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公開日:2019年12月27日

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平成19年3月27日 答申第424号(香川県情報公開審査会答申)

平成19年3月27日 答申第424号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県東讃土地改良事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成16年12月22日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「新条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)A土地改良区の設立後の一切の定款変更の認可申請書類及びその一切の添付書類
  • (2)B土地改良区の設立後の一切の定款変更の認可申請書類及びその一切の添付書類
  • (3)A土地改良区及びB土地改良区以外の土地改良区の設立に関する認可申請書類及びその一切の添付書類
  • (4)A土地改良区及びB土地改良区以外の土地改良区の設立後の定款変更の認可申請書類及びその一切の添付書類

2 処分庁の決定

処分庁は、公開請求のあった行政文書として、次の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定し、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成17年2月18日付けで本件処分を、「○○土地改良区にかかる組織変更認可申請書(昭和25年3月27日付け申請)」外103件を特定し、新条例第7条第1号、新条例第7条第2号、香川県公文書公開条例(昭和61年香川県条例第30号。以下「旧条例」という。)第6条第1号又は旧条例第6条第2号に該当する部分があるとして、平成18年7月7日付けで一部公開決定を行い、それぞれ審査請求人に通知した。

  • (1)A土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成14年10月25日付け)
  • (2)B土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成16年4月23日付け)

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、平成17年3月7日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」の「公開しない理由」は、香川県の情報公開条例の非公開事由に該当しない。
  • (3)本件「決定通知書」の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 諮問庁の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 新条例第7条第1号の該当性について

新条例第7条第1号本文においては、個人に関する情報であって当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。
個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であるかどうか不明確である場合も含めて、個人に関する情報は非公開を原則としている。

  • (1)個人の氏名、個人が特定される役職名、議長及び議事録署名人の署名、印影
    これらの情報は、特定の個人が識別され得る個人に関する情報であることは明白である。よって、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しない。
  • (2)個人の過去の行動、言動又は心情に関する部分
    これらの情報は、特定の個人が識別され得る個人に関する情報であることは明白であり、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものである。
    よって、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しない。

2 新条例第7条第2号の該当性について

新条例第7条第2号本文においては、法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものは、公開しないことができると規定されている。

  • (1)土地改良区理事長の印影
    「土地改良区(連合を含む)代表者の届出及び印鑑登録等の取扱いに関する要領」第6の2では、所長又は県知事は「印鑑登録原票その他印鑑の登録又は証明に関する書類を閲覧に供しないものとする」とされており、当該情報は事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報と言える。この情報を当該法人の事業活動に関わりなく一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人に不利益を与えることから、これが新条例第7条第2号本文に該当することは明白であり、ただし書に該当しない。
  • (2)当該法人の収入、支出、経理、資金調達、事業等に関する部分
    これらの情報を当該法人の事業活動に関わりなく一般に公開することは、財政規模、財務体質、資金繰り等の当該法人固有の内部情報を公にするとともに、当該法人の財政基盤や重要な会計状況が推定され得るため、当該法人の自由な事業活動や正当な利益が損なわれるおそれがある。よって、新条例第7条第2号本文に該当することは明白であり、ただし書に該当しない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

新条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

土地改良法(昭和24年法律第195号)第30条第2項の規定により、土地改良区から提出された定款変更認可申請書であり、定款変更の事由を記載した書面、総代会の議事録の謄本、土地改良区定款、新旧対照表等が添付されている。

3 非公開情報該当性について

次に掲げる各非公開条項についての基本的な考え方に基づき、別表2のとおり判断する。

  • (1)新条例第7条第1号の該当性について
    新条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
  • (2)新条例第7条第2号の該当性について
    新条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。

4 第3の2の審査請求の理由のうち、(3)について

新条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

(省略)

