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答申
香川県知事(以下「実施機関」という。)が一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、「総会議事録 乙漁業協同組合(平成9年1月18日開催)のうち、2ページ目5行目5字目から15行目まで」については、公開すべきである。
異議申立人は、平成16年4月13日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「新条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
請求内容の(1)~(3)については、実施機関は、公開請求のあった行政文書として次の行政文書を特定し、これらについて、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとともに、請求内容の(2)のうち「組合員名の分かる資料」については不存在であるとして、平成16年5月26日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。
また、請求内容の(4)については、実施機関は、公開請求のあった行政文書として「水産政策の概要」を特定し、これが新条例第28条第4項に該当するとともに、登録台帳については不存在であるとして、平成16年5月26日付けで非公開決定を行い、異議申立人に通知した。
異議申立人は、本件処分を不服として、平成16年6月7日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。
「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。
異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
特定した行政文書はいずれも定款変更申請書の添付書類として、定款変更の議決を確認するためのもので、総会の議事に関する謄本又は抄本であり、この公開に際しては、非公開部分を含む一部公開としている。
議事録1及び2は、甲漁業協同組合(解散組合)の総会議事録であり、総会において定款変更案件が可決していることを確認するために定款変更申請書に添付しているものである。非公開部分は、代表理事以外の個人の氏名及び個人の印影のみについてであり、香川県公文書公開条例(昭和61年香川県条例第30号。以下「旧条例」という。)第6条第1号に規定する「個人に関する情報」に該当する。
議事録3~10は、乙漁業協同組合の総会議事録であり、先の議事録1及び2と同じく、定款変更申請書の添付書類である。非公開部分は、代表理事以外の個人の氏名、個人及び法人の印影、理事監事の報酬額、個人が限定される発言内容等が具体的に記載されており、これは旧条例第6条第1号に規定する「個人に関する情報」に該当する。また、その他議案の可否の別、組合員資格審査委員に関する情報、借入金最高限度額、余裕金の預け先金融機関名等についても、具体的な記載がなされており、公開することにより個人及び当該漁業協同組合の権利利益を害するとともに組合運営に支障をきたす恐れがあり、旧条例第6条第2号に規定する「法人その他の団体に関する情報」に該当する。
新条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、新条例の施行日である平成12年10月1日前に作成し、又は取得した旧条例第2条第1項に規定する公文書に該当する行政文書であって平成18年4月1日前の公開請求の対象となったものについては、新条例附則第3項の規定により、旧条例第6条各号の解釈、運用が適正であったか否かにより非公開情報の該当性について判断するものである。
新条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。また、旧条例第6条第1号も基本的な考え方は同様と考えられる。
新条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。また、旧条例第6条第2号も基本的な考え方は同様と解される。
以上の基本的な考えに基づき、別表2のとおり判断する。
請求内容の(2)のうち、「役員名」、「役員数」及び「組合員数」については、議事録1及び2にその記載があるが、「組合員名の分かる資料」については、実施機関は、本件処分に係る一部公開決定書の備考欄において保有していない旨を記載し、非公開としている。
そこで「組合員名の分かる資料」の必要性について実施機関に説明を求めたところ、行政庁は、組合の設立や解散、定款変更等申請の認可等を、組合員個人にではなく組合という団体に対して行うのであって、組合の構成員である組合員個人の氏名等の情報についてまで保有しておく必要性はないとのことであり、説明として不自然、不合理なものでなく、また、異議申立人においても当該資料が存在するとの具体的な主張をしていないことから、実施機関の主張は是認できる。
新条例及び旧条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。
よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)
公開しない部分 | 公開しない理由 |
---|---|
議事録1
個人の氏名(公開している部分を除く。) 印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録2 個人の氏名(公開している部分を除く。) 理事の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録3
個人の氏名(公表されている氏名は除く。) 議長及び理事職務執行者の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録3
|
(旧条例第6条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録4 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録4
|
(旧条例第6条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録5 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録5
|
(旧条例第6条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録6 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録6
|
(旧条例第6条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録7 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(旧条例第6条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録7
|
(旧条例第6条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録8 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(新条例第7条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録8
