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公開日:2017年3月3日

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平成29年2月15日 答申第524号(香川県情報公開審査会答申)

平成29年2月15日(答申第524号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った公開決定(以下「本件処分1」という。)及び非公開決定(以下「本件処分2」という。)は、結論において妥当である。

第2 審査請求に至る経過

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成28年4月1日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)2015年度県立高松北中学、歴史、公民教科書を採択するために、調査員会等から勉強会へ、さらに勉強会等から教育委員会へ提出された全ての資料(評価結果も)(以下「本件請求1」という。)
  • (2)調査員会の議事録、勉強会の議事録(以下「本件請求2」という。)

2 実施機関の決定

  • (1)本件請求1について
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として2015年度県立高松北中学、歴史、公民教科書を採択するために、調査員会等から勉強会へ、さらに勉強会等から教育委員会へ提出された全ての資料(以下「本件行政文書」という。)を特定し本件処分1を行い、平成28年4月18日付けで審査請求人に通知した。
  • (2)本件請求2について
    実施機関は、本件請求2に対しては、公開請求のあった行政文書が不存在として本件処分2を行い、平成28年4月18日付けで審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分1及び本件処分2を不服として、平成28年7月14日付けで、それぞれの処分につき、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により実施機関に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分1及び2を取り消すとの裁決を求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、概ね次のとおりである。

  • ア 香川県立義務教育諸学校教科用図書調査員会(以下「調査員会」という。)には、実施機関の担当職員、県立高松北中学校及び北高校の職員が出席しているが、どのような指導をしたのか、どのような審議をしたのか、調査員会の議事録を公開してほしい。議事録がないのであれば、記憶でいいので、出来るだけ思い出して正直に書いてほしい。
  • イ 調査員会から教育委員会へ提出した「評価結果」とその他全ての資料を公開してほしい。
  • ウ 調査員会で教師たちに指導を行った実施機関の担当職員は「A社」歴史、公民教科書に決定した2015年8月31日の教育委員会8月臨時会の前に行った第5回の「勉強会」にも出席していると思われるが、調査員会からの報告がどのように行われ、教育委員がどのような発言をしたのか、この時の第5回の議事録を公開して欲しい。議事録がないのであれば、記憶でいいので、出来るだけ思い出して正直に書いてほしい。
  • エ 「A社」歴史、公民教科書に決定した2015年8月31日の教育委員会8月臨時会の前に行われた第5回の「勉強会」の時に実施機関の担当職員から教育委員に渡したであろう資料を全て公開して欲しい。(「A社」作成のパンフレットBも含む。)
  • オ 議事録、評価表等は「不存在」と回答してきたが、国税によって無償教科書を購入するのであるから、購入根拠となる評定の議事録が不存在との回答は無責任極まりない。このまま放置するわけにはいかない。

3 反論書による主張

概ね次のとおりである。

  • (1)平成27年10月に調査員会及び勉強会から出された資料及び議事録を公開請求したが、学校要覧等の一般的に公開されている資料ばかりで、調査員会及び勉強会の議事録もなく、何故「A社」に決定したのか納得できるものはなかった。
  • (2)平成28年4月に公開請求した際には新たに巻頭言のコピーが加えられたが、各社の巻頭言のコピーを比較しても「A社」に何故決定したのか納得できるものではない。
  • (3)「B」というパンフレットは一般市民にまで広く配布されているのであるから、教育委員会に教科書が配布されたと同時に「A社」が日本全国又は一部の教育委員会に採択の段階で利用してほしいと広く配布しているのだろうと想像される。全国の教育委員会に配布したのか、一部の教育委員会に配布したのか今のところ定かではないが、実施機関には早い段階で教科書と共に届けられたと思えてならない。
  • (4)弁明書には、パンフレット「B」は保存していないとあるが、2015年8月31日の8月臨時会以前の調査員会や勉強会の時点では存在し利用したのかはっきりして欲しい。
  • (5)調査員会から勉強会に提出された「評価結果」について弁明書において「平成28年度使用教科書調査研究資料」のみとなっており、その他の資料は存在しないと記載しているが、当該資料においてA社の歴史教科書は5位、公民教科書が3位となっており、何故A社を1位で採択決定したのかの説明になっていない。
  • (6)公文書管理法第34条に「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」とあり、社会科担当教師、校長、指導主事、勉強会に参加したであろう教育委員に当時の記憶等を呼び戻してでも、重要な意思形成過程の主な部分の記録を新たに作り、それを開示し説明責任を果たしてほしい。

