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答申
香川県監査委員(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成26年2月15日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
実施機関は、公開請求のあった行政文書として、次の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定し、条例第7条第1号本文に該当するとして本件処分を行い、平成26年3月3日付けで異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成26年3月11日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める。」というものである。
異議申立書において主張している理由は、次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は次のとおりである。
条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本件行政文書は、個人の住民監査請求に関する行政文書であるので、本号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しない。
また、本件請求は、異議申立人が受け取った住民監査請求の却下について通知した文書の日付、文書番号により公開請求したものと考えられ、本人しか知り得ない情報による自己に係る情報の公開を請求したものと推認される。
したがって、個人を特定しての請求と解されるので、本件行政文書の情報の全てが特定の個人を識別できる情報であり、条例第8条の規定による一部公開はできないものである。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
本件行政文書の内容は、次のとおりである。本件行政文書は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項の規定に基づく住民監査請求に対して、要件を欠く不適法な請求であるとして却下することを決定し当該請求人に通知した起案文書であり、事実証明書が添付された住民監査請求書が添付されている。
条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした本件行政文書について検討する。
本件請求は、住民監査請求の却下通知書の起案文書等について、日付及び文書番号を特定した上でその開示を求めたものである。請求書に記載されていた日付及び文書番号により特定される文書は、異議申立人を名宛人として出された文書であった。このことから、異議申立人は、自己が受け取った特定文書の日付、文書番号を用いて行政文書の公開請求をしたものと考えられる。そうであるとすれば、本件請求は、異議申立人が本人しか知りえない情報による自己に係る情報の公開を請求したものと推認され、個人を特定しての請求にあたると考えられる。
したがって、本件行政文書の情報の全てが特定の個人を識別できる情報と考えられ、一部公開できないという実施機関の主張は是認できる。
なお、異議申立人は、異議申立の理由において、「若し仮に「本人しか知り得ない情報による自己に係る情報の公開を請求した」と仮定しても、請求対象文書の非開示部分を除いて全部開示をする必要があるのであるから、本件行政処分は、誤りである」旨主張している。しかし、上述のとおり、「本人しか知り得ない情報による自己に係る情報の公開を請求した」場合には、個人を特定した請求として当該文書の情報全てが特定の個人を識別できる情報、すなわち非公開情報にあたると考えられることから、本件行政文書について開示できる部分はなく、異議申立人の主張は認められない。
また、異議申立人は、同じく異議申立の理由において、「香川県情報公開条例に基づく開示または非開示の行政処分に際しては・・・何人により請求されたのかを問わず、本件公開条例の非開示事由に該当するか否かにより客観的に判断をする必要がある。」旨主張している。しかし、特定文書の日付及び文書番号は、本来当該文書を受け取った本人しか知り得ない情報であることから、それらを特定しての行政文書の公開請求が個人を特定しての請求にあたると考えられる点は、何人により請求がなされたとしても変わることがない。したがって、異議申立人の主張は認められない。
以上より、公開請求に係る行政文書の情報の全てが公にすることにより個人を識別できる情報に該当するため非公開とした本件処分は妥当である。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
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