を推認させる特段の事情もない。
よって、処分庁が、本件請求の(1)の請求対象行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。
本件請求の(3)については、当該施設の撤去について甲法人と話し合いをした際の香川県職員の作成し及び取得した一切の文書であるが、諮問庁の説明によると、甲法人との話し合いは、行政指導として行ったものであり、当該施設を撤去する義務は、香川県一般海域管理条例第14条に定められており、行政指導の内容は明確であるとのことであるので、香川県職員が当該話し合いについての文書を作成しなかったこと、甲法人から香川県職員に対して当該話し合いについての書面の作成を求めなかったこと、また香川県職員が甲法人と当該話し合いをした際に文書を取得しなかったことに不自然な点があるとは認められず、その存在を推認させる特段の事情もない。
よって、処分庁が、本件請求の(3)の請求対象行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。
本件請求の(4)については、一般海域占用許可に係る岩石積み出し施設の撤去について、行政代執行法に基づく代執行について検討をした際の一切の文書であるが、諮問庁の説明によると、当該施設の撤去は、行政代執行法第2条の代執行をすべき要件に該当しないことが、客観的に明らかであるため、検討をするための文書を作成していないとのことであるから、処分庁が代執行についての協議をする必要性があったとは考えられないので、行政文書を作成しなかったことが不自然であるとは認められず、その存在を推認させる特段の事情もない。
よって、処分庁が、本件請求の(4)の請求対象行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。
なお、審査請求の理由にある「平成16年9月2日付けの香川県知事作成名義の「知事への手紙」の回答文書には、本件文書が存在する旨が記載されているのである。」との主張については、当該文書には、本件請求の(1)、(3)及び(4)の請求対象行政文書が存在する根拠となる旨の記載があるとは認められない。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
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