第4 実施機関の説明の要旨

弁明書による説明は概ね以下のとおりである。

  • (1)処分の理由について
    「2015年度県立高松北中学、歴史、公民教科書を採択するために、調査員会等から勉強会へ、さらに勉強会等から教育委員会へ提出された全ての資料」については、高松北中学校の教科書採択に係る全ての文書を公開した。
    「2015年度県立高松北中学、歴史、公民教科書を採択するための調査員会の議事録、勉強会の議事録」についてであるが、調査員会における事務局の説明や調査員による作業については、議事録を作成するような性質のものではないこと、また、教科書勉強会は、教育委員が自由に議論を行う研究協議の場であることから、議事録を作成していない。そのため存在しないとし、非公開とした。
  • (2)審査請求の理由アからオに対する反論について
    • ア「調査員会の議事録の公開」にあたること
      • (a)調査員会は、教科用図書の採択にあたり、採択の対象となる教科用図書全てについて調査し、採択の選考となる資料を作成することを目的としている。
      • (b)調査員会においては、全体会と分科会を行っており、全体会は、事務局が調査員に対して、教科書研究の進め方や教科書選定の基本方針について説明したにすぎない。また、分科会は、調査員が国語、数学などの教科ごとに分かれて各出版社の教科書の特徴を「平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)」に取りまとめる作業を行ったものである。これらの事務局の説明や調査員による作業については、議事録を作成するような性質のものではないことから、議事録を作成していない。
      • (c)実施機関は、「平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)」について、香川県県民室に配架し、一般公開している。
    • イ「評価結果と、その他全ての資料の公開」にあたること
      • (a)「評価結果」にあたるものは、調査員会が作成した「平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)」である。
      • (b)実施機関は、これについて、香川県県民室に配架し、一般公開している。
      • (c)調査員会から教育委員会へ提出した資料は、県立高松北中学校が掲げている教育の特色から、中高一貫教育校として大学進学等を目指した質の高い教育内容に関する調査項目を設定し、調査結果を数値データとして該当箇所数をまとめた「平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)」のみであり、その他の資料は存在しない。
    • ウ「勉強会の議事録の公開」にあたること
      • (a)調査員会の報告は、平成27年7月15日の勉強会で使用した「平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)」である。
      • (b)教科書勉強会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に定める教育委員会の会議の前段階として、開催されたもので、教育委員が教科書に関して自由に議論を行う研究協議の場であることから、議事録は作成していない。
    • エ「A社作成のパンフレット「B」も含む勉強会の資料の公開」にあたること
      • a 「A社」作成のパンフレット「B」は、勉強会の資料としていない。
      • b 勉強会で使用した資料は、以下の(a)~(h)であり、(a)と(b)は香川県県民室に配架し、一般公開している。また、(c)~(h)は、公開請求があれば、すべて公開している。
        • (a)平成28年度使用教科書調査研究資料(県立中学校)
        • (b)平成27年度香川県教科用図書選定審議会等に係る資料
        • (c)平成28年度使用中学校用教科書目録
        • (d)県立高松北中学校の学校要覧
        • (e)県立高松北中学校の学校案内リーフレット
        • (f)平成23年度採択 県立中学校と県内国立・私立中学校の使用教科書について
        • (g)ふるさと教育(香川県)の推進に関する資料
        • (h)平成28年度使用教科書【社会(公民)】の巻頭言
    • オ「議事録が不存在との回答が無責任」にあたること
      教科書勉強会は、教育委員が自由に議論を行う研究協議の場であること、調査員会における事務局の説明や調査員による作業については、議事録を作成するような性質のものではないことから、議事録を作成していないものであり、回答が無責任であるものではない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書は下記のとおりである。