|
(新条例第7条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録9 個人の氏名(公表されている氏名及び公務員の氏名は除く。) 議長及び理事の印影 |
(新条例第7条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録9
|
(新条例第7条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
議事録10
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(新条例第7条第1号該当) 特定の個人が識別される個人の情報に該当するため |
議事録10
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(新条例第7条第2号該当) 当該法人の収入・支出・経理・資金調達・事業等に係る内部管理に関する情報であり、公にすることにより、当該法人等の自由な事業活動や正当な利益を害するおそれがあるため |
公開しない部分 | 審査会の判断 |
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【議事録1~10】 個人の氏名(公開されている部分及び公務員の氏名は除く。) |
実施機関が非公開とした個人の氏名は、役員又は組合員等の氏名であり、個人に関する情報で特定の個人を識別することができるものであり、旧条例第6条第1号本文又は新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。 |
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いずれも個人の私印であり、個人に関する情報で特定の個人が識別できるものであることから、旧条例第6条第1号本文又は新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。 |
【議事録10】 2ページ目17行目の個人の心身の状況について記載している部分 |
個人に関する情報で特定の個人が識別できるものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものであることから、新条例第7条第1号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。 |
【議事録3~10】 乙漁業協同組合代表理事組合長の印影 |
印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がこのような管理などをしていないと認められる場合等には、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。 本件印影は、定款変更申請書等の添付書類として総会の議事録を実施機関に提出する際に原本であることの証明をするために押印されたものであり、このような文書の提出の相手方は実施機関等に限定されていると考えられる。 すなわち、本件印影はいずれも当該法人等が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人等においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人等の各種書類の偽造等に悪用されるおそれなどが考えられる。 よって、本件印影は、当該法人等の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあり、また、不利益を与えることが明らかであると認められるので、旧条例第6条第2号本文又は新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。 |
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審査会で見分したところ、当該非公開部分は全て、総会議事録の案件名であり、当該案件名からは、具体的な内容を推測することが可能であり、経営上問題があるのではないか等の憶測を生む可能性があるものと考えられる。 よって、これらの情報を当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあり、また、不利益を与えることが明らかであると認められるので、旧条例第6条第2号本文又は新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。 |
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審査会で見分したところ、当該非公開部分は全て、各議案の賛否状況及び可決、否決の別であり、これらの情報は当該法人にとって、今後の運営方針の決定に係る情報であって、事業上の秘密に属する情報であると言える。 よって、これらの情報を当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあり、また、不利益を与えることが明らかであると認められるので、旧条例第6条第2号本文又は新条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。 |
【議事録3】2ページ目5行目5字目から15行目まで | 審査会で見分したところ、当該非公開部分は、議事録3の第1号議案採決に当たっての経緯説明及び法的手続についての説明が記載されていることが確認された。 この経緯説明の内容については、本件処分時には公にされていた情報であると認められ、その場合必要な法的手続についても明らかであることから、当該部分を公にしたとしても、当該法人に不利益を与えるおそれがあるとまでは考えられない。 よって、旧条例第6条第2号本文に該当せず、公開することが妥当であると判断される。 |
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審査会で見分したところ、当該非公開部分は、議事における議論の具体的内容であり、当該法人の運営方針の決定に係る情報であることが認められることから、これらの情報を当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人に不利益を与えるおそれがあると認められるので、旧条例第6条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。 |
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これらの情報は、当該法人の事業における経理・資金調達・人事等に関する内部管理情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来当該組合の事業活動とのかかわりの中で自主的に決定すべきことであり、当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあり、また、不利益を与えることが明らかであると認められるので、旧条例第6条第2号本文又は新条例第7条第2号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。 |
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