令和元年12月25日答申第50号(香川県個人情報保護審議会答申)
令和元年12月25日(答申第50号)
第1 香川県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の結論
障害福祉相談所長(以下「処分庁」という。)が行った、一部開示決定(以下「本件処分」という。)により不開示とした部分のうち、別表2の「開示すべき部分」に掲げる部分については、開示すべきである。
第2 審査請求に至る経過
1 保有個人情報の開示請求
令和元年5月21日、審査請求人は、香川県個人情報保護条例(平成16年香川県条例第57号。以下「条例」という。)第14条第2項の規定に基づき、審査請求人の子(以下「本人」という。)の法定代理人として、処分庁に対し「〇月〜〇月(令和元年)香川県障害福祉相談所の〇〇様と〇〇〇学校〇〇校長、学校関係者(教頭、コーディネーター)の電話、面談時の内容」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 処分庁の決定
処分庁は、本件請求に係る審査請求人の保有個人情報が含まれる行政文書として、「請求者の個人情報である相談経過記録の11頁から14頁のうち、令和元年〇月〇日の請求者との連絡記録、同年〇月〇日の〇〇〇学校訪問時の面談記録の一部及び同年〇月〇日の請求者との連絡記録」(以下「本件保有個人情報」という。)を特定し、令和元年5月30日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。
3 審査請求
審査請求人は、本件処分を不服として、令和元年6月25日付けで行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により、香川県知事に対して審査請求を行った。
第3 審査請求人の主張
1 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、「本件処分を取り消し、全部を開示するよう求める。」というものである。
2 審査請求の理由
審査請求書において主張している審査請求の理由は次のとおりである。
開示しない部分に当方と対峙している〇〇教育委員会と〇〇〇学校の考え方や差別をしている実情が隠されていることが推測され、当方の知る権利を侵害し、問題解決を引き延ばす為に教育委員会と学校側に配慮していると言わざるを得ない。
〇〇教育委員会と学校側の問題点を明らかにする為にも、伏せられている〇〇教育委員会と学校側の発言を明らかにしていただきたい。
3 反論書による主張
反論書による主張は次のとおりである。
被害者の知る権利を著しく阻害し、被害者の救済の意識、人権意識が低い。
障害福祉相談所の方からは、はっきりと校長へ差別をしていると指摘したが、考えが変わらなかったと聞いており、その会話も録音して記録している。
法律の定める国民の知る権利は、加害者側への配慮は必要なく、被害者の利益を追求するべきであり、障害福祉相談所が仕事をしている事の証明の為にも公表すべきである。
第4 処分庁の理由説明
処分庁が弁明書において主張している本件処分を行った理由は、次のとおりである。
黒塗り部分については以下に該当するため一部開示決定処分は、適法かつ妥当なものである。
- (1) 相談経過記録のうち、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがある情報(香川県個人情報保護条例第16条第2号)
- (2) 相談経過記録のうち、県の機関、国の機関、県以外の地方公共団体、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報(香川県個人情報保護条例第16条第5号)
- (3) 相談経過記録のうち、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報(香川県個人情報保護条例第16条第6号)
第5 当審議会の判断
1 本件保有個人情報について
障害福祉相談所(以下「相談所」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第14条及び香川県障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会づくり条例第9条第2項に基づき、障害を理由とする差別に関する相談業務を行っている。同相談業務は必要に応じ、(1)相談に応じ、相談者に必要な助言、情報の提供等を行うこと(同1号)、(2)相談に係る関係者間の調整を行うこと(同2号)、(3)関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと(同3号)とされている。そして、同相談業務のため、「障害を理由とする差別に関する相談の対応マニュアル(香川県障害福祉相談所)」(以下「本件マニュアル」という。)に基づき、ケース管理票及び経過記録等を作成し、所内で当面の方針を決定する等の対応を行っている。
本件保有個人情報は、本件マニュアルに基づき作成される経過記録の一部であり、令和元年〇月〇日に行われた、〇学校、処分庁及びその他関係者間の協議に関する記録が記載されたページが含まれる4ページ分である。
審査請求人は、本件保有個人情報の一部を不開示としたことが、条例第16条の規定に違反するものとして、本件処分の取消しを主張しているため、当審議会は、以下このことについて検討する。
2 不開示情報該当性について
- (1)条例第16条第2号該当性
