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香川県は四国の東北部に位置し、南高北低の地形を呈しており、南部に連なる標高約700〜1,000mの讃岐山脈から丘陵地帯を経て、北部に広がる讃岐平野へ向かって緩やかに高度を減じています。このような地勢上に発達した河川は、概ね讃岐山脈に源を発し瀬戸内海に注いでおり、流路延長は短く河床勾配は1/200以上の急流河川が多く、比較的緩やかな河川でも1/400〜1/500にとどまっています。
香川県は中央構造線北側の領家帯に位置し、領家花崗岩、白亜紀の堆積岩類(和泉層群)が基盤岩となっているほか、各地にパッチ状に分布する変成岩類や火山性岩類(讃岐層群)、小地域に分布する第三紀層からなっています。讃岐山脈は、和泉層群(主として砂岩と頁岩の互層)で構成され、その他はほとんど花崗岩類からなっており、和泉層群は特に頁岩の風化が進み、また花崗岩類も相当の深さまでマサ状を呈しているところが多く、かなり風化が進んでいます。このため、香川県の地質は総じて雨に脆く、ひとたび大雨に見舞われると大規模な土砂災害が発生する危険性があります。
香川県の気候は、瀬戸内式気候に分類され、温暖で日照時間が長く、降水量は、季節風の吹く冬期には北の中国山地に、また夏期には南の四国山地にさえぎられるため少なく、年間の降水量は平年値で約1,100mmであり、全国平均の約2/3程度です。しかし、梅雨期と台風期には集中的な降雨が見られ、飲料水の確保や農作物にとっては恵みの雨となっている反面、土石流、がけ崩れ等の原因にもなっています。
香川県で発生すると考えられる代表的な土砂災害は以下の3種類です。
土石流は、大雨や長雨によって山の斜面や川底の土や石が川の水とともに一気に流れ出すもので、その衝撃力はすさまじいものがあります。土石流が発生する前には、「山鳴り」といって山全体がうなるような音を出したり、川の流れに濁りや流木が混じったり、雨が降り続いているのに川の水が減っていたりすることがあります。
図1:土石流のようす
図2:川の水がにごり、水といっしょに倒れた木が流れてくる
(資料提供;NPO法人土砂災害防止広報センター)
地すべりは、地面が大きな固まりのままゆっくりと下の方へ動き出すもので、普段は1日に数mmの移動ですが、地面の中ですべりを起こしている部分が長い間にたまった力に耐えきれなくなったときや、大雨や地震などをきっかけに一気に大きく滑り落ちることがあります。地すべりは広い範囲に影響するため被害が大きくなりやすく、移動した土砂が川をせき止めることにより土石流を引き起こす原因になることもあります。地すべりが発生する前には、地面がひび割れたり、一部分が陥没または隆起したり、井戸の水が濁ったり、斜面から水が噴き出したりすることがあります。
図1:地すべりのようす
図2:地面がひびわれ湧水が出る
(資料提供;NPO法人土砂災害防止広報センター)
がけ崩れは、急な斜面が大雨や地震などにより崩れるもので、一気に土砂が崩れ落ちてくるため、発生した場合は逃げることが非常に困難です。がけ崩れが発生する前には、がけからパラパラと小石が落ちてきたり、がけに割れ目ができたり、がけから水が湧き出したりすることがあります。
図1:がけ崩れのようす
図2:がけから小石がパラパラ落ちてくる
(資料提供;NPO法人土砂災害防止広報センター)
昭和49年7月6日夜半、小豆島一帯を襲った集中豪雨は、オリーブと寒霞渓で知られる瀬戸内海観光の島を、一夜のうちに悲劇の孤島に変えました。
特に、小豆島東海岸の内海町橘地区、福田地区、岩ヶ谷地区(写真は上空より撮影)等では死者29名、重軽傷者21名、家屋の全半壊合わせて249棟という大惨事に見舞われました。
一方、東讃地区においても、記録的な集中豪雨に見舞われ、多数の家屋が浸水する等、本県災害史上未曾有の大災害を被りました。
昭和51年9月台風17号による集中豪雨は、県下全域に猛威を振るいました。
特に小豆島地区、東讃地区においては、わずか6日間で1年分という異常降雨をもたらし、随所で山腹崩壊による土石流やがけ崩れが起こり、家屋が押し潰され、人命が奪われるという大惨事となりました。
なかでも、四方指観測所では9月8日12時より9月13日15時までに、1,400mmという過去の記録を大幅に塗り替える豪雨となりました。
この集中豪雨によって、池田町谷尻地区(写真は上空より撮影)で24名、さぬき市津田町北山地区で8名の死者を出すなど、県下各地で合わせて死者50名にのぼる記録的な大災害を被りました。
16日夜から17日未明にかけて県下を襲った「秋台風19号」は、高松市と詫間町(写真は中尾瀬川の様子)で合わせて3名が死亡するなど、県下で13名の死傷者を出しました。
8月17日から18日にかけて、台風15号の北上に伴い暖かく湿った空気が西日本に流れ込み、九州、四国地方を中心に大雨を降らせました。香川県においても大気の状態が非常に不安定となり、西讃、中讃地区で断続的に大雨となりました。この大雨により西讃(写真は大野原町前田川の様子)、中讃地区では土石流などの土砂災害が多数発生し、死者5名の他、全半壊、浸水などの家屋被害が発生しました。
9月29日の朝、鹿児島県に上陸した台風21号は、四国を通過し、近畿、北陸、東北と日本を縦断しながら各地に被害をもたらしました。県内では28日の夜になって雨が降り始め、29日の13時頃に台風本体とは別の雨雲により、東讃、小豆地区で50mm/h程の豪雨を観測しました。その後台風の本体の雨雲がかかり始め、19時前後には西讃地区(写真は大野原町萩原地区の様子)を中心に60mm/hを超す豪雨となりました。この大雨では県内各地で土石流などの土砂災害が多数発生し、公共施設、家屋、農地等に甚大な被害が発生しましたが、死者、負傷者等の人的被害はありませんでした。
10月20日13時頃、強い勢力を保ったまま高知県に上陸した台風23号は、近畿、中部、関東と進み、各地に甚大な被害をもたらしました。県内では19日から台風の接近に伴い活発化した秋雨前線による雨が降り始め、一旦は小康状態になったものの、20日の7時頃から台風本体の雨雲により再び降り始め、夕方にかけて豪雨となりました。特に東讃地区(写真はさぬき市通谷川の様子)では125mm/hの猛烈な雨を観測し、過去数年で最も土砂災害の危険性が高い状態となりました。この大雨により県内各地で土石流などの土砂災害をはじめ、河川の氾濫などによる被害が多数発生し、死者11名、全半壊家屋405棟など、昭和51年災害以来の大災害となりました。
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