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2021年11月19日、国の文化審議会は県庁舎東館(旧本館および東館)を重要文化財に指定するよう、文部科学大臣に答申しました。戦後に建てられた庁舎建築としては全国初のこと。世界的な建築家である丹下健三氏の代表作の一つで、鉄筋コンクリートで造られた日本の伝統建築の表現、正面玄関(ピロティ)やロビーなど県民に開かれた空間とする手法に加え、受付カウンターや椅子などの家具類も意匠的に優れ、歴史的価値が高いと評価されました。2019年12月には耐震改修工事も完了し、生まれ変わった県庁舎東館。これからも県民に親しまれる現役庁舎として機能し続けていきます。
国の重要文化財に指定されることが決まった県庁舎東館。県内の重要文化財建造物指定は約5年ぶり30件目で、戦後の庁舎建築としては全国で初めての指定となります。文化審議会からは、柱や梁の構造、塔の軒を思わせる小梁が連続したバルコニー、障子やふすま風の建具など、日本の伝統的な意匠を鉄筋コンクリート造で巧みに表現している点、1階のピロティやロビーを県民に開かれた空間とする手法や、コアシステムを採用してフロアをフリープランにする構造が意匠的に優れ、歴史的価値が高いと評価されました。
南庭の石灯籠や太鼓橋、庁舎内に設置している受付カウンターやクローク棚、椅子などの家具類を含め、計57点も重要文化財の附に指定されました。これは全国的に非常に珍しいことで、猪熊弦一郎氏や剣持勇氏などの著名な芸術家やデザイナーなどが携わったことにより、後の「アート県かがわ」の礎となり、その価値をさらに高めています。
1階ロビーにある猪熊弦一郎の「和敬清寂」
1958年5月26日に竣工した東館は、屋上に3階建ての塔屋が付いた8階建ての建物と、県庁ホールがある3階建ての建物で構成しています。建築家の丹下健三氏が設計した日本の伝統建築を思わせるデザインが特徴の東館は、民主主義の精神を体現したモダニズム建築として、丹下建築の中で最も素晴らしいといわれています。
世界の専門家からも評価が高く、1999年に近代建築の保存に取り組む組織「DOCOMOMO Japan」の「日本の近代建築20選」に選ばれたほか、2021年にはニューヨーク・タイムズ発行の雑誌の特集で「世界で最も重要な戦後建築25作品」に日本で唯一選出されました。1階を開放し、気軽に利用できる空間は、60年以上たった今も県民に親しまれ、丹下建築を一目見ようと県外からも多くの建築ファンが訪れています。
屋上塔屋 | 県庁ホール |
東館は戦後モダニズム建築の代表として文化的価値だけでなく、優れた機能性を有しています。中央に耐震壁を置く「センターコアシステム」を採用し、周囲の空間を自由に活用できる機能的な構造も評価されています。
重要な防災拠点施設でもあることから、耐震改修工事を実施。建物の内観、外観のデザインや機能を損なうことなく耐震安全性を確保するため、免震装置を建物の基礎下に設置する「レトロフィット工法」を採用。県庁舎としての機能を保ったまま工事を行い、2019年に完了しました。
東館の利活用については、南庭やピロティ、県庁ホールなど主な見どころを紹介するホームページを充実するとともに、新たなパンフレットの作成、東館1階のギャラリーの展示内容の充実など、県民に開かれた庁舎を堪能できるような工夫を検討していきます。
現在も庁舎の機能を果たしている
東館を支える免震装置
県庁舎に新たな時代の到来を予感 |
剣持デザイン研究所 代表取締役 松本 哲夫さん
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剣持勇氏の右腕として活躍し、県庁舎東館建設でインテリアのデザインを担当した東京都在住の松本哲夫さん(92歳)に、当時の思い出や重要文化財に指定された感想をお聞きしました。 剣持と初めて出会ったのは1951年。大学で建築を学んでいた私が就職先を探していた時、剣持から「私のところで働かないか」と誘われ、通商産業省の産業工芸試験所(当時は工芸指導所)に入りました。剣持は海外視察で、欧米のインテリアをオーダーメードし、建物との調和がとれている空間を見て、インテリアのデザインには建築の知識が必要だと感じていたのでしょう。それで私に声を掛けたのだと思います。剣持が独立した後も彼の仕事を手伝うようになりました。
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