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答申
小豆総合事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は妥当である。
審査請求人は、平成15年9月11日付けで、香川県情報公開条例(平成12年条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、「〇〇に建設予定の自治会館に関して、香川県公告第884号指定、村内地区急傾斜地崩壊危険区域の敷地造成許可に係る一切の書類」について公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
処分庁は、本件請求に対応する行政文書として「急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可申請について(平成15年9月1日付け起案文書、15小総第31533号)」(以下「本件行政文書」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」に掲げる部分が、「公開しない理由」に該当するとして、平成15年9月25日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。
審査請求人は、本件処分を不服として、香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により、平成15年10月2日付けで審査請求を行った。
「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。
審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
諮問庁による説明の概要は、次のとおりである。
条例第7条第1号においては、個人に関する情報で、特定の個人が識別され得るものについては、公開しないことができると規定されている。これは、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人が識別され得るような情報は、原則として非公開とすることを定めたものであり、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であるかどうか不明確である場合も含めて、個人に関する情報は、非公開を原則としている。以上の観点及び文書の性格から判断すれば、同意書及び土地使用同意書については、所有者、住所及び氏名が記載されており、明らかに特定の個人が識別され、また特定の個人が識別され得る思想、考え方が記載されており、公にすることにより、権利利益を害するおそれがあるため、本号の非公開理由に該当する。岩質判定者の「氏名、印影」については、明らかに特定の個人が識別されるため、本号の非公開理由に該当する。
条例第7条第2号においては、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報で、公開することにより、当該法人等又は当該個人に不利益を与えるおそれがあると認められるものについては、公開しないことができると規定されている。
申請者の「印影」については、法人等が公開の範囲を限定している経理等の重要な内部管理に属する情報であって、また同意書及び土地利用同意書については、法人等の意思決定等に関する内部管理に属する情報が記載されている。これを公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、本号の非公開理由に該当する。
条例第7条第4号においては、県の機関、国の機関又は県以外の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報で、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては、公開しないことができると規定されている。
同意書及び土地使用同意書については、関係者の意思決定等に関する情報が記載されており、公にすることにより、関係者の信頼を失い、事業者が協力を得られなくなるなど、今後の同種の事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあり、本号の非公開理由に該当する。
条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、実施機関の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
また、非公開情報の該当性の判断に当たっては、処分庁が主張する非公開理由のうちいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。
急傾斜地崩壊危険区域内で制限行為を行おうとする者は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第7条第1項の規定により、都道府県知事の許可を受けなければならないこととされている。
本件行政文書は、この規定に基づく急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律施行細則(昭和45年規則第2号。以下「法律施行細則」という。)第3条の規定により提出された急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可申請書(以下「当該申請書」という。)に対する急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可(以下「当該許可」という。)の起案文書である。
本件行政文書は、当該許可書案及びその添付書類である調査意見書並びに当該申請書及びその添付書類である位置図、計画説明書、関係市町長の意見書、地縁団体台帳、土地の登記簿、同意書及び土地使用同意書、安定計算書、実測平面図等並びに岩質判定書から構成されている。
条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものである。しかし、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確でなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得る。そこで、本条例はプライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとし、そのうえで一般的に非公開とする必要のないものを例外的に本号ただし書において公開することとしたものと解される。
また、条例第7条第2号は、法人等又は個人事業者の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報については非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
以上の基本的な考え方に基づき、処分庁が非公開とした部分について検討する。
条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
公開しない部分 | 公開しない理由 |
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申請者の「印影」 | 法人等の内部管理に属する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため(条例第7条第2号該当) |
同意書及び土地使用同意書 |
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岩質判定者の「氏名、印影」 | 特定の個人が識別され得る個人に関する情報であるため(条例第7条第1号該当) |
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