別表1

公開請求にかかる行政文書 A土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成14年10月25日付け)
公開しない部分 公開しない理由
土地改良区理事長の印影 新条例第7条第2号該当
当該法人の内部管理に関する部分であり、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがあるため
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    個人の氏名及び個人が特定される役職名
    (公開される部分を除く)
  • 議長及び議事録署名人の署名、印影
新条例第7条第1号該当
特定の個人が識別され得る個人の情報に該当するため
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    5ページ目20行目から31行目まで(表紙部分を除く。以下同じ。)
    5ページ目33行目から34行目まで
    5ページ目36行目から42行目まで
    6ページ目2行目
    7ページ目5行目から9行目まで
    7ページ目12行目から14行目まで
    7ページ目16行目から19行目まで
    10ページ目7行目から12行目まで
    10ページ目20行目
    10ページ目26行目から27行目まで
    12ページ目34行目22字目から46行目まで
    13ページ目16行目から26行目まで
新条例第7条第1号該当
個人の過去の行動、言動又は心情に関する部分であり、個人の権利利益を害するおそれがあるため
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    7ページ目38行目21字目から24字目まで
    8ページ目1行目17字目から3行目23字まで
新条例第7条第2号該当
当該法人の収入に係る内部管理に関する部分であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
公開請求にかかる行政文書 B土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成16年4月23日付け)
公開しない部分 公開しない理由
土地改良区理事長の印影 新条例第7条第2号該当
当該法人の内部管理に関する部分であり、公にすることにより、当該法人等の正当な利益を害するおそれがあるため
  • 「第34回B土地改良区通常総代会議事録」における
    個人の氏名及び個人が特定される役職名
    (公開される部分を除く)
  • 議長及び議事録署名人の署名、印影
新条例第7条第1号該当
特定の個人が識別され得る個人の情報に該当するため
  • 「第34回B土地改良区通常総代会議事録」における
    3ページ目6行目21字目から25字目まで
    3ページ目7行目11字目から13字目まで
    3ページ目11行目4字目から7字目まで
    3ページ目12行目15字目から18字目まで
新条例第7条第2号該当
当該法人の内部管理に関する部分であり、公にすることにより、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため

別表2

公開請求にかかる行政文書 A土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成14年10月25日付け)
公開しない部分 審査会の判断
土地改良区理事長の印影 印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がそのような管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
本件処分により非公開とされた印影は、A土地改良区から提出された定款変更認可申請書に押印されているもの及びA土地改良区から提出された議事録が原本と相違ないことを証明するために押印されているものであり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、処分庁等に限定されていると考えられる。
すなわち、本件印影はいずれも当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人の各種書類の偽造等に悪用されるなどが考えられる。
よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    個人の氏名及び個人が特定される役職名
    (公開される部分を除く)
  • 議長及び議事録署名人の署名、印影
審査会で見分したところ、処分庁が非公開としたのは、総代会出席者、発言者、副理事長、議長、書記及び議事録署名人の氏名、個人の所属名、議長及び議事録署名人の署名・印影であった。これは、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであると判断され、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    5ページ目20行目から31行目まで(表紙部分を除く。以下同じ。)
    5ページ目33行目から34行目まで
    5ページ目36行目から42行目まで
    6ページ目2行目
    7ページ目5行目から9行目まで
    7ページ目12行目から14行目まで
    7ページ目16行目から19行目まで
    10ページ目7行目から12行目まで
    10ページ目20行目
    10ページ目26行目から27行目まで
    12ページ目34行目22字目から46行目まで
    13ページ目16行目から26行目まで
審査会で見分したところ、当該部分には、個人の過去の行動、言動及び心情に関する情報が記載されていることが確認された。これは、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであり、たとえ氏名などの個人が識別される部分を除いたとしても、公にすることにより当該個人の権利利益を害するおそれがあることから、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • 「平成13年度通常総代会議事録」における
    7ページ目38行目21字目から24字目まで
    8ページ目1行目17字目から3行目23字目まで
審査会で見分したところ、当該部分は、当該法人の収入状況を表す具体的な金額及び収入状況に関する改善案など内部管理に属する情報であり、これを当該法人の事業活動に関わりなく本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の財政状況が推測されること、また、当該法人と契約関係にある相手方との信頼関係を損ない、円滑な方策を取れなくなるおそれがあることなど、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
公開請求にかかる行政文書 B土地改良区にかかる定款変更認可申請書(平成16年4月23日付け)
公開しない部分 審査会の判断
土地改良区理事長の印影 本件印影は、B土地改良区から提出された定款変更認可申請書に押印されているもの及びB土地改良区から提出された議事録が原本と相違ないことを証明するために押印されているものであり、既述のとおり、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • 「第34回B土地改良区通常総代会議事録」における
    個人の氏名及び個人が特定される役職名
    (公開される部分を除く)
  • 議長及び議事録署名人の署名、印影
審査会で見分したところ、処分庁が非公開としたのは、総代会出席者、欠席者、発言者、議長及び議事録署名人の氏名、個人の役職名、議長及び議事録署名人の署名・印影であった。これは、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであると判断され、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • 「第34回B土地改良区通常総代会議事録」における
    3ページ目6行目21字目から25字目まで
    3ページ目7行目11字目から13字目まで
    3ページ目11行目4字目から7字目まで
    3ページ目12行目15字目から18字目まで
審査会で見分したところ、当該部分は、当該法人の収入状況を表す具体的な金額など内部管理に属する情報であり、これを当該法人の事業活動に関わりなく本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の財政状況が推測されるなど、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。

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