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平成30年1月18日(木曜日)~19日(金曜日)に農林漁家民宿の先進地である高知県梼原町に赴き、農林漁家民宿を経営されている3人の方にお話を伺いました。
最初の年に来てくれた方が今でもたくさん来てくれて、やはりリピーターの口コミが一番有効な手段だと思います。その他にも、雑誌や役場のウェブサイトを見て来る方もいらっしゃいます。インターネットには特にこだわっていません。
人を呼び込む際には、宿泊者が何の目的でいらっしゃっているのかを考えることが必要で、例えばこの地域だったら、強みである町の観光資源(建築や林業など)なんじゃないかと思います。それを活用しながら、色々な人と連携することが重要なんじゃないでしょうか。
それから、食事というのも人を呼び込む有効な手段です。最初は食事の提供無しで開業したのですが、宿泊された方がご飯を食べたいというので、開業後1年も経たないうちに、食品衛生法の許可をとって、食事を提供する形にしたんです。ここは山菜がたくさんとれるんですけど、自分たちが普段食べているような料理は、お客さんが喜ばないんじゃないかって考える地元の方がたくさんいました。でも、お客さんの中には宿泊先で地元のものを食べたいという方が多いんですね。山菜を提供しているうちに、お客さんから口コミで広がって、この地域ならやっぱり山菜料理でいいんだって思えるようになるまで、4,5年はかかりましたけど、でも、そうやって、地域のものを地域で提供する、地域のものを地域で回すというのは大切なことだなあと感じます。
農家民宿を始めるときに視察先で言われたんですけど、自分で頑張って経営するなら、あまり補助金に頼らない方が良いというお話でした。それでも改装する必要があったので、農業近代化資金の融資を受けて、トイレや囲炉裏等の改装を行いました。お金を借りると返済があるので、なるべくそうしたくなかったのですが、でも、その結果経営感覚が磨かれたのではと思います。
改装以外だと、物品関係は開業後も欲しいもの・必要なものが出てきました。もちろん、開業前に色々準備していたんですけど、例えばリネン類とか思わぬところで必要になったり。開業当初は、本当に資金面で苦労しましたね。
近所の方とのトラブル等を心配をされる方もいらっしゃいますが、私のところは、道に迷っているお客さんやバス停で待っているお客さんを連れてきてくれたり、宿泊者が病気になったら夜中でも協力するよと言ってくれたりと、地域の人達がとてもいい人で本当に助けられています。子供の声が聞こえると、とても喜んでくれたりもします。
家族も協力的で、始める時の反対というのはなかったですね。みんなで協力しながら経営しているという感じです。
体験メニューは、そば打ち体験や坂本龍馬の脱藩の道歩きなどを用意していますが、お客さんの中には、あれもこれも楽しみたいという方よりも、自然の中でゆっくり過ごしたいという方が多いように思います。取れたてのお野菜を楽しみにしていたり、おじいちゃんおばあちゃんに会うのを楽しみにしていたりとか。都会には、3世代暮らしをしているおうちがなかなか無いのか、そういう意味で、農林漁家民宿を経営する意味はあるんじゃないかなと思います。おじいちゃんをくださいといった子供もいるくらいですから(笑)。
どういう人たちを受け入れるのか、自分のところの主要なお客さんがどういう方になるのかを考えておくことが、農林漁家民宿を経営するうえで重要になると思います。それを考えたうえで、自分たちの作った農産物をお客さんに喜んで食べてもらって、自分たちが元気で楽しく、無理のない形で経営することが、やりがいに繋がっていくのではないでしょうか。
ぜひ、ご自身のやりがいというものを見つけて、開業に向けて進んでみてください。
主人は人と話をすることが好きですので、大いに賛成という感じでした。うちは母屋と棟を別にしていましたので、あまり気を使うことなくできたところも良かったんじゃないかなと思っています。
開業当初、費用は全然かかりませんでした。でも、この地域でも夏は暑くて冬はとても寒いので、古くて寒かったお風呂を3年前に改装したり、エアコンを設置したりと、その時は結構費用がかかったと思います。
開業手続きに関しては、行政の方から色々なアドバイスいただいたので、意外と簡単でした。難しいということはなかったですね。
体験では、椎茸採取や稲刈・田植え、ユズがあるときにはユズを取りに行ったり、アメゴ釣りや炭焼き体験など、お客さんの要望があればやっています。最近のお客さんは、宿泊後に四万十川やカルストに行ったりと、皆さん計画を立てていらっしゃるので、あまりここでずっと過ごされるということはないですね。
大阪の方は車で、東京の方は飛行機を使い、空港でレンタカーを借りていらっしゃることが多いです。近くまでいらっしゃる方であれば、ここから5~10分の距離だったら送迎をしたりもします。
