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公開日:2015年1月30日

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平成27年1月30日 答申第512号(香川県情報公開審査会答申)

平成27年1月30日(答申第512号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った本件異議申立ての対象となった行政文書について、その存否を明らかにしないで本件請求を拒否した決定(以下「本件処分」という。)を取り消し、改めて公開・非公開等の決定を行うべきである。

第2 異議申立てに至る経過

  1. 行政文書の公開請求 異議申立人は、平成26年3月17日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。香川県土庄町所在の宗教法人Aについての宗教法人法(昭和26年法律第126号。以下「法」という。)第25条第4項の規定により平成23年1月以降に提出された一切の文書
  2. 実施機関の決定 実施機関は、本件請求について、請求対象となる行政文書の存否を答えることにより、不活動宗教法人対策事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるという点で条例第7条第4号に該当する非公開情報を公開することになるので、条例第10条により当該行政文書の存否を明らかにしないとして、本件処分を行い、平成26年3月18日付けで異議申立人に通知した。
  3. 異議申立て 異議申立人は、本件処分を不服として、平成26年3月26日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「平成26年3月18日付25総学第62007号文書による非開示決定処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。

  • (a)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であるから、本件処分を取り消し、開示請求対象の文書中の非開示部分を除いて全部を開示する必要がある。
  • (b)本件決定通知書記載の「公開しない理由」の主張は、誤りである。本件開示請求対象文書中の条例第7条第4号の規定による非開示部分を除いて開示しても、同号に規定する非開示部分を開示することにはならないのである。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、次のとおりである。

本件公開請求の対象となる行政文書の存否応答拒否の該当性について
条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。また、条例第10条は、公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとなるときは、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該請求を拒否することができると定めている。本件公開請求は、「香川県土庄町に所在する宗教法人Aについての法第25条第4項の規定により平成23年1月以降に提出された一切の書類」であり、当該請求に対して対象となる行政文書の有無を明らかにすることは、法第25条第4項の規定に基づき宗教法人Aから当該法人の所轄庁である知事に提出された文書が存在するか否かという情報を明らかにすることになる。法第25条第4項では、宗教法人は毎会計年度終了後4か月以内に、宗教法人の事務所に備付けられた役員名簿や財産目録等の書類の写しを所轄庁に提出しなければならないとされている。しかし、不活動状態にある宗教法人がこれらの書類を提出することはない。さらに、これらの書類は定期的に提出することが義務づけられているものであり、その書類の提出状況が不活動宗教法人であるか否かを判断する際の一つの目安となる。そうすると、仮に特定宗教法人が不活動宗教法人であった場合、これらの書類が不存在であることを公にすると、特定宗教法人が不活動宗教法人であることが明らかとなり、その結果、その法人格を買収して悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動宗教法人の解散を推進し、法人格の悪用を防止するといった不活動宗教法人対策事務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがある。したがって、本件請求に対して請求対象行政文書の存否を応えることは、条例第7条第4号の非公開情報を公開することになるため、条例第10条に基づき当該行政文書の存否を明らかにしないものである。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。 なお、非公開情報の該当性の判断に当たって、非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件対象行政文書について

本件請求対象行政文書は法第25条第4項に基づき毎会計年度終了後4か月以内に宗教法人から所轄庁へ提出されることとなっている事務所備付け書類の写しである。法第25条第4項に基づく事務所備付け書類の写しの提出制度とは、所轄庁が備付け書類の写しの提出状況及びその内容を確認して、宗教法人がその目的に沿って活動していることを把握することを目的とする制度である。そして、法第25条第4項によって所轄庁に提出されることになっている備付け書類の写しとは、役員名簿、財産目録、収支計算書、貸借対照表、境内建物に関する書類、事業に関する書類である。以下、各文書類型別に説明する。役員名簿とは、法において定められている代表役員等の名簿であり、作成、備付けが義務付けられている。財産目録とは、一定の時点における総財産に個別的に価額を付した静態的な明細表であり、作成、備付けが義務付けられている。収支計算書とは、一会計年度の収入、支出の結果を表で表したものである。一会計年度の収入の額が8,000万円以内で、かつ、公益事業その他の事業を行わない場合にはその作成義務が免除されている。貸借対照表とは、宗教法人が現に有する財産額と有すべき財産額とを対照する帳簿である。作成は宗教法人の任意であり、作成が義務付けられているわけではない。境内建物に関する書類とは、財産目録に記載されていない境内建物がある場合に限り作成しなければならない。事業に関する書類とは、法第6条に基づく公益事業および公益事業以外の事業を行うことができるが、このような事業を行っている場合にのみ、作成、備付けが義務付けられている。