  • (a)平成28年度使用中学校用教科書目録(以下「本件行政文書1」という。)
  • (b)県立高松北中学校の学校要覧(以下「本件行政文書2」という。)
  • (c)県立高松北中学校の学校案内リーフレット(以下「本件行政文書3」という。)
  • (d)平成23年度採択 県立中学校と県内国立・私立中学校の使用教科書について(以下「本件行政文書4」という。)
  • (e)ふるさと教育(香川県)の推進に関する資料(以下「本件行政文書5」という。)
  • (f)平成28年度使用教科書【社会(公民)】の巻頭言(以下「本件行政文書6」という。)また、本件行政文書1~6の内容については、別表のとおりである。

3 本件処分1について

  • ア 教科書採択までの流れについて
    教科用図書の採択とは、学校で使用する教科書を決定することであり、文部科学大臣から送付される目録に掲載された教科用図書のうちから採択を行うことになっている。その権限は、公立学校を所管する市町村や都道府県の教育委員会にあり、本件で請求対象となっている県立高松北中学校の教科用図書は香川県教育委員会が採択を行っている。
    本県での教科用図書採択までの流れは、(1)実施機関である香川県教育委員会から香川県教科用図書選定審議会(以下「選定審議会」という。)に諮問を行って答申を受け、(2)実施機関が設置した調査員会が採択の対象となる教科用図書について調査を行った上で採択の参考となる資料を作成し、(3)勉強会にて教育委員が教科用図書について研究・協議を行い、(4)教育長及び教育委員で組織する教育委員会の会議において各委員の投票により過半数の票数を得た教科用図書の採択を行うこととなっている。
  • イ 行政文書の特定の妥当性について
    弁明書によると、本件請求内容である調査員会等から勉強会へ提出された資料及び勉強会等から教育委員会に提出された資料は本件行政文書1から6、及び県民室で配架している「平成27年度選定審議会に係る資料(以下「選定審議会資料」という。)」、「平成28年度調査研究資料(以下「調査研究資料」という。)」ということである。
    また、実施機関に確認したところ、勉強会において用いる資料は通例、本件行政文書1、選定審議会資料、調査研究資料であり、その他は教育委員からの求めに応じて作成した資料(本件行政文書2から6)を用いており、また、勉強会で用いた資料はそのまま教育委員会の採択の際に用いるとのことである。
    審査請求人は、審査請求書において、勉強会の時に担当指導主事から教育委員へ渡された資料、調査員会から教育委員会へ提出された「評価結果」及びその他全ての資料を公開すべき旨主張していることから、本件行政文書の特定の妥当性について以下検討する。
    まず、行政文書1の特定の妥当性について検討する。
    義務教育である小中学校等の教科用図書の採択に関しては、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(以下「無償措置法」という。)」にその方法が記載されている。また、採択の対象となる教科用図書は、無償措置法第13条第6項によると文部科学大臣から送付される目録に登載された教科用図書のうちから採択を行う必要があり、審査会において本件行政文書1を見分したところ、文部科学大臣から送付された平成28年度使用の教科書目録であることが確認された。採択の対象となる教科用図書が記載された目録は、採択に向けての勉強会及び教育委員会の採択時に当然用いられると考えられることから、本件行政文書1を本件請求対象文書として特定したことは妥当である。
    次に県民室に配架している選定審議会資料及び調査研究資料について検討する。
    選定審議会資料を審査会にて見分したところ、審議会の答申が主な内容となっている。無償措置法第11条第1項において都道府県教育委員会は選定審議会に意見を聴かなければならないとあり、実施機関が同法に基づき選定審議会に諮問し意見を聴取したのが当該答申である。また、当該答申には、採択基準及び「平成28年度使用中学校教科書の選定に必要な資料」等が添付されている。採択基準及び採択に必要な資料は採択に関係する手続きにおいて当然用いられると考えられることから、勉強会及び教育委員会の採択時において当該答申が綴じられた選定審議会資料を用いたとの実施機関の説明に不自然・不合理な点はない。
    他方、調査員会は香川県立義務教育諸学校における教科用図書の採択にあたり、採択の対象となる教科用図書全てについて調査し、採択の参考となる資料を作成することを目的として設置され、実施機関によると、同調査員会において、高松北中学校の特性、教育目標等が反映された調査研究資料が作成されたとのことである。
