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前田千尋 三豊市立西香川病院
リハビリや代替手段の工夫を通じ「自分らしい生活」が送れるよう支援します。変化に手応えを感じていただけるのが喜びです。
作業療法士とは
身体や精神に障害のある人に対し、手芸や工作などの作業を通じて上肢・手指機能の回復・改善を支援するほか、食事やトイレなどの生活活動の改善を支援する。就労・就学の準備など社会生活適応能力を高めるための支援も行っている。
私の家は4世帯9人の大家族で、小さい頃は祖父母によく面倒を見てもらっていました。そのためご高齢の方と接することが好きという思いはずっと抱いていたのですが、将来の仕事として意識しはじめたのは中学生の頃です。職場体験で訪問した特別養護老人ホームで、入所者の女性から「話を聞いてくれてありがとう」と喜ばれたことをきっかけに、福祉・介護の仕事に興味を持つようになりました。
高校生の時にリハビリの仕事に関わりたいと思うようになり、革細工や陶芸などの一見リハビリとは関係がないように思える活動を治療に取り入れる作業療法士に面白さを感じて大学の保健学科に進学しました。
リハビリテーション病棟では、脳血管疾患や肺炎、骨折などの「急性期」治療を行った後で症状が安定した「回復期」の患者さんのリハビリを行っており、作業療法士は医師、理学療法士、言語聴覚士、看護師、ソーシャルワーカーなどと連携して、患者さんが自宅や社会に戻るために必要な訓練を行います。
患者さんやご家族が自分らしい生活を取り戻すためには、それぞれに最適な治療を見いだしていく必要があります。計算課題やパズルを使って集中力や注意力を鍛えたり、積み木を使って手や指の機能を回復させたりする訓練はよく知られていますが、着替えやトイレなどの日常生活動作の訓練、ほかにも家屋調査や改修のアドバイスなどの環境調整を行ったり、使いやすい器具を紹介したりすることで退院後の生活をより過ごしやすいものにすることも作業療法士の仕事の一つです。
患者さんとの話や自宅の状況などから、退院後にどのような動作を行うことになるのかを想定したより具体的な訓練も行っています。
たとえば自宅の浴槽に合わせた段差をつくり、入浴に必要な動きを考えて必要なリハビリを行うこともありますし、退院前に外出や外泊を行い、不自由に感じたことや困ったことをうかがってリハビリのプログラムを組むこともあります。病院の中には一般的な部屋をイメージした家具も置いてあり、患者さんが希望すれば料理の練習もできます。症状だけでなく患者さんが生活する住宅の環境によって必要な訓練は変わってきますから、リハビリのプログラムは患者さんの数だけある、と言えるでしょう。
私たちの仕事に決められたことの繰り返しはありません。患者さん一人ひとりと向き合って治療を考えることは難しいですが、奥が深く、作業療法士ならではのやりがいがあると思います。
また、リハビリで一番大切なのは患者さん自身のやる気です。障害によって、患者さんは身体だけでなく心にもダメージを受けています。リハビリに消極的な患者さんに対して、いかにやる気を引き出していけるか、前向きな気持ちになれるようサポートできるかをいつも考えています。患者さんを不安にさせないよう、常に安定した存在であり続けることが目標です。
根気が必要なリハビリを続けるだけに、患者さんにいい変化が見られると喜びは大きくなります。患者さんの中には退院した後も交流を続けてくださる方がいて、外来で通院されたときに元気な姿を見せてくださることを私たちも楽しみにしています。
作業療法士は、たくさんの方と出会い深く関わっていく仕事なのでやりがいも大きく、多くのことを学ぶことができます。福祉に興味があり、人と関わることが好きな方は、ぜひ作業療法士の道を考えてみてください。
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