ここから本文です。
(略称)
以下、申請人ら437名及び参加人ら111名を併せて「申請人ら」、被申請人香川県を「香川県」、別紙物件目録記載第1の土地を「本件処分地」、香川県豊島廃棄物等処理技術検討委員会(第1次ないし第3次。追加分を含む。)を「技術検討委員会」、利害関係人家浦自治会、同唐櫃自治会及び同甲生自治会を「豊島3自治会」という。
前文
1 香川県小豆郡土庄町に属する豊島は、瀬戸内海国立公園内に散在する小島の一つである。この豊島に、産業廃棄物処理業を営む豊島総合観光開発株式会社は、昭和50年代後半から平成2年にかけて、大量の産業廃棄物を搬入し、本件処分地に不法投棄を続けた。
豊島の住民は、平成5年11月、上記業者とこれを指導監督する立場にあった香川県、産業廃棄物の処理を委託した排出事業者らを相手方として公害調停の申立てをした。
2 当委員会は、調停の方途を探るため本件処分地について大規模な調査を実施した。その結果、本件処分地に投棄された廃棄物の量は、汚染土壌を含め約49.5万立方メートル、56万トンに達すること、その中には、重金属やダイオキシンを含む有機塩素系化合物等の有害物質が相当量含まれ、これによる影響は地下水にまで及んでいることが判明した。このような本件処分地の実態を踏まえ、調停を進めた結果、平成9年7月申請人らと香川県との間に中間合意が成立し、香川県は、本件処分地の産業廃棄物等について、溶融等による中間処理を施すことによって搬入前の状態に戻すこと、中間処理のための施設の整備等について、香川県に設置される技術検討委員会に調査検討を委嘱することなどが確認された。
3 技術検討委員会は、平成9年8月から同12年2月にかけて調査検討を行い、その成果を第1次ないし第3次の報告書にまとめた。その中で同委員会は、本件処分地の産業廃棄物等の処理は焼却・溶融方式によるのが適切であり、この方式による処理を、豊島の隣にある直島に建設する処理施設において、二次公害を発生させることなく実施することができる旨の見解を表明した。この焼却・溶融方式は、処理の結果生成されるスラグ、飛灰などの副成物を最終処分することなく、これを再生利用しようとするものであり、我が国が目指すべき循環型社会の21世紀に向けた展望を開くものといえる。
4 本調停において、香川県は、この事件の今日に至るまでの不幸な道程に鑑み、1項のとおり謝罪の意を表し、申請人らはこれを諒としたうえ、双方は、技術検討委員会が要請する「共創」の考えに基づき、直島において、本件処分地の産業廃棄物等を上記3の方式によって処理し、豊島を元の姿に戻すことを確認して、下記調停条項のとおり合意した。これにより本件調停は成立した。
5 当委員会は、この調停条項に定めるところが迅速かつ誠実に実行され、その結果、豊島が瀬戸内海国立公園という美しい自然の中でこれに相応しい姿を現すことを切望する。
なお、10項の解決金は、申請人らと排出事業者らとの間に成立した調停に基づき、排出事業者らが産業廃棄物等の対策費用をも含む趣旨で出捐したものである。このように、廃棄物の不法投棄にかかる事件において、その排出事業者が紛争の解決のため負担に応じた事例はなく、この調停は、この点において先例を開くものであったことを付言する。
調停条項
1(香川県の謝罪)
香川県は、廃棄物の認定を誤り、豊島総合観光開発株式会社に対する適切な指導監督を怠った結果、本件処分地について土壌汚染、水質汚濁等深刻な事態を招来し、申請人らを含む豊島住民に長期にわたり不安と苦痛を与えたことを認め、申請人らに対し、心から謝罪の意を表する。
2(基本原則)
香川県は、本調停条項に定める事業を実施するにあたっては、技術検討委員会の検討結果に従う。
3(廃棄物等の搬出等)
4(豊島内施設)
香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、速やかに、次に定める措置を講じる(以下、これにより設置される施設を「豊島内施設」という。)。
5(焼却・溶融処理)
ア 直島町が処理すべき一般廃棄物
イ 次項により設置する豊島廃棄物処理協議会において、本件廃棄物等と併せて処理することに合意が成立した物
6(申請人らと香川県との協力、豊島廃棄物処理協議会)
7(専門家の関与)
香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、別に定めるところにより、関連分野の知見を有する専門家の指導・助言等のもとに本件事業を実施する。
8(本件処分地の土地使用関係)
9(豊島内施設の撤去及び土地の引渡し)
10(排出事業者の解決金)
11(請求の放棄)
申請人らは、香川県に対する損害賠償請求を放棄する。
12(本件紛争の終結等)
13(費用負担)
本件調停手続に要した費用は、各自の負担とする。
物件目録 第1(省略)
物件目録 第2(省略)
このページに関するお問い合わせ