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精神障害とは、精神疾患のために精神機能が障害され、日常生活や社会参加が困難となっている状態のことをいいます。病状が悪化すると、判断能力や行動のコントロールが難しくなることがあります。精神疾患についての正しい知識が十分に普及していないため、誤解や偏見、差別の対象となりやすく、社会参加が妨げられがちです。
他者から見えやすい症状には妄想や幻聴、まとまりがなく支離滅裂な言動などがあります。見えにくい症状は感情が乏しくなる、意欲や自発性が低下して引きこもりがちになるなどです。初期には自分が病気だという自覚がないことが多いです。10代後半の思春期から30代の青年期に発症することが多いとされています。統合失調症の発症頻度は120人に1人ほどで、特別めずらしい病気ではありません。症状は薬物療法などで改善します。経過が数年、数十年と長期にわたるため、福祉的な支援が必要となる人も少なくありません。
過度に気持ちが落ち込むことを抑うつ状態、過度に気持ちが高揚することを躁状態と言いますが、これらの気持ちが過度に上下する症状をまとめて気分障害と言います。その中でふさぎ込んでしまうタイプをうつ病、高揚するタイプを躁病、その両方の状態を行ったり来たりするタイプを躁うつ病と分類します。どのタイプでも薬物療法と精神療法が有効です。抑うつ状態の人には休息が十分とれるような周囲の配慮が必要です。抑うつ気分が強くなると自殺の危険性が高まるので、要注意です。
過度な不安または恐怖を主な症状とするものを不安障害と言います。その中のパニック障害とは、場所や状況を問わずに前触れなく、激しい動悸や息苦しさ、めまい、しびれ、吐き気などのさまざまな症状が一気に現れるものです。本人は「このまま死んでしまうのではないか」と思うほど激しい不安または恐怖に襲われます。この発作は数分から数十分で鎮まってきます。ひどくなると外出できなくなることや、抑うつ状態になることもあるので、早い時期に治療を受けることが大切です。
全般性不安障害はパニック障害のように急な強い発作は起こりませんが、つねに漠然とした不安感があり、仕事や家事が手につかなくなります。動悸やめまい、不眠など様々な身体症状も現れます。自分が心配しても仕方がないとわかっていても、不安を拭い去ることができません。本人は自分が病気だという認識が薄いため、精神科の受診につながらないことも多いです。
強迫性障害は、決まった行動を繰り返してしまうのが特徴で、強迫観念がもとになっています。強迫観念とは実際にはあまり起こらないようなことに対する心配や疑念、不吉な想像のことです。例えば外出後に「戸締りを忘れたのではないか」という強迫観念が湧き上がってくると、何度も家に戻って戸締りを確認してしまいます。一度確認して強迫観念を打ち消しても、しばらくするとまた同じ強迫観念が湧き上がってしまうのです。本人もやりすぎだとわかっているのですが、やめられません。
「心的外傷(トラウマ)」は災害や事故、事件など自分や身近な人の命が脅かされるような出来事を体験したり、目撃したりすることで起こります。「フラッシュバック」と呼ばれる過去の体験をまるで再び体験しているかのような感覚に何度も襲われてしまいます。その苦痛はたいへん大きく、その体験に関連するものに対して過度の警戒心を抱いたり、物事への関心が薄れて「自分だけが生き残ってしまった」という自責の念にかられたりして他人から孤立しがちになります。
アルコールや覚せい剤など、精神機能に作用するものへの欲求が非常に強くなり、やめることができなくなる状態を依存症といいます。繰り返し摂取するうちに、得られる効果は弱くなっていくため、摂取する量や回数がしだいに増えていきます。そして、アルコールや薬物の使用をなによりも優先するようになり、やめられない状態に陥ります。依存症の治療は本人の努力だけでは困難で、病院や保健所、自助グループなどの積極的な利用が依存症からの回復につながると考えられています。
精神疾患の治療で、入院が必要になる場合があります。
精神科病院や病棟への入院は、内科や外科の病院への入院と異なる点がいくつかあります。
精神科病院・病棟への入院には、任意入院・医療保護入院・措置入院の3つの形態があります。
患者さん本人が自ら望んで入院治療を受けることを言います。言い換えると本人から入院治療の同意が得られる場合となります。
本人に代わって家族等の同意によって入院治療を受けることを言います。精神保健指定医が診察し、入院治療が必要な状態であるにも関わらず本人が病気のために入院の必要性を適切に判断できない状態と判断した場合に限り、本人の治療と保護のために家族等の同意があれば入院させることができます。
医療保護入院は本人の同意が得られないため、人権保護の観点から以下の厳密な手続きが定められています。
香川県知事は、入院させなければ精神障害のため自身を傷つけたり、他人に害を及ぼすおそれが明らかな者を、精神保健指定医に診察させることができます。この診察で精神保健指定医が措置入院に該当と診断すれば、もう一人別の精神保健指定医に診察をさせます。この2人の診断がともに措置入院に該当するとなった場合に限り、行政が強制的に入院治療を受けさせることができます。
措置入院は誰の同意も必要としないため、人権保護の観点から措置入院後3か月をめどに措置入院の継続が必要か審査を行うこととなっています。
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