条例第16条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を不開示情報と定めている。そして、条例第14条第2項の規定により代理人が本人に代わって開示請求をする場合にあっては、開示請求者とは当該本人をいう。
本件保有個人情報を見分したところ、相談所職員が関係者から聴取した内容を記録したものであり、別表1の部分につき、本人以外の個人に関する情報を含むものと認められる。また、相談所の行う関係者への事情聴取は、聴取した内容が公にならないことを前提に行われるものであるから、これを開示すると、情報提供者の心理的負担が生じ、関係者との信頼関係を失うなど、本人以外の個人の権利利益を害するおそれがあると認められる。
条例第16条第2号ただし書は、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く」と規定しているが、本件保有個人情報のうち別表1の部分については、他者の生命等の保護のため、これを開示しなければならない公益上の要請は認められない。
よって、本件保有個人情報のうち別表1の部分は、条例第16条第2号本文に定める不開示情報に該当する。
- (2)条例第16条第5号該当性
条例第16条第5号は、「県の機関、国の機関、県以外の地方公共団体、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情報と定めている。
本件保有個人情報を見分したところ、処分庁の主張する条例第16条第5号該当部分(別表2)は、いずれも本人と相対する関係者と相談所職員の間でなされた事情聴取部分ないしその具体的内容が記載された部分であると認められる。
相談所の行う相談業務は、公平・中立の立場から事実関係の調査、助言、指導等を行うものであり、そのためには関係者らの協力が不可欠である。そして、同相談業務として行われる事情聴取は、相談所職員の守秘義務の下、他者には原則として開示されないことを前提としてなされるものである。仮にこのような情報が開示された場合、事情聴取を受けた関係者は、開示されることをおそれ真実を述べることをちゅうちょしたり、開示されることを前提とした証言しかしなかったりすることとなる。その結果、関係者の真正な証言が得られないこととなれば、相談所は事実関係の調査が不十分となり、相談業務の適正な遂行に著しい支障が及ぶおそれが認められる。もっとも、相談所の相談業務として個別事案を離れて一般的に行う助言等については、このような支障のおそれはないといえる。
別表2のうち、14ページ15行目33字目から16行目13字目までは、相談業務として一般的に行う助言であり、開示されることで相談業務の適正な遂行に著しい支障が及ぶおそれがあるとは認められない。一方で、別表2のそれ以外の部分については、個別事案について事情聴取された部分であると認められるため、開示されることで相談業務の適正な遂行に著しい支障が及ぶおそれが認められる。
ところで、本件保有個人情報14ページ21行目3字目以降をみると、処分庁は関係者から聴取した結果の概要について開示していることから、関係者への事情聴取結果を記録した部分のうち、開示した概要部分に相当する箇所について、事務事業上の支障が失われるとも思われる。しかし、相談所職員には調整に必要な範囲で情報を提供する裁量が認められること、及び関係者の発言の要旨を開示されることと生の発言を開示されることとは影響の程度が異なることからすると、概要について開示していることをもって、事情聴取記録部分の事務事業上の支障が失われるとはいえない。
よって、本件保有個人情報のうち別表2の部分は、14ページ15行目33字目から16行目13字目を除き、条例第16条第5号に定める不開示情報に該当する。
- (3)条例第16条第6号該当性
条例第16条第6号本文は、「個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」を不開示情報と定めている。
本件保有個人情報は相談所の相談業務のために作成されている文書であり、別表3の部分につき、個人の評価に関する記述があることが認められる。
これらの部分を開示すると、相談所職員が将来開示されることをおそれて開示することを前提に評価等が行われ、画一的な評価等がなされたり、担当者が問題の本質に結びつく情報の記載に消極的になる可能性が否定できないなど、相談事務の形骸化を招いたり、事務本来の目的が損なわれるおそれがあると認められる。
よって、本件保有個人情報のうち別表3の部分は、条例第16条第6号に定める不開示情報に該当する。
以上の結果、当審議会は、「第1 香川県個人情報保護審議会の結論」のとおり判断する。
第6 審議会の審査経過
(省略)
別表1
頁 |
該当部分 |
開示すべき部分 |
13 |
20行目30字目から22行目まで |
|
14 |
7行目10字目から8行目7字目まで |
|
別表2
頁 |
該当部分 |
開示すべき部分 |
11 |
1行目から8行目まで |
|
12 |
17行目から21行目20字目まで |
|
23行目から26行目まで |
|
13 |
1行目3字目まで |
|
3行目から11行目まで |
|
13行目から20行目29字目まで |
|
23行目から26行目まで |
|
14 |
1行目から3行目まで |
|
15行目から16行目13字目まで |
15行目33字目から16行目13字目まで |
26行目 |
|
別表3
頁 |
該当部分 |
開示すべき部分 |
12 |
21行目21字目から22行目まで |
|
13 |
1行目4字目から24字目まで |
|
14 |
12行目から13行目23字目まで |
|
19行目1字目から11字目まで |
|