平成28年1月19日 答申第518号(香川県情報公開審査会答申)
平成28年1月19日(答申第518号)
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県監査委員(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、平成27年6月4日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
- (1)香川県監査委員作成の平成○○年○月○○日付○○監査第○○号文書の「延長の理由」欄記載の第三者への意見照会をしたことの分かる一切の文書(当該照会文書控えを含む)(以下「本件公開請求1」という。)
- (2)上記(1)記載の文書以外の第三者への意見照会をしたことの分かる一切の文書(当該各照会文書控えを含む)(以下「本件公開請求2」という。)
2 実施機関の決定
- (1)本件公開請求1について実施機関は、公開請求のあった行政文書として、次の行政文書を特定し、条例第7条第1号本文に該当するとして本件処分を行い、平成27年6月25日付けで異議申立人に通知した。
- (a)行政文書の公開に係る意見照会について(平成27年5月20日付け起案文書27監査第31号)(以下「本件行政文書1」という。)
- (b)行政文書の公開に係る意見照会について(平成27年5月20日付け起案文書27監査第32号)(以下「本件行政文書2」という。)
- (2)本件公開請求2について 実施機関は、本件公開請求2に対しては、公開請求があった文書(以下「本件行政文書3」という。)が不存在として本件処分を行い、平成27年6月25日付けで異議申立人に通知した。
3 異議申立て
異議申立人は、本件処分を不服として、平成27年7月2日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
第3 異議申立ての内容
1 異議申立ての趣旨
「本件処分を取り消すとの決定を求める。」というものである。
2 異議申立ての理由
異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
- (1)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であるから、本件処分を取り消し、全部を公開する必要がある。
- (2)本件決定通知書記載の「公開しない理由」1及び2記載の主張は、誤りである。いずれも、条例に規定する非公開事由に該当しない。
第4 実施機関の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は次のとおりである。
- 1 本件行政文書1及び2について
条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。本件行政文書1及び2は、異議申立人が受け取った平成○○年○月○○日付け○○監査第○○号行政文書公開決定等期間延長通知書の文書日付、文書番号により公開請求したものと考えられ、本人しか知り得ない情報により自己に係る情報の公開を請求したものと推認される。したがって、個人を特定しての請求と解されるので、本件行政文書1及び2の情報の全てが公にすることにより個人を識別できる情報であり、条例第7条第1号本文に該当し、同号ただし書のいずれにも該当しない。
- 2 本件行政文書3について
本件行政文書1及び2以外には行政文書の公開に係る意見照会をしたことの分かる文書は、保有しておらず、本件行政文書3は、存在しない。
第5 審査会の判断理由
1 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
2 本件公開請求1について
- (1)本件行政文書1及び2の内容等について 本件行政文書1及び2は、平成27年5月12日に公表した政務活動費に関する住民監査請求の監査結果に係る行政文書の公開請求があったため、条例第15条第1項の規定により住民監査請求の請求人に対し公開についての意見照会を行い、また、監査の調査対象であった香川県議会議長及び香川県議会事務局長に対しても、公開についての意見照会を行った起案文書である。
- (2)非公開情報該当性について 条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした本件行政文書について検討する。本件公開請求1は、その内容から、特定の日付・文書番号の行政文書公開決定等期間延長通知書に記載された情報をもとに行われた行政文書の公開請求であると推認される。通常、特定文書の日付及び文書番号は、当該文書を受け取った本人しか知り得ない情報であることから、それらを特定してなされた行政文書の公開請求は、個人を特定しての請求にあたると考えられる。したがって、かかる請求により特定された本件行政文書1及び2の情報の全てが、特定の個人を識別できる情報であり、条例第7条第1号本文に該当するという実施機関の主張は是認できる。
3 本件公開請求2について
本件請求対象行政文書の存否について 本件公開請求2は、本件公開請求1により特定される文書以外の「第三者への意見照会をしたことの分かる」行政文書について、その公開を求めたものである。第三者への意見照会に関しては、条例第15条第1項において、「公開請求に係る行政文書に・・・第三者・・・に関する情報が記録されているときは、実施機関は、公開決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、・・・意見書を提出する機会を与えることができる」旨定められており、その実施については、実施機関に義務づけられたものではなく、任意的に行われるものである。そこで、実施機関に確認したところ、実施機関においては、本件公開請求1に記載されたものの他に、第三者への意見照会を実施した例はないとのことであった。そうであるとすれば、本件行政文書1及び2以外には行政文書の公開に係る意見照会をしたことの分かる文書は保有していないという実施機関の主張は是認できる。
4 以上より、実施機関が行った本件処分は妥当であると判断できる。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過
当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)
401号~450号 451号~500号 501号~