足の爪にマニキュアをきれいに塗った若い女の子が田植えをしたいって言うので、1泊した次の日に主人が田んぼに連れて行ったんです。でも長靴を用意してなくて。そしたら女の子が「長靴なんかいりません。」って靴を脱いで、素足でそのまま田んぼに入ってね。もうキャーキャー言いながら5、6人が田植えをしたんですよ。もうすごかったです。あれ見てたらね、私たち都会の人のこと勘違いしてたなーって。農業についてもね。
やっぱりそのままの自然を満喫したいってお客さんが多いのかなって思います。次の年の秋に来た時には、稲刈りしたいって言うんで、コンバインを出して、女の子3人順番に機械に乗ってもらって、小さい田んぼを刈ってもらいました。お客さんは、畑に連れて行って大根を一本引き抜くだけでもすごく喜ぶので、何でもいいから体験させてあげることが大切なんじゃないかなって思います。
農林漁家民宿を経営していると、長い付き合いになるお客さんも増え、色んな繋がりができてきます。人の温かい心に触れて、すごくうれしい経験をすることもあって。農林漁家民宿を開業すれば、そんな豊かな暮らしができるようになるので、みなさんもやってみてはどうでしょうか。
私たちはこれが専業ではなくて他の仕事もしていますが、4人で経営しているので、誰かが忙しかったら他の人が民宿に入るという感じでやり繰りできるんですよね。農林漁家民宿は予約制なので、割と自由が利きます。買い物にしても何にしてもロスが少ないというか。来ないお客さんを待って、1日中灯油を焚いたりとかはしなくて良くて、予約を受けた分だけ考えれば良いので、そういう面ではやりやすいですね。
農林漁家民宿は、メンバーの一人が使っていた工場を改築して始めました。補助金が大体半分くらいありましたが、残りを自分たちで支払うため、やっぱりそれに一番費用がかかりました。でも備品では、テーブルとか食器とかは、旅館業をしていた親戚がちょうど辞めたということでたくさんの物をいただいたんです。その他に、炊飯器とかファンヒーターとか大きなボールとかこたつなんかも、自分たちの家で使わずにしまってあるものを持ち寄ってそろえました。主なもので新しく買ったものと言えばお布団くらいでしょうか。
旅館業法とかの法律の手続きについては、役場の方やその他にもたくさんの人に手伝っていただきました。消防法の関係だと、消防署の職員に来てもらったりして。保健所関係の許可は、自分たちもここから1時間くらいの須崎市に出向いて手続きを教えていただいたので、そんなに難しいこともなく、困ったこともありませんでした。
私たちが一番困ったのは、金額の設定ですね。特に食事については、いくらお金をいただいたらいいのか全然分からなくて、よその店行って、これがいくら、これがいくらって確認しながら設定していきました。
家族はグリーン・ツーリズムということを少しは知っていたので、反対はしませんでしたね。けど、地域の中には、こんなところに人が来るんやろうかと言っている方もいらっしゃいました。これからはそういう時代だから、人も来るようになるよって言っても最初は納得してなかったみたいですけど、始めてからいろんな人がいらっしゃったので、それで納得したという感じでしたね。
近所の方も温かく見守ってくれたと思います。私たちが開業してからも、町内でもだんだんと農林漁家民宿が立ち上がってきましたからね。
そうですね。梼原町を出られた方が、農林漁家民宿があるということで帰ってこられるんです。私たちのところはあまり立派な民宿ではないんですけど、それが良いんですかね、田舎のおばあさんの家に来たという感じになるみたいです。みんなゆっくり過ごして、思い出話に話を咲かせたり、それがなんかうれしいんですよね。
案外誰も、親戚の家に2,3日泊まらせてくださいって言えないじゃないですか。でも、こういうところがあれば、ちょっと2、3日泊まって、お墓参りとか、それから、昔とは変わってしまったけれど、自分の生まれたところを散策できますから、そういう風に過ごしてもらえると、ちょっとでもお役に立つことができたかなって感じます。
農林漁家民宿というのは、歳をとってからもできる仕事なんですよ。歳をとってちょっとしんどくなったら今まで30分でしていたことを40分ですれば良いだけで。よそに行って人に遠慮しながら仕事をするわけじゃないし、自分たちが考えて時間をやり繰りしたらずっとできる。掃除機を掛けてもお風呂を洗っても、家事よりずっと楽しいんですよね。それに、おいでてくださるみなさんとの出会いが、人生にメリハリを与えてくれて。私たちもそんな感じでやっていますから、みなさんも農林漁家民宿を始められたら良いと思います。
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