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「ナラ枯れ」(ブナ科樹木萎凋病)とは、ナラ類やシイ・カシ類の樹木を枯らす病原菌(ナラ菌(学名:Raffaelea quercivora))と、この病原菌を媒介する昆虫、カシノナガキクイムシ(以下、「カシナガ」という。)による樹木の伝染病である。カシナガは、森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)で法定害虫に指定されており、県及び市町はカシナガを駆除し、そのまん延を防止するため、連携して防除を行うことが必要である。
本方針は、それぞれの防除実施主体が「ナラ枯れ」に対する効果的、効率的な防除対策を講じるための基本的な考え方を定めるものとする。
本県に広がる広葉樹林は、放置された旧薪炭林及び松くい虫被害の跡地に成立したクヌギ・コナラ等を主体とした落葉広葉樹林等の二次林で構成されているところが多い。現在、合計面積は約5万ヘクタールと本県の民有林面積約7万9千ヘクタールの約6割となっており、その※1齢級構成は7齢級以上の森林が面積にして9割以上と高齢級化が著しい。
「ナラ枯れ」は、クヌギやコナラ等を主体とした落葉広葉樹の二次林、特に高齢級化した大径木ほど被害を受けやすいが、※2被害木が全て※3枯死木となるのではなく、樹種によってはウバメガシのように枯死しにくい場合もある。また、「ナラ枯れ」は、毎年、被害地域を外周に拡大させるとともに、未被害地にも飛び火的な被害を発生させることが特徴であることから、本県の森林資源の現状から判断すると、被害の拡大を防止することは難しい。
しかしながら、「ナラ枯れ」を放置した場合、急速な被害の拡大が、森林の持つ多面的機能の確保に影響が及ぶとともに、危険木となって、枯れ枝の落下、倒木による人的被害や住宅や道路・電線等のライフラインへの被害(二次的被害)が発生するおそれがあることから、被害状況に応じた適切な防除対策を行うことが必要である。
このため、本方針の防除対策の目的を次のとおり定めるものとする。
県内の森林を「被害地」、「未被害地」、「保全する※4コナラ・カシ等の森林等」の3つに区分して防除対策を実施し、「ナラ枯れ」を効率的・効果的に抑制することにより、「ナラ枯れ」被害の急速な拡大を防止するとともに、森林の持つ多面的機能の確保に努める。
「ナラ枯れ」による二次的被害の発生を防止し、県民生活の安心安全を確保する。
「被害地」では、「未被害地域」との境界周辺(被害先端地域)において、被害の拡大を防止するため、優先的に枯死木の駆除を実施する。被害木のうち、※5穿入生存木については、二次的被害の原因とならない限り、原則として駆除は行わないが、樹液の流出量が少なく、大量の木くずを出している場合は、翌年の感染源とならないように駆除を行う。
また、通常、「ナラ枯れ」被害は発生から4~5年で被害がピークに達し、その後、被害が収束していくことが知られているが、被害地においては、収束するまで監視を行い、防除を継続する。
なお、長期的に見れば、未被害木や穿入生存木が、その後の生長により被害を受けやすくなる可能性があるので、被害が目立たなくなってからも状況確認を継続するものとする。
「未被害地」では、「被害地」の被害先端地域に近接した地域での監視を重点的に行い、被害が発生した場合には、「被害地」に準じた駆除を実施する。また、飛び火的な被害が発生した場合には、枯死木及び周辺の穿入生存木も含め、集中的に防除を行う。
「保全するコナラ・カシ等の森林等」とは、「ナラ枯れ」の被害を受けることにより、次のような状況が危惧される森林又は樹林・樹木をいい、県と市町が協議の上、選定するものとする。
また、「保全するコナラ・カシ等の森林等」では、簡易トラップ等を用いた、被害拡大期間における定期的な監視、被害の予防、駆除に努めるものとし、可能な限りカシナガの生息密度を下げるため、次の防除対策を実施する。