    審査会において、選定審議会答申の中の「平成28年度使用教科用図書採択基準(中学校)」を見分したところ、「県立学校における採択にあたってはそれぞれの学校の特性等を踏まえ、各学校の教育方針に基づいて学校毎に教科用図書を採択すること」とあることから、高松北中学校の特性を踏まえた調査研究資料を勉強会及び教育委員会の採択時において用いたとの実施機関の主張は是認できる。なお、審査請求人の主張する「調査員会から勉強会に提出したその他の資料」に関して、実施機関に確認したところ、本件公開請求を受けて、関係課及び文書保管庫内の探索を実施し、また電磁的記録については、執務室内のPCの保存データの探索を行ったが、その他の資料の存在は確認できなかったとのことであった。
    以上の点から、本件請求1に対し、本件行政文書1を特定し、また、選定審議会資料、調査研究資料を県民室に配架している旨情報提供したとの実施機関の説明に不自然・不合理な点はない。
    次に実施機関が本件請求対象文書として本件行政文書2から6を特定した点を検討する。
    実施機関に確認したところ、勉強会とは本件行政文書1、選定審議会答申及び調査研究資料を用いて教育委員が研究を行い、校長・保護者代表等から生徒の実態・学校の状況等について意見聴取等を行いながら、教育委員が求めた資料(本件行政文書2から6)を各教科の指導主事が作成し、補足説明を行うとのことである。また、勉強会で用いた資料は既述のとおり、教育委員会の採択の際に用いられているとのことである。
    本件行政文書2から6について審査会で見分したところ、それぞれ、学校要覧、学校案内のリーフレットといった学校の特徴・教育方針等が記載された資料、過去に県立・県内国立・私立中学校で使用した教科書の一覧、及び香川県の歴史、建造物等が記載された箇所を抜粋した資料、各公民教科書の巻頭言をまとめたものであることが確認された。
    選定審議会答申の採択基準においては「採択権者の権限と責任のもと、教科用図書の内容についての十分な調査研究によって、適切な手続きにより行うこと」及び上述のとおり、採択にあたってはそれぞれの学校の特性等を踏まえ各学校の教育方針に基づいて各学校毎に教科用図書を採択することとあり、本件行政文書2から6は同基準にある各学校の教育方針が記載された資料や教科用図書の内容について調査を行う資料であるといえる。
    また、無償措置法をはじめとした教科用図書採択の関係法令を審査会で見分したところ、教科用図書採択関係の手続きにおいて必要となる資料については特に定めはないことが確認された。
    したがって、本件行政文書2から6を本件請求対象文書として特定した実施機関の説明に不自然・不合理な点はない。
    なお、審査請求人は第5回の勉強会の時に担当指導主事から教育委員に渡されたであろうパンフレット「B」を公開してほしい旨主張している。審査請求書に添付された同パンフレットを見分したところ、特定の出版社が自社で発行した教科書について紹介したものであることが確認された。
    また、実施機関に当該パンフレットの存否について説明を求めたところ、特定の出版社のパンフレットは採択の公平性に失することから調査員会、勉強会、及び教育委員会の採択時に用いることができず、それ自体不要であることから、実施機関である高校教育課において2015年の調査員会時及び請求時も保有していないとのことである。
    当審査会事務局職員をして実施機関に当該文書の探索の方法及び範囲について確認させたところ、本件審査請求を受けた際、高校教育課の書庫、書棚を探索したが、その存在は認められなかったとのことであり、探索の方法及び範囲についても特段の問題があるとは認められない。
    また、文部科学省から教科書採択の公正確保について言及した通知が出ており、同通知において外部からの働きかけに左右されることなく採択権者の権限と責任において公正かつ適正な採択を行うことと記載されている。よって、当該資料は特定の出版社のパンフレットであるため公平性の観点から使用できず、使用できない資料を調査員会時及び請求時に保有していないとする実施機関の主張に不自然・不合理な点はない。
    以上の点から、2015年の調査員会時及び本件公開請求時に当該パンフレットを保有していないとする実施機関の主張は是認できる。
    なお、実施機関は情報提供している選定審議会資料及び調査研究資料については、本件公開請求において行政文書として特定しておらず、したがって当該資料に関しては何らの処分も行っていない。条例第28条においては、「香川県県立文書館等において管理されている行政文書であって一般に閲覧させ、又は貸し出すことができるとされているものについては、行政文書の公開をしない」と規定されており、この等には県民室が含まれることから県民室に配架している文書は、条例上の規定の適用除外となる。したがって、実施機関は、選定審議会資料及び調査研究資料について、公開時の説明や弁明書において県民室に配架している旨の情報提供をしているものの、本来は、公開請求時に当該資料を本件請求対象文書として特定した上で非公開決定を行うべきであった。
  • ウ 公開決定に関する審査請求人のその他の主張について
    審査請求人はその他種々の主張を行っているが、当審査会の上記判断を左右するものではない。

