平成28年7月13日 答申第522号(香川県情報公開審査会答申)
平成28年7月13日(答申第522号)
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、平成27年7月31日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
- (1)鳥獣被害の通報があった場合に、香川県が県下市町に取扱い要領を指導したことのわかる文書の全部。(以下「本件請求」という。)
- (2)対象鳥獣を殺処分した場合に、その死体に対して支払った対価の価格の分かる書類の全部。(以下「本件請求外請求」という。)
2 実施機関の決定
- (1)本件請求について
実施機関は、本件請求に対しては、公開請求があった文書が不存在として本件処分を行い、平成27年8月13日付けで異議申立人に通知した。
- (2)本件請求外請求について
実施機関は、本件請求外請求に対しては、公開請求のあった行政文書として、香川県鳥獣捕獲等助成事業費補助金交付要綱(以下「補助金交付要綱」という。)を特定して公開決定を行い、平成27年8月13日付けで異議申立人に通知した。
3 異議申立て
異議申立人は、本件処分を不服として、平成27年9月3日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
第3 異議申立ての内容
1 異議申立ての趣旨
香川県は、「行政文書非公開決定通知書」に記載のとおり、取り扱い要領の制定については、法律上義務付けされておらず、文書不存在として非公開処分を行っている。しかしながら、同日付けの公開決定通知書で開示された文書「補助金交付要綱」の第3条において、「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(以下、「鳥獣被害防止特措法」という。)」が存在し、同要綱第4条、第5条、第7条、第8条の規定に基づく文書が不存在である筈が無い。
2 異議申立ての理由
異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
本件「非公開」決定の理由は、条例の趣旨に反した、違法判断であるから、本件決定理由を破棄して全部公開することを求める。
3 意見書
意見書による主張は、おおむね次のとおりである。
非公開理由説明書において鳥獣被害については市町が対応することになっているとあるが、異議申立人がイノシシの被害を受け土庄町役場に相談した際に、役場の職員は適切な対応をしなかった。香川県農業改良普及所職員が補助金交付要綱第5条、第7条、第11条、及び第13条に基づく対応をしていれば、こうした町役場の職員の横暴は防ぐことができる。また、町職員も同14条に基づく「現地調査」を行うべきであった。
本件行政文書が存在しないのであれば、鳥獣被害に円滑な対応をしているといえるのか。担当職員に文書の提出を求めていないのであれば、その対応は失当というべきである。
第4 実施機関の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は次のとおりである。
- (1)鳥獣被害のあった場合については、市町が対応することになっており、県としては鳥獣被害へ円滑に対応するため、口頭で指導・助言を行っており、請求に係る行政文書が存在しないため。
- (2)また、「対応マニュアル」の制定については、法律上義務付けされていないことから、市町では作成されておらず、県が当該マニュアル作成に関して、文書における指導を行っている事実はないため、請求に係る行政文書は存在しない。
第5 審査会の判断理由
1 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
2 本件請求対象行政文書の存否について
- (1)行政文書の特定について
本件請求は、「鳥獣被害の通報があった場合に、香川県が県下市町に取扱要領を指導したことの分かる文書」を請求したものであり、実施機関は、請求内容を特定するため、異議申立人に請求内容について電話にて確認を行った。実施機関に確認内容の詳細な説明を求めたところ、異議申立人が電話にて、「本件請求内容の鳥獣被害とはイノシシ・シカによる農作物被害を指し、当該被害を受けた際に、土庄町役場に電話をしたが、適切な対応をしてもらえなかった。住民から被害の通報を受けた場合の対応マニュアルが市町に存在する筈で、その作成は県が指導していると考えられることから、県が市町に当該マニュアルの作成を指導した文書が見たい。」といった申出がなされたとのことである。また、異議申立人の言う「マニュアル」とは、被害の通報を受けた際の詳細な対応が載った「マニュアル」を指すとのことであった。実施機関は、異議申立人から確認した内容を受け、本件請求対象文書を、農作物へのイノシシ・シカによる被害の通報が市町にあった際に、当該被害の通報を受けた場合の対応マニュアルの作成を香川県が市町に指導したことの分かる文書として特定を行った。
なお、農作物被害が発生した際の対応の概略が記載されている「イノシシ等が出没したときの対応マニュアル」は存在するが、当該文書は、異議申立人が主張する詳細なものではなく、また、県が市町にマニュアルの作成を指導した文書にも該当しないことから、実施機関は当該文書を本件請求対象文書ではないと判断している。
- (2)不存在を理由とする非公開決定について
実施機関は上述のとおり、マニュアルの作成を県が指導した文書について、不存在を理由とする非公開決定を行っている。
このことについて実施機関の説明では、本件公開請求にある、「住民が鳥獣被害を通報した場合の対応マニュアル」については法令上の策定義務がないことから、市町において作成されておらず、また、県が当該マニュアル作成を指導・助言した事実はないとのことであった。
そこで、法令上当該マニュアルの策定義務がないとする点について、鳥獣被害防止特措法(平成19年12月21日法律第134号)、同法律の関係規則を見分したところ、本件公開請求における「対応マニュアル」の策定を義務付ける規定等は無いことが確認された。また、市町において当該マニュアルの策定義務がないことから、県が市町に当該マニュアルを策定するよう指導することを義務付ける法律等も存在しない。
上述のとおり、市町は住民が鳥獣被害を通報した場合の対応マニュアルを法令上の義務がないことから作成しておらず、また、県が当該マニュアルの作成を指導する義務はなく、また、指導した事実もないことから、実施機関が当該マニュアルの作成を指導した文書を保有していないとする主張は是認できる。
また、異議申立人は、「補助金交付要綱」に基づく文書が存在しない筈が無いと主張しているが、審査会で当該要綱を見分したところ、当該要綱は農作物被害を軽減させるための措置に対して県が市町等に補助金を交付することを趣旨とした補助金の申請対象や申請方法を記載したものであり、異議申立人のいう当該請求対象文書が存在する根拠となる要綱ではないことが確認された。このため、当該要綱をもって、請求対象行政文書が存在するという異議申立人の主張は当たらない。また、異議申立人が主張する上記根拠は当該要綱ではなく鳥獣被害防止特措法を指しているとしても、既述のとおり、当該法律においてマニュアル策定を指導することを義務付ける規定が存在しないことから、異議申立人のいう当該請求対象文書が存在する根拠となる法律には当たらない。
なお、実施機関によると、市町においては、鳥獣による農作物被害の対応として、有害鳥獣を地域に寄せ付けないための環境づくりや、国又は県の補助事業等を活用した侵入防止柵などの整備、有害鳥獣捕獲、地域におけるリーダー育成方法などの対策を講じており、これらについて県は市町に対し助言を行っているとのことである。
以上のことを踏まえて、請求対象行政文書が存在しないため非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。
- (3)異議申立人のその他の主張について
また、異議申立人は、その他種々の主張をしているが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
以上より、本件請求対象文書が不存在であるとして実施機関が行った本件処分は妥当であると判断される。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過
(省略)
401号~450号 451号~500号 501号~