ここから本文です。
木村直美 香川県立丸亀病院
悩みや希望を聞いて、その方の生活がより良いものとなるよう支援を一緒に考えます。気持ちに寄り添うことを大切にしています。
精神保健福祉士とは
医療機関や社会福祉施設などで精神に障害のある人に対し、日常生活への適応や社会参加に必要な支援を行う。住まいや就労の場など生活に関する相談に応じるほか、周囲の社会環境に働きかける役割も担っている。
父が精神科病院で働いていたこともあり、高校生の時には「将来は障害のある方とかかわる仕事につきたい」と考えるようになりました。最初は養護学校の先生をめざして大学に進学しましたが、3年生で行われる実習の時に精神科の患者さんから「頑張って資格を取ってね」と励ましていただいたことが精神保健福祉士の道に進むきっかけになったと思います。
精神科は長期入院になるケースもあり、長年病院で過ごす方もいらっしゃいます。精神保健福祉士になって患者さんと関わることで、退院に向けた支援ができるのではないか?と考え、病院への就職を志望しました。
精神科を受診する患者さんの年齢層や職業は幅広く、20代から70代くらいまでのさまざまな方が「眠れない」「食べられない」などの悩みを抱えています。
精神保健福祉士は主治医が診察する前に、初めて病院を訪れた患者さんから来院理由などをうかがい診断に必要な情報を整理するほか、患者さんが生活しやすい環境を整えられるように、利用できる「社会資源」を紹介しています。社会資源には、働く場としての作業所や通所施設、日常生活をサポートする買い物や家事の手伝いなど、さまざまな内容があります。希望に添った適切な支援をするためには幅広い知識が必要なので、法律の改正や他の機関の業務に関する研修にはできるだけ出席するよう心がけています。病院の中で活動していると思われるかもしれませんが、訪問看護やデイケアにも精神保健福祉士は参加しており、外に出ることもよくあるんですよ。
精神科を訪れる皆さんが通院することになるわけではなく、中には「話を聞いてもらえるだけで気持ちが楽になった」という方もいらっしゃいます。
来院される方は心の優しい人が多く、細かいことでも悩んでしまいがちです。「大丈夫ですよ、気にしなくていいんですよ」とお伝えすることも十分な支えになりますし、自分がかかわることで患者さんの生活が維持できたり、新しいことに一歩踏み出せたりすると、来院していただいたかいがあった、と嬉しくなります。
お話をうかがう時大切にしているのは、こちらから積極的におたずねするのではなく、患者さんの気持ちを優先させる、ということです。関係づくりができないと本音を聞くのは難しいため、まずは世間話のようなところから始めて、少しずつお話をしていただけるように気をつけています。
ただし、気持ちを優先させるというのは、願いをすべて聞き入れるということではありません。「社会で働きたい」と願っていても「まだ早い」と主治医が判断することもありますし、「社会での生活が不安でまだ退院したくない」と思っていても退院が決まることもあります。「どのようにお伝えすれば受け入れていただけるのか?」という伝え方は悩みが尽きないポイントで、私も先輩に話を聞いてもらい、アドバイスをもらっています。
精神保健福祉士は、医療現場から地域での生活がしやすくなるように患者さんを支援しています。病院以外の機関との連携は欠かせませんし、患者さんとのコミュニケーションも大切ですから、人とかかわることに興味がある方は向いている仕事なのではないでしょうか。
私が大切にしていることは「気持ち」です。学生の時に感じたことを、仕事についても忘れずにいてもらえたら…と思います。
このページに関するお問い合わせ