4 本件処分2について

  • ア 文書の特定の妥当性について
    実施機関は調査員会の議事録、勉強会の議事録について不存在の非公開決定を行っている。
    まず、調査員会の議事録について検討する。
    審査請求人は、審査請求書において議事録は「不存在」と回答してきたが、国税によって無償教科書を購入するのであるから、購入根拠となる評定の議事録が不存在との回答は無責任極まりない旨主張している。
    また、実施機関は弁明書において、調査員会においては、全体会と分科会を行っており、全体会は、事務局が調査員に対して、教科書研究の進め方や教科書選定の基本方針について説明したにすぎず、また、分科会は、調査員が教科ごとに分かれて各出版社の教科書の特徴を調査研究資料に取りまとめる作業を行ったものであり、事務局の説明や調査員による作業については、議事録を作成するような性質のものではないことから、議事録を作成していない旨主張している。
    そこで、実施機関に対して調査員会の詳細な説明を求めたところ、全体会においては既述のとおり、手続の流れ及び基本方針について説明したにすぎず、また分科会は、高松北中学校が掲げている教育の特色から調査項目を設定し、教科書一冊一冊を見分し、調査員が調査項目該当箇所に付箋をつけていく作業であるとのことであった。
    審査会において調査員会の設置根拠である「香川県義務教育諸学校教科用図書調査員会設置要綱」を見分したところ、議事録を作成する義務は明記されていないことが確認された。もっとも行政文書を作成する旨明記されていない場合であっても、実際の必要に応じて作成することはありうる。しかしながら、上記会議の性質や作業内容に鑑みて、議事録を作成していないとする実施機関の説明に不自然・不合理であるとまでは言えず、行政文書が作成されていると認めるに足りる具体的な事情はない以上、本件調査員会の議事録が存在しないとの実施機関の主張は是認できる。
    次に勉強会の議事録について検討する。
    審査請求人は審査請求書において既述のとおり、議事録を作成していないのは無責任である旨主張する。
    一方、実施機関は弁明書において、教育委員会の会議の前段階として開催されたもので、教育委員が教科書に関して自由に議論を行う研究協議の場であることから、議事録は作成していない旨主張する。
    実施機関に確認したところ、教育委員会の勉強会においては、既述のとおり、教育委員一人一人が教科用図書の調査研究を行い、学校関係者等から学校の状況等を聴取し、委員の求めに応じて担当指導主事が補足説明を行っているとのことである。また、勉強会は各委員の識見に基づいて、それぞれの立場や視点から自由に意見を述べる場であり意思決定を行う場ではないこと、記録に残ることにより委員の自由な議論や率直な意見交換を妨げる可能性があることから議事録を作成していないとのことである。
    勉強会は任意に設置されたものであり、当然、議事録を作成する法令上の義務はないが、既述のとおり、必要に応じて議事録を作成することは可能性としてありうる。しかしながら、従来の勉強会の性質、運営上、議事録を作成しないものとしている実施機関の説明が不合理であるとまではいえず、作成されていると認めるに足りる具体的な事情がない以上、本件勉強会の議事録が存在しないとの実施機関の主張は是認できる。
