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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。
異議申立人は、平成15年6月25日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
実施機関は、平成15年8月8日付けで、本件請求の(1)に対応する行政文書として「「平成14年(ヨ)第104号物件撤去仮処分申立事件」に関する仮処分命令申立書、疎明資料、仮処分命令申立補正書、答弁書、審尋調書(第1回)、決定、仮処分執行申立書、仮処分調書」(以下「本件行政文書」という。)を、本件請求の(2)に対応する行政文書として「〇〇の物件撤去等に関する仮処分命令の決定について(平成14年6月24日付け起案文書)」(以下「行政文書1」という。)を、本件請求の(3)に対応する行政文書として「平成14年6月11日に起案した妨害物撤去等仮処分命令事件に関する着手金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「行政文書2」という。)、「平成14年8月1日に起案した妨害物撤去等仮処分命令事件の処理が終了したことに伴う報酬金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「行政文書3」という。)及び「平成14年6月11日に締結した妨害物撤去等仮処分命令事件に関する弁護士との契約書(1件)」(以下「行政文書4」という。)を、本件請求の(4)に対応する行政文書として「平成14年7月10日に起案した高松地方裁判所平成14年(ヨ)第104号仮処分命令申立事件の供託金及び高松地方裁判所平成14年(執ハ)第8号仮処分執行申立事件の執行官予納金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「行政文書5」という。)、「平成15年6月17日に起案した仮処分執行申立事件の執行官予納金の返還にかかる調定伺書、領収済通知書及びその添付書類(2件)」(以下「行政文書6」という。)、「県内旅行命令簿(26件)」(以下「行政文書7」という。)、「県内旅費請求書(3件)」(以下「行政文書8」という。)、「県内旅費計算書(56件)」(以下「行政文書9」という。)及び「乗車料金請求書(タクシー)(3件)、県有車の運転日誌(10件)、県有自動車使用簿(3件)、執行伺兼支出命令書(県内旅費)(3件)及び執行伺兼支出命令科目内訳書(県内旅費)(2件)」(以下「行政文書10」という。)をそれぞれ特定し、本件行政文書が条例第7条第2号、第4号、第7号に該当するとして本件処分を、行政文書1及び行政文書10について公開決定を、行政文書2ないし行政文書9の県内旅行命令簿及び県内旅費計算書のうち行政職相当級が記載されている部分及び県内旅費請求書のうち支払先金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号及び口座名義が記載されている部分が条例第7条第1号に、債権者(弁護士)の銀行口座に関する取引金融機関名、預金種目、口座番号、口座名義、金融機関コード及び支店コード並びに印影が記載された部分及び債務者(被供託者)の住所及び氏名が記載されている部分が条例第7条第2号に、それぞれ該当するとして、一部公開決定を行い、それぞれ異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成15年8月19日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
本件行政文書は、県と係争中の相手との港湾利用にかかる紛争についての文書であり、相手方の不当・不法な港湾利用に対して、県がそれを是正・排除するために行った仮処分手続きに関する文書である。
この相手方は、営業活動を行っている法人であり、この法人が不当・不法に港湾施設を使用しようとしている情報が公になれば、同法人と取引など事業活動を行おうとする者は、同法人には社会的信用がないという評価をすることは自明であり、当該非開示条項に該当する。
条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。
平成13年5月10日付けで香川県は、高松港管理事務所長が行った係留施設使用許可申請に対する不許可処分により、〇〇への砂の陸揚げを阻止され財産的及び精神的損害を被ったとして、損害賠償請求事件を提起された。
原告は、県職員による砂の陸揚げ阻止の行為は違法であること等(以下「請求原因」という。)から国家賠償法の規定に基づき、生じた損害を賠償すべき責任があると主張している。
被告(香川県)は、請求原因のうち、〇〇で違法行為の発生を防止するために監視に当たっていたことは認めるが、その余の事実は争い、被告の職員が、被告の管理する高松港において違法行為を防止するための任務に就くことは、正当な職務行為であると主張している。
この訴訟の第一審は、県が全面勝訴したが、現在、原告が控訴し、引続き係争中である。
この控訴審において、原告は、平成13年3月13日から同月22日にかけての使用許可にかかる事項についての主張(請求原因)だけでなく、請求原因に関連した事案、たとえば、原告が申請したこれ以外の他の使用許可申請についても不当に不許可になったとか、港湾管理の状況を事実誤認して提示したり、自己に都合のよい一方的な主張を繰り返している。
本件請求文書は、係争中の原告と県との港湾利用に関する争いについての文書であって、これらが当該訴訟の原告の訴訟資料となるおそれがあり、さらにこれら資料に基づいて一方的な主張が繰り返され、訴訟の遅延、県の誹謗中傷等が増幅され、原告と対等な立場で遂行する必要がある訴訟当事者として認められるべき県の地位を不当に害するおそれがあると認められるため、当該非開示条項に該当する。
条例第7条第7号では、法令等の定めるところ又は実施機関が法律上従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示により、公にすることができないとされている情報を非公開情報と定めている。
この条項は、「法令等の定めるところにより公にすることができないとされている情報」は、公開できないと規定され、「明文の規定で公開が禁じられている情報」または「法令等の趣旨、目的から見て公開することができないと明らかに判断され得る情報」が該当すると解されている。
一方、民事保全法(平成元年法律第91号)では第5条で「保全命令に関する手続き又は保全執行に関し裁判所が行う手続きについて、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その他正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りでない。」と規定されており、利害関係者以外の文書の閲覧等を認めていない。
他の訴訟等に関する法律(民事訴訟法、刑事訴訟法(条例28条1項により条例の適用はない)、民事執行法等)においても、民事保全法同様に、訴訟記録等の閲覧制度を設けており、それぞれの規定の中で、請求できる者の範囲、時期などを規定している。これは、誰に対しても、どんな記録もすべて公にできるというのではなく、それぞれの法の制度・目的等にあわせて訴訟記録を公にできる範囲を限定していると考えられ、その旨が明確に規定されている。
民事保全法でも、上記のとおり、情報を公にできる範囲を、非常に限定して明確に規定しており、一般的には公にできないという明文の規定となっている。
したがって、本件行政文書は、法律により「明文の規定で公開が禁じられている情報」に該当し、当該非開示条項に該当する。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
本件行政文書は、不当・不法な港湾利用に対して、県がそれを是正・排除するために行った仮処分手続きに関する文書である。
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
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