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高松市仏生山町の平池(へいけ)のほとりには、一人の少女の像が寂しげにたたずんでいます。
その昔、まわりの田に大切な水を配っていた平池を、もっと大きくする工事をすることになりました。
何年も何年もかかって堤を築くのですが、池が大きいせいでしょうか、築いても築いても堤は押し流されてしまいます。
そんなある日、「あすの朝はやく、ちきり(はたおりの道具)をもった娘が通る。その娘をとらえて人柱に立てれば、うまく治まるであろう。」というお告げがありました。
そして翌朝、東の空が明るくなった頃、ひとりの娘が通りかかりました。人夫達が娘を取り囲んでなにをもっているのかとたずねれば、娘は素直に“ちきり”ですと答えました。
そのひと言で、命ごいもむなしく、娘は人柱として堤に埋められてしまいました。
それからは堤が切れることもなく、立派な池ができあがり、どんな大雨が降っても堤防が崩れることはありませんでした。
けれども堤の岩の間から流れ出る水の音が、「いわざらこざら」と聞こえてくるのです。それは、「いわざらましこざらまし」云わなければよかった、こなければよかったと、娘がすすりなくような悲しげな音だったそうです。
今は平池を見おろす山の上に、乙女の霊をまつる神社があり、人々にこの話を伝えるための「乙女の像」が立っています。
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