平成28年5月18日 答申第520号(香川県情報公開審査会答申)
平成28年5月18日(答申第520号)
答申
第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
第2 異議申立てに至る経過
1 行政文書の公開請求
異議申立人は、平成27年6月4日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
- 一般社団法人A及び旧社団法人Aに対して平成22年度以降の各年度に支出した業務委託費用その他の金員に係る支出金調書。ただし、有害鳥獣の捕獲に関して平成24年度以降に支出した金員に係る支出金調書を除く。
- 一般社団法人A及び旧社団法人Aに対して平成22年度以降に業務委託をした際の委託内容の分かる文書
2 実施機関の決定
実施機関は、公開請求のあった行政文書として、次の行政文書を特定し、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、平成27年6月16日付けで異議申立人に通知した。
- (1)平成22年度狩猟関係事業委託料支出書類(以下「本件行政文書1」という。)
- (2)平成23年度狩猟関係事業委託料支出書類(以下「本件行政文書2」という。)
- (3)平成24年度狩猟関係事業委託料支出書類(以下「本件行政文書3」という。)
- (4)平成25年度狩猟関係事業委託料支出書類(以下「本件行政文書4」という。)
- (5)平成26年度狩猟関係事業委託料支出書類(以下「本件行政文書5」という。)
- (6)平成22年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託料支出書類(以下「本件行政文書6」という。)
- (7)平成23年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託料支出書類(以下「本件行政文書7」という。
- (8)平成24年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託料支出書類(以下「本件行政文書8」という。)
- (9)平成25年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託料支出書類(以下「本件行政文書9」という。)
- (10)平成26年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託料支出書類(以下「本件行政文書10」という。)
- (11)平成24年度香川県市街地イノシシ等侵入防止モデル事業市街地イノシシ個体数調整事業委託料支出書類(以下「本件行政文書11」という。)
- (12)平成25年度香川県市街地周辺イノシシ等侵入防止対策支援事業市街地イノシシ個体数調整事業委託料支出書類(以下「本件行政文書12」という。)
- (13)平成26年度香川県野生鳥獣適正管理推進事業野生鳥獣捕獲試験事業委託料支出書類(以下「本件行政文書13」という。)
- (14)香川県緊急雇用創出基金事業有害鳥獣捕獲技術指導員人材育成事業業務委託料支出書類(以下「本件行政文書14」という。)
- (15)平成22年度狩猟関係事業委託契約書(以下「本件行政文書15」という。)
- (16)平成23年度狩猟関係事業委託契約書(以下「本件行政文書16」という。)
- (17)平成24年度狩猟関係事業委託契約書(以下「本件行政文書17」という。)
- (18)平成25年度狩猟関係事業委託契約書及び変更契約書(以下「本件行政文書18」という。)
- (19)平成26年度狩猟関係事業委託契約書及び変更契約書(以下「本件行政文書19」という。)
- (20)平成22年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託契約書(以下「本件行政文書20」という。)
- (21)平成23年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託契約書(以下「本件行政文書21」という。)
- (22)平成24年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託契約書及び同変更契約書(以下「本件行政文書22」という。)
- (23)平成25年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託契約書及び同変更契約書(以下「本件行政文書23」という。)
- (24)平成26年度小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務委託契約書及び同変更契約書(以下「本件行政文書24」という。)
- (25)平成24年度香川県市街地イノシシ等侵入防止モデル事業市街地イノシシ個体数調整事業委託業務契約書及び同変更契約書(以下「本件行政文書25」という。)
- (26)平成25年度香川県市街地周辺イノシシ等侵入防止対策支援事業市街地イノシシ個体数調整事業委託業務契約書及び同変更契約書(以下「本件行政文書26」という。)
- (27)平成26年度香川県野生鳥獣適正管理推進事業野生鳥獣捕獲試験事業委託業務委託契約書(以下「本件行政文書27」という。)
- (28)香川県緊急雇用創出基金事業有害鳥獣捕獲技術指導員人材育成事業業務委託契約書(以下「本件行政文書28」という。)
3 異議申立て
異議申立人は、本件処分を不服として、平成27年6月24日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
第3 異議申立ての内容
- 異議申立ての趣旨 「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
- 異議申立ての理由 異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
- (a)本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であるから、本件処分を取り消し、全部を公開する必要がある。
- (b)本件決定通知書記載の「公開しない理由」の主張は、誤りである。いずれも条例に規定する非公開事由に該当しない。
第4 実施機関の説明の要旨
非公開理由等説明書による説明は、次のとおりである。
- (1)条例第7条第2号の該当性について 条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。本件行政文書のうち、支出命令書及び請求書の金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号、口座名義については、法人の経理、経営等に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、請求書の法人の印影については、法人の事業に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるほか、契約書の法人の印影については、法人の事業に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。したがって、条例第7条第2号に該当する。