3 本件処分の妥当性について

実施機関は、「法第25条第4項では、宗教法人は毎会計年度終了後4か月以内に、宗教法人の事務所に備付けられた役員名簿や財産目録等の書類の写しを所轄庁に提出しなければならないとされている。しかし、不活動状態にある宗教法人がこれらの書類を提出することはない。さらに、これらの書類は定期的に提出することが義務づけられているものであり、その書類の提出状況が不活動宗教法人であるか否かを判断する際の一つの目安となる。そうすると、仮に特定宗教法人が不活動宗教法人であった場合、これらの書類が不存在であることを公にすると、特定宗教法人が不活動宗教法人であることが明らかとなり、その結果、その法人格を買収して悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動宗教法人の解散を推進し、法人格の悪用を防止するといった不活動宗教法人対策事務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがある。したがって、本件請求に対して請求対象行政文書の存否を応えること、条例第7条第4号の非公開情報を公開することになるため、条例第10条に基づき当該行政文書の存否を明らかにしないものである。」と主張する。確かに、実施機関の書類の提出状況が特定宗教法人が不活動宗教法人であるか否かを判断する際の一つの目安になるという主張は是認できる部分もある。しかし、法第25条第4項によって毎会計年度提出することとされている書類について、前述のように各文書類型別に検討を行っても、その全てに作成義務があるわけではない。さらに、宗教法人が財産目録等の備付け書類の写しを所轄庁に提出しない事情には、実施機関が主張するような不活動宗教法人であるから提出できないという理由以外にも、提出を怠っている等さまざまな他の理由も考えられる。よって、その提出がないことにより、当該宗教法人が現在不活動であることが直ちに推測されるわけではなく、前述の実施機関の主張は是認できない。通常、情報公開請求があった場合、請求対象となる行政文書が存在すれば、当該文書の存否を明らかにした上で、公開又は非公開の決定を行い、対象となる行政文書が存在しなければ、不存在である旨を示して、非公開決定を行うべきであるが、情報の性質によっては、公開請求に係る行政文書が存在するか否かを明らかにするだけで、非公開とすることによる利益が害される場合がある。実施機関が適用したとする条例第10条は、そのような場合に、行政文書の存否を明らかにしないで、その請求を拒否することができることを定めたものである。ただし、同条の規定による決定は、あくまで例外的なものであり、その適用に当たっては、これを厳格に解釈し、行政文書の存否を明らかにすること自体が直ちに条例上の非公開情報を公開することとなるような極めて限られた場合にのみ許容されるものであると考えるべきである。この点について、本件処分の妥当性の検討を行うと、前述のとおり法第25条第4項によって提出される備付け書類の写しの有無を答えることにより、当該宗教法人がその提出義務を履行していないことが分かったとしても、そのこと自体が直ちに不活動宗教法人の法人格が悪用される契機となり、所轄庁の不活動宗教法人対策事務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとまでいうことはできない。すなわち、本件請求対象文書である法第25条第4項に基づく提出書類が存在しているか否かを明らかにするだけで、条例第7条第4号の非公開情報を公開することとなるとは認められず、よって、条例第10条の規定には該当しないと判断される。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

401号~450号 451号~500号 501号~

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