    したがって、実施機関が調査員会及び勉強会の議事録を存在しないとして非公開決定を行ったことは是認できる。
    なお、実施機関は、本件処分2の理由について、「2015年度県立高松北中学校、歴史、公民教科書を採択するための調査員会の議事録、勉強会の議事録は存在しないため」と記載しているが、一般に文書の不存在を理由とする非公開決定に際しては、香川県情報公開事務取扱要領にもあるように、単に対象行政文書を保有していないという事実だけでは足りず、行政文書が存在しない理由についても記載する必要がある。したがって、実施機関は弁明書において、調査員会及び勉強会の議事録は、既述のとおり、作成していないため存在しないとする理由を記載しているものの、本来は本件処分2を行う段階で当該文書が存在しない理由についても明記すべきであった。
  • イ 請求時に存在しない文書について
    審査請求人は調査員会及び勉強会について議事録がないのであれば、出来るだけ思い出して正直に書いてほしい旨主張している。そこで、条例上の公開請求権の趣旨を以下検討する。
    一般的に公開請求権とは「あるがままの形で行政文書を開示することを求める権利(総務省行政管理局『詳解 情報公開法』2001,30,財務省印刷局)」である。また、行政文書の定義が規定されている条例第2条第1項本文において、行政文書とは実施機関の職員が職務上作成し又は取得した文書等であって当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして保有しているもの、と規定されており、これは、当該実施機関が公開請求を受けた時に保有し存在している行政文書を公開請求の対象とする趣旨であると解される。したがって、請求時に存在しない行政文書を実施機関が新たに作成し、公開する義務はないといえる。
  • ウ 非公開決定に関する審査請求人その他の主張について
    審査請求人はその他種々の主張を行っているが、当審査会の上記判断を左右するものではない。
    よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

別表
行政文書の名称 行政文書の内容

本件行政文書1

「教科書の発行に関する臨時措置法」第6条第1項の規定により、教科書発行者の届出に基づき文部科学省において作成したもので、教科書として使用できる全ての教科書が記載されている。

本件行政文書2

高松北中学校が作成した学校の概要が掲載された資料。

本件行政文書3

受験生やその保護者向けに作成された生徒の教育活動を写真や図で紹介したリーフレット。

本件行政文書4

平成23年度採択時において県立中学校・県内国立・私立中学校がどこの出版社の教科書を使っているかを確認するために作成された使用教科書の一覧表。

本件行政文書5

出版された全ての教科書のうち、香川県の名所・芸術等が掲載されている箇所を抜粋した資料。

本件行政文書6

社会(公民)の教科書の初めに掲げる文章や言葉をまとめたもの。

401号~450号 451号~500号 501号~

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