第5 審査会の判断理由
- 判断における基本的な考え方について
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
- 本件行政文書の内容について
本件行政文書1~28の内容については、別表2のとおりである。
- 非公開情報該当性について
条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
- (a)本件行政文書(1)~(14)のうちの法人の口座情報(金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号、口座名義)について 口座情報は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかは本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。しかしながら、このような情報であっても、当該法人等が内部管理情報として管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。本件口座情報は、支出命令書、請求書、執行伺兼支出命令書に記載されているものである。このうち、請求書を提出する相手方は、契約の相手方である実施機関等に限定されているものであり、また、支出命令書、執行伺兼支出命令書に記載された口座情報は、Aから提出された請求書に記載された口座情報を実施機関が転記したものであることからすると、本件口座情報は、当該法人において内部管理情報として取り扱われているものと考えられ、このような口座情報を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
- (b)本件行政文書(1)~(28)のうち請求書及び契約書の法人の印影について印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。しかしながら、このような情報であっても、当該法人等が内部管理情報として管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。本件処分により非公開とされた印影は、Aが実施機関に提出した請求書に押印されていたもの、また、Aと実施機関が締結した業務委託契約書及び同変更契約書に押印されていたものであり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、契約の相手方である実施機関等に限定されていると考えられる。すなわち、本件印影はいずれも当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人の各種書類の偽造等に悪用されることなどが考えられる。よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第6 審査会の審査経過
(省略)
別表1
(1)本件行政文書1~14
公開しない部分 |
公開しない理由 |
支出命令書及び請求書の金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号、口座名義 |
法人の経理、経営等に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当) |
請求書の法人の印影 |
請求書の法人の印影 |
(2)本件行政文書15~28
公開しない部分 |
公開しない理由 |
契約書の法人の印影 |
法人の事業に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当) |
別表2
本件行政文書14 平成26年度に県が一般社団法人Aに委託した香川県緊急雇用創出基金事業有害鳥獣捕獲技術指導員人材育成事業に係る支出命令書、請求書、執行伺書である。
本件行政文書1~28
行政文書 |
内容 |
本件行政文書1~5 |
平成22年度から26年度における、県が一般社団法人A及び旧社団法人A(以下、「A」という。)に委託した狩猟関係事業に係る支出命令書、請求書、執行伺書、執行伺変更書である。 |
本件行政文書6~10 |
平成22年度から26年度における、県がAに委託した小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務に係る執行伺兼支出命令書、請求書である。 |
本件行政文書11 |
平成24年度に、県が旧社団法人Aに委託した香川県市街地イノシシ等侵入防止モデル事業市街地イノシシ個体数調整事業に係る支出命令書、請求書、執行伺変更書、執行伺書である。 |
本件行政文書12 |
平成25年度に、県が旧社団法人Aに委託した香川県市街地周辺イノシシ等侵入防止対策支援事業市街地イノシシ個体数調整事業に係る支出命令書、請求書、執行伺変更書、執行伺書である。 |
本件行政文書13 |
平成26年度に県が一般社団法人Aに委託した香川県野生鳥獣適正管理推進事業野生鳥獣捕獲試験事業に係る支出命令書、請求書、執行伺書である。 |
本件行政文書14 |
平成26年度に県が一般社団法人Aに委託した香川県緊急雇用創出基金事業有害鳥獣捕獲技術指導員人材育成事業に係る支出命令書、請求書、執行伺書である。 |
本件行政文書15~19 |
平成22年度から26年度における、県がAに委託した狩猟関係事業に係る契約書である。また、平成25年度及び26年度の文書は同契約書の一部変更契約書も含まれている。 |
本件行政文書20~24 |
平成22年度から26年度における、県がAに委託した小豆島地域ニホンジカ捕獲個体調査業務に係る契約書である。また、平成24年度、25年度及び26年度の文書は同契約書の一部変更契約書も含まれている。 |
本件行政文書25 |
平成24年度に、県が旧社団法人Aに委託した香川県市街地イノシシ等侵入防止モデル事業市街地イノシシ個体数調整事業に係る契約書及び同契約書の一部変更契約書である。 |
本件行政文書26 |
平成25年度に、県が旧社団法人Aに委託した香川県市街地周辺イノシシ等侵入防止対策支援事業市街地イノシシ個体数調整事業に係る契約書及び同契約書の一部変更契約書である。 |
本件行政文書27 |
平成26年度に県が一般社団法人Aに委託した香川県野生鳥獣適正管理推進事業野生鳥獣捕獲試験事業に係る契約書である。 |
本件行政文書28 |
平成26年度に県が一般社団法人Aに委託した香川県緊急雇用創出基金事業有害鳥獣捕獲技術指導員人材育成事業に係る契約書である。 |
401号~450号 451号~500号 501号~