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食文化
長年受け継がれて来た讃岐のお母さんの知恵、その一つが「保存食」です。
冷蔵庫が無かった時代は、家計のやりくりも含め「保存食」は頼りになる食材でした。
そこで、讃岐平野に伝わる香川の「保存食」をたずねてみましょう。
讃岐ならではの味
香川県を代表する保存食は「醬油豆」。“ソラマメ”は、かつてたいていの農家では米の裏作として栽培されていました。そのソラマメをほうろく(素焼きの土鍋)で少しずつ炒りつけ、その後はそれぞれの家で好みの味に仕上げていました。農家の行事ごとには、必ずといっていいほどつくられた「醬油豆」です。
ため池が多い香川県ならではの保存食は「ふな豆」。12月中旬になると、“池あげ”といって、池の水を出しました。そのときに網を入れて捕った“フナ”を秋に収穫した大豆と共に煮たものが「ふな豆」です。焼いたフナは、2~3日陰干しにし、水につけた後、こんぶや調味料と一緒に煮た大豆の中に入れ、とろ火で煮詰めます。臭みも消えて、骨まで柔らかくなり、おいしく仕上がります。2月頃の子持ちの寒ブナは一段とおいしくなります。
しょうゆ豆/お客ごとに、うどんと一緒に必ずと言っていいほどつくられてきた讃岐の味「しょうゆ豆」
ふな豆/フナの臭みが消え、保存性も良い「ふな豆」
冬の伝統野菜を夏に味わう
西讃では主に“ひゃっか”と呼ばれる“まんば”は、高菜として親しまれている香川の伝統野菜。冬に青々と、いくらでも葉を茂らすありがたい野菜です。油で炒め、豆腐を加えて“けんちゃん”(西讃では“雪花(せっか)”)にしたり、おみみさん(雑炊)に入れたり、おしたし(おひたし)にして食べます。
この葉を冬に乾燥しておくと、夏場にも味わうことができます。ゆでて冷水につけた葉を広げ、綱などにつり下げて乾かします。ボロボロに乾燥しすぎない程度に乾かし、缶やダンボール箱に紙を敷いて保存します。
まんば/栄養価の高い讃岐の伝統野菜
まんばの干し葉/干し葉は水で20分から30分もどして使います。
春と秋の乾燥作業
昔は、農家の大切な春先の仕事であったという“よもぎつみ”と「乾燥よもぎ」づくり。春の訪れを喜びながら、田の岸や川土手で摘む“よもぎ”。それを水洗いし、たっぷりの熱湯に重曹を入れてさっとゆで、固く絞って、むしろにひろげて乾かします。これを利用して、一年中「よもぎ餅」を味わうことができます。
ヨモギ/ため池の土手にも青々と広がるヨモギ。
よもぎ餅/色と香りがうれしいよもぎ餅。
「干しずいき」は、お産の後に食べると良いといわれ、これを煮たり、あえたり、みそ汁に入れたりしたそうです。“ずいき(芋茎)”はサトイモなどの葉柄。赤芽芋などのずいきを10月から11月ころまでに刈り取り、じくの薄皮をむき、それを6つから8つに糸などで裂き、軒先などにつるして10日間ほど干します。よく乾燥させて束にして紙に包み、びんや缶に入れて保存しました。
干しずいき/季節には産直の店頭で出会うこともあります。
昔ながらの飲みもの自然の甘さを守り続ける
琴平町の生活研究グループは、郷土料理の伝承や、地産地消のための加工食品の開発を行っています。よく作るもののひとつに甘酒があります。秋祭りや町内のイベントで販売すると、「懐かしい味」と飛ぶように売れます。
昔はどの農家でも、麹屋さんで麹菌を買って収穫した米と共に、家ごとに甘酒を作っていました。「点滴に匹敵する栄養価」と言われ、薬などが豊富にはない時代の、栄養ドリンクのような役割でした。現在は温かいのが一般的ですが、生活研究グループの聞き取り調査によると、以前は5~6月の麦刈りの合間に冷やして飲むことが多かったようです。
生活研究グループでは、大型の発酵機を使用し、15kgの米を3回発酵させて、4日でかけて甘酒を仕込みます。炊いてずっしり重くなった米を布に広げてまんべんなく麹菌を揉み込んだり、発酵が進んで固まった米をサラサラするまでほぐしたり、力も丁寧さも求められる仕事です。しんどいと時も甘酒を待っている人の顔を浮かべると、「ずっと作り続けよう」と元気が出るのだそうです。
作り手/琴平町の生活研究グループの甘酒名人。右から、会長の白川サヨ子さん、宮本節子さん、花岡十四子さん。
甘酒/製造の最後に、少しだけもち米を加えるのがおいしさの秘訣なのだそうです。
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