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地球の温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨などの地球環境問題は、私たちが健康で文化的な生活を送るために解決しなければならない人類共通の課題です。地球上の諸活動を持続可能なものとし、地域発展と環境保全とが両立した社会を構築していくためには、今日の大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直し、環境への負荷の少ないものへと変えていくことが重要です。
このような状況ものと、平成4年6月にブラジルで開催された「地球サミット」では、各国の代表者により、地球環境の保全と持続可能な開発の実現のための具体的な対応方策について協議が行われ、国のみならず地方公共団体においても積極的な取り組みが求められています。
本県におきましても、これまで、地球環境保全に向けて庁内体制を整備し、各種施策を進めてまいるとともに、平成7年4月から「香川県環境基本条例」を施行し、21世紀に向け、地球環境問題まで視野に入れた新たな環境保全施策を積極的に推進することといたしております。「香川県地球環境保全行動指針」は、この条例に基づき策定したもので、県民、事業者、行政が、それぞれの役割に応じて、地球環境の保全に資するように行動するための指針です。
地球的規模という空間的な広がりと将来に世代にわたり影響を及ぼすという時間的な広がりを持つ地球環境問題は、私たちの日常生活や通常の事業活動に深く関わっております。今、一人ひとりが、環境への負荷が人々の様々な活動から生じていることを認識し、地域に根ざした取り組みを実践していくことが求められています。
県民、事業者、市町の皆様におかれましては、私たちが、現在の環境の恵沢を享受するとともに、将来の世代に健全で恵み豊かな環境を承継できますよう、この指針に基づき、各々の立場で、自主的かつ積極的に地球環境を保全するための取り組みを進めていただきますようお願い申し上げます。
最後に、この指針の策定に当たりまして、貴重な御意見、御提言をいただきました香川県環境審議会の委員の皆様をはじめ県民の方々に対しまして、心からお礼を申し上げます。
平成8年11月
香川県知事 平井 城一
資源やエネルギーの大量消費などを伴う都市化の進展やライフスタイルの変化は、環境への負荷を増大させ、人類の生存基盤である地球全体の環境にまでも影響を及ぼすに至っています。地球の温暖化、オゾン層の破壊など地球的規模の環境問題が脅威を与えつつある中、人類の未来にとって、地球上の諸活動を持続可能なものとし、地域発展と環境保全とが両立した社会を構築していくことは緊急の課題となっています。
このような状況のもと、1992年6月にブラジルで、「地球サミット」が開催されました。この会議では、「持続可能な開発」をキーワードに、約180カ国の代表者により討議が行なわれ、いわば人類の総意を受ける形で、21世紀に向けた具体的な行動計画である「アジェンダ21」が採択されました。「アジェンダ21」は、我が国で環境問題としてとらえている公害や自然破壊の問題よりはるかに広い問題をとりあげ、これを全体として克服すべく、1,000を超える数多くの行動を取りまとめたものです。
我が国においても、1993年11月に「環境基本法」が制定され、地球環境時代の環境施策の新たな枠組が示されました。また、同年12月には、「アジェンダ21」を受け、持続可能な開発に向けた国の行動計画である「アジェンダ21行動計画」が策定されました。さらに、1994年12月には、「環境基本法」の中心的な施策として「環境基本計画」が策定され、21世紀に向けて、政府が長期的、総合的に進めていく環境行政の道すじが明らかになりました。
本県においても、これまで全庁的な組織である地球環境問題連絡会議(1996年4月、環境・土地利用調整協議会地球環境部会に改組)を中心に、再生紙の利用促進などの省資源・省エネルギー対策や酸性雨、酸性霧、フロンに関する調査、研究等を進めるとともに、香川県環境保全基金を活用して地域における自主的な活動の支援や普及啓発活動等を進めてきました。1995年3月には、地球環境問題まで視野に入れて、21世紀に向けた新たな環境保全施策を展開するために「香川県環境基本条例」を制定しました。
地球環境問題は、これまでの環境問題と異なり、影響範囲が地球的規模にまで及び、しかも、その影響が私たちの子や孫の世代になって現れてくるというようなものもあるように、空間的広がりと時間的広がりとをあわせ持つ問題となっています。しかし、その原因は、私たちの日常生活や通常の事業活動に深く関わっており、今、私たち一人ひとりの地域に根ざした取組が求められています。
