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むかしむかし、あるところに源左衛門、源三郎という親孝行で信心深い兄弟が住んでいました。
ある年の春から夏にかけてのことです。百日あまりもの長い間、雨が降らず日照りが続き、作物は枯れ、村人達は、たいそう困っておりました。
そこで、その兄弟は、みなを見るにしのびず、話し合って山の峰にこもり、龍王の神に、七日間雨乞いの祈願をしました。
そして最後の夜、なんと美しい女神様があらわれて「かの所を掘れば願いは、かなうであろう」と夢のお告げがあったのです。
兄弟は不思議なことだと思いながら、さっそくその場所を掘ると、きれいな水がこんこんと湧き出してきました。
兄弟の喜びはたいへんなもので、夜の明けるころまで、一生懸命に拝んでいますと、その中から五色の光がまばゆく輝いたかと思う間に、小さな黒い鰻が現れて岩の上に登りました。
兄弟はなおも一心に「どうかみなが助かるよう、大雨を降らせてくだされ」と祈り続けました。すると小さい黒い鰻がもとのところに入ったと見る間に、一天にわかにかき曇り、たちまち強い雨が降りだしてきました。
雨は田畑をじゅうぶんに潤し、作物はよみがえって、みなは助かりました。
そこで兄弟は、鰻淵の岩の上に、石のほこらを立てて、竜神様をお祭りしたのです。それが「龍王社」で、人々は「おなぎさん」と呼んで詣でる者は後を絶たなかったということです。
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