なお、「保全するコナラ・カシ等の森林等」の周辺の森林においては、「保全するコナラ・カシ等の森林」への被害拡大を抑制するため、積極的に枯死木・被害木の駆除(伐倒くん蒸・立木くん蒸等)に努める。
地域区分にかかわらず「ナラ枯れ」による危険木が、人的被害や住宅や道路・電線等のライフラインへ二次的被害を発生させるおそれがある場合には、これらを除去する等、適切な防除に努めるものとする。
地域区分にかかわらず、コナラ・カシ等の大径木、高齢級の森林については、ナラ枯れの被害を受ける前に予防伐採や更新伐を図るほか、被害木も含めた小面積の皆伐を行い、萌芽更新(必要があれば広葉樹等を植栽)により、健全な森林への若返りを図る。
県は、国、関係市町及び森林組合等と連携し、県内の被害状況の情報収集・早期発見を行うとともに、共同して調査を行い、効果的で効率的な防除対策の検討及び地域住民に対するナラ枯れに対する正しい知識・情報の普及啓発を行う。また、重要なライフラインの管理者に必要な情報を提供する。
市町は、ナラ枯れ被害が発生した場合には、速やかに被害の実態の把握に努め、県に報告するものとする。特に、「被害地域」の「被害先端地域」、その周辺の「未被害地域」、「保全するコナラ・カシ等の森林」については重点的に監視する。
県は、被害木の移動により、未被害地への人為的な被害拡大を防ぐため、ナラ枯れ被害を受けて伐採された枯死木・被害木の移動を行わないよう、森林所有者、林業関係者並びに地域住民等に周知する。
本方針は、県内の被害状況、新たな防除技術の開発等に応じ、必要があれば見直すものとする。
この方針は、令和2年12月1日から適用する。
※1.齢級
樹木の年齢を林齢と言うが、齢級は林齢を5年ごとに区切って呼ぶ用語。
1齢級は1~5年生、2齢級は6~10年生となる。
※2.被害木
カシナガの加害を受けて、穿入孔から木くずを出している状態のコナラやシイ・カシ類の樹木
※3.枯死木
カシナガの加害を受けて、穿入孔から大量の木くずを出しており、既に葉が枯れている状態のコナラやシイ・カシ類の樹木(被害木に含まれる)
※4.コナラ・カシ等の森林
コナラやクヌギ・アベマキ、アラカシを中心とする広葉樹林の二次林及び社叢等のシイ・カシ林等、その他ナラ枯れ被害を受けるブナ科の樹木がまとまって生育する森林をいう。なお、これまでナラ枯れの被害を受けることが確認されている樹種は次のとおりである(下線は、県内で自生が確認されているもの。マテバシイは街路樹や公園木として生育)。
属 |
樹種 |
---|---|
コナラ属 |
クヌギ、アベマキ、カシワ、コナラ、ナラガシワ、ウバメガシ、アカガシ、ツクバネガシ、イチイガシ、アラカシ、シラカシ、ウラジロガシ、ミズナラ |
クリ属 |
クリ |
シイ属 |
スダジイ、ツブラジイ |
マテバシイ属 |
マテバシイ、シリブカガシ |
※5.穿入生存木
カシナガの加害によって、穿入孔から木くずを出しているが、葉が枯れていないか、一部の葉が枯れるにとどまっており、枯死までには至っていない状態のコナラやシイ・カシ類の樹木
※6.被害拡大期間
カシナガが例年羽化する期間で、その前後の余裕期間を加えた6月から10月をいう。
機関名 | 所在地及び電話番号 |
---|---|
環境森林部森林・林業政策課 | 〒760-8570 高松市番町四丁目1番10号 TEL:087(832)3458 |
森林センター | 〒769-0317 仲多度郡まんのう町新目823番地 TEL:0877(77)2515 |
小豆総合事務所環境森林課 | 〒761-4121 小豆郡土庄町渕崎甲2079-5 TEL:0879(62)5650 |
東部林業事務所 | 〒761-0446 高松市東植田町1210-3 TEL:087(849)0444 |
西部林業事務所 | 〒766-0021 仲多度郡まんのう町四條1192番地1 TEL:0877(73)2347 |
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