そこで、「香川県環境基本条例」に基づき、県民、事業者、行政がそれぞれの役割に応じて地球環境の保全に資するように行動するための指針として「香川県地球環境保全行動指針」を策定することとなりました。
人類の経済活動は、産業革命以来、飛躍的な進歩を遂げました。さらに、来世紀いっぱいは経済成長が続き、開発途上国の人口増加とあいまって、今後の100年間で世界の経済規模は現在の30倍にも拡大するといわれています。
このような経済発展が、地球環境に著しい影響を及ぼすことは明らかです。現時点においても、人類の活動は地球環境に相当な影響を及ぼしており、地球温暖化の原因となるであろう大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命以前が280ppmvであったのに対し、1992年には360ppmvに達しています。1年間の増加率は0.5%です。これらの8割が、石油、石炭などの化石燃料の燃焼により発生しています。また、産業革命以前には全く存在しなかったフロンが、オゾン層破壊の原因となっています。
地球規模の環境問題とはいったいどのようなものが含まれているのでしょうか。我が国を含め国際的な認識としては、(i)被害、影響が一国内にとどまらず、国境を越え、ひいては地球規模にまで広がる環境問題、(ii)我が国のような先進国も含めた国際的な取組(政府開発援助等)が必要とされる開発途上国における環境問題、のいずれか、あるいはその両方を満たす環境問題とされ、具体的には次の9つが地球環境問題とされています。
地球の表面温度は、大気中の二酸化炭素、メタンガス、水蒸気などの温室効果ガスによって、地球上の生物にとって住みやすい環境に保たれています。しかし、近年、人間活動の量が飛躍的に増大し、二酸化炭素やメタンガスなどを大量に大気中へ排出するようになったため温室効果が強まり、地球が温暖化するおそれが生じています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告では、温室効果ガスが現在の増加率で増え続けた場合、大気と地表の平均気温が21世紀末までに約2度上昇します。この気温の上昇は過去1万年の間に例を見ない、極めて急激な変動であると考えられ、21世紀末には海面の水位が50cm上昇することが予測されています。そして、この地球の温暖化は、水資源、農業、森林、生態系、沿岸域、エネルギー、都市施設、健康などさまざまな分野において影響を及ぼすことが指摘されています。
地球の成層圏のオゾン層は、太陽光に含まれる有害な紫外線の大部分を吸収し、地球上の生物を守っています。このオゾン層がクロロフルオロカーボンいわゆるフロンなどの人工の化学物質によって破壊されることが明らかとなっています。オゾン層が破壊されると、有害な紫外線の地表への到達量が増し、皮膚ガンや白内障等の健康影響や生態系への悪影響を引き起こすことが懸念されています。
石油や石炭などの化石燃料の燃焼によって生ずる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などが大気中で硫酸や硝酸等に変化し、これを取り込んだ雨は非常にpHが低い酸性雨となります。酸性雨は、湖沼や河川を酸性化し魚類等へ影響を与えるほか、森林や建造物等へも被害を及ぼします。また、酸性雨は数千キロも離れた地域へも越境移流により影響を与える性質があり、国を越えた広域的な現象となっています。
世界の森林総面積は約38.8億haで陸地の約29%を占めます。森林は、野生生物の生息、土壌の保全、水源かん養、二酸化炭素の吸収・固定といった環境調整機能を有するほか、用材、薪炭材等の木材、医薬品の原料等の非木材生産物の供給源となっています。近年、特に熱帯地方の開発途上国における森林の減少が著しく、国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、1981年から1990年までの10年間で、年平均1,540万ha(我が国の国土の面積の約4割)の熱帯林が減少し続けています。熱帯林が消失するとそこに生息している多くの野生生物種が絶滅の危機に瀕し、また、森林消失により大量の二酸化炭素が放出されるおそれがあります。熱帯林消失の主な原因は、非伝統的な焼畑耕作、過度の薪炭材採取、不適切な商業伐採、過放牧などといわれていますが、その背景には人口増加、貧困、土地制度等のさまざまな社会的経済的要因が絡んでいます。
野生生物は、地球の生態系を形づくる基本的な構成要素であり、人類にとって有用な資源として、また、生活に潤いや安らぎをもたらす存在として大切なものです。現在、人間活動による生息・生育地の破壊や乱獲によって野生生物の種が急激に減少しています。1990年以降の30年間で全世界の5~15%の野生生物種が絶滅すると予測されています。このことによって、環境的・科学的価値のみならず莫大な潜在的経済価値を失うことになります。
1991年のUNEPの砂漠化の現状等に関する調査によれば、現在、地球上の全陸地の約4分の1、乾燥地の約70%にあたる約36億haにおいて砂漠化が進行しつつあり、世界人口の約6分の1の人々がその影響を受けています。砂漠化の主な原因は、草地の再生能力を超えた家畜の放牧や休耕期間の短縮による地力の低下、薪炭材の過剰な採取、不適切な灌漑に起因する農地の塩分濃度の上昇等が考えられます。その背景には、開発途上国の地域住民の貧困と人口増加のような社会的経済的要因があり複雑な問題となっています。
海洋は、地球の全面積の4分の3を占め、世界の水資源の90%を保有し、重要な生物生産の場であるとともに、大気との相互作用により気候に影響を及ぼすなど地球上のすべての生命を維持する上で不可欠な要素となっています。近年、タンカーの航行や海底油田開発、またこれらの事故等によって海洋汚染が進み、海洋生物などに影響が出ることが懸念されています。
1980年代後半に入って、先進国で処分が困難な有害廃棄物が、より規制が緩く処理費用も安い開発途上国等へ輸出され、途上国において環境汚染を生ずるといった事件が多発しました。こうした有害廃棄物の越境移動問題は、先進国、開発途上国の双方を含んだ地球的規模での対応が必要です。
開発途上国においては、工業化や人口の急激な増大と都市への集中に伴い、大気汚染、水質汚濁等の公害問題が深刻化しています。また、東欧諸国や旧ソ連地域においては、環境保全対策を軽視した計画経済の下で深刻な公害問題が生じていました。このように地球全体でみた場合には開発途上国等の公害問題はもはや局所的に限定されたものとはいえません。ところが、これらの開発途上国等の多くは公害問題に十分対処していくだけの経済的、技術的、人的あるいは制度的基盤がなく、有効な対策を進めるためには先進国等の協力が不可欠となっています。
地球規模での環境問題に対する議論は、約20年間の歴史があり、これまでにも何度か、国際的な場において討議されてきました。
1987年に環境と開発に関する世界委員会は、その報告書「我ら共有の未来」(Our Common Future 邦題「地球の未来を守るために」)の中で「持続可能な開発」(Sustainable Development)を提唱しました。これは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことがない形で、現在の世代のニーズを満足させること」であり、「持続可能な開発は生態系を破壊することなく、かつすべての人々にとって妥当な消費水準を目指した価値観をつくり上げてはじめて可能となる。」と説明されました。
1992年には、「持続可能な開発」をキーワードに、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで、「環境と開発に関する国連会議」(UNCED)が開催されました。いわゆる、「地球サミット」です。
地球サミットは、地球環境問題の解決に向けた国際的な枠組をつくり、世界の環境と開発の問題の解決に向けての方向づけを行うため会議で、国連加盟国のほぼすべての約180カ国が参加し、そのうち、約100カ国から首脳又は元首が出席するという、例のないハイレベルかつ大規模なものとなりました。
地球サミットでは、持続可能な開発に向けての国際的合意を示す「環境と開発に関するリオ宣言」、「アジェンダ21」及び「森林原則声明」が採択されました。この他、「気候変動に関する国際連合枠組条約」や「生物の多様性に関する条約」への署名が行われました。
「環境と開発に関するリオ宣言」は、持続可能な開発を実現するための行動原則です。ここでは、環境と開発は対立するものではなく、環境と開発を統合する視点から議論が行われ、地球環境問題の責任については、先進国も開発途上国も共通して有するが、責任のとり方においては先進国と開発途上国は差異があると認識されました。
リオ宣言の諸原則を実行するための行動計画が「アジェンダ21」です。アジェンダ21では、大気保全、森林減少対策、砂漠化防止、生物多様性の保全、海洋保護、廃棄物対策等の具体的問題についてプログラムが示されるとともに、その実施のための資金、技術移転、国際機構、国際法のあり方等について規定されています。
アジェンダ21では、「地球サミットの効果的なフォローアップのために、ハイレベルな“持続可能な開発委員会”を、国連憲章第68条に従い設立すべきである。」とされました。これを受けて、1993年2月、国連経済社会理事会の下に「持続可能な開発委員会」(CSD)が設立され、現在のところ、1997年に開催が予定されている「国連環境と開発特別総会」に向けて、アジェンダ21の実施状況についての総括的な評価の作業が進められています。
我が国では、1993年12月に、アジェンダ21の国別行動計画である「アジェンダ21行動計画」が策定されました。これは「アジェンダ21」の章立てに応じた分野ごとに我が国が今後実施しようとする具体的な事項を行動計画としてとりまとめたもので、以下の項目について重点的に実施していくこととされています。
香川県は、白砂青松と多島美を誇る瀬戸内海、緑豊かな讃岐山脈、ため池や鎮守の杜が点在する讃岐平野など、豊かな環境に恵まれ、また温暖で少雨という瀬戸内海沿岸に特有の気候を有しています。そして、狭あいな県土において高度な土地利用が行われています。このような、自然的社会的条件の下、特色ある産業や文化が育まれ、私たちは生活を営んできました。
さて、地球環境の悪化は県民の生活や県内の産業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
本来、地球全体の気温とかオゾン層におけるオゾンの濃度などといった地球レベルの環境は、非常に長い時間をかけて変化するものですが、今日の地球環境問題がもたらす環境の変化は、過去に例がないほど急激なものであると予測されています。それは、かつて経験したことのない早さで変化し、さまざまな分野で深刻な影響がでる恐れがあります。たとえば、地球の温暖化であれば、気温の上昇などの気候変化によって陸上の生態系に変化が現れるでしょう。また、瀬戸内海においては、海水面の上昇によって干潟や藻場が消失する恐れがあるなど海域への影響も懸念されます。産業分野においては、特に気温など気候の影響を受けやすい農林水産業において影響が大きいと考えられます。地球環境問題は、今すぐに現象が見えるものではないため、なかなか実感が湧いてこない問題ですが、香川県という限られた範囲においても、徐々に、気候、生態系などに変化をもたらし、その結果、私たちの生活や、産業などにも深刻な影響を与えることになります。
これらの地球環境問題は、それぞれが別々に存在するわけではなく、互いに複雑に関係しあっています。そして、その多くが、私たちの生活様式や事業活動などを含めた今日の社会のしくみ自体に起因しています。地球環境を守るためには、私たちの暮らし方そのものを見直していく必要があり、私たちの日常生活に深く関わっている地域の役割が重要になってきます。そして、アジェンダ21の第28章では、「アジェンダ21で提起されている諸問題及び解決策の多くが地域的な活動に根ざしているものであるから、地方公共団体の参加及び協力が目的達成のための決定的な要素となる。」とし、地域における行動計画の必要性を示しています。
もともと、地球規模の環境問題と地域における環境問題との間に明確な境界があるわけではありません。たとえば、ごみの問題といえば、普通は地域の中の問題として考えられがちですが、家庭やオフィスから出た紙ごみや生ごみを処理することにより、地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタン等が発生します。それにもまして重要なことは、ごみの大量廃棄が、資源やエネルギーの大量消費の結果であるということです。ごみ問題は地球環境問題でもあります。
当然、対策についても、地域環境問題と地球環境問題の両方を解決する方向で考えていかなければなりません。現在、各地域で展開されているリサイクル活動は、その地域のごみ問題を解決するための一つの手段として行われていますが、同時に、温室効果ガスの発生を抑え、資源やエネルギーのむだ使いによる地球環境への負荷を減らすことから、地球環境保全にとっても効果的な手段といえます。
しかし、十分なリサイクルを行ったとしてもごみは出てきます。そのうち、燃えるごみについては、減量化のために、焼却施設で処理されます。ただ、焼却処分は、ごみを無害化して周辺の生活環境への影響を少なくしたり、最終処分量を減らして埋立処分場を長持ちさせることにはなりますが、地球の温暖化といった地球環境の観点からは、長い目で見れば、焼却せずに埋め立てた場合と比べてそれほど差がありません。この場合、ごみの焼却に伴って発生する熱エネルギーを有効に利用することが可能であれば、石油・石炭に代わる新しいエネルギー源として、焼却処分が地球環境保全に効果的な手段となります。
持続的発展が可能な社会を実現するためには、地域環境と地球環境とを分けて考えるのではなく、香川県の自然的社会的特性を十分に考慮した上で、地域を超えた地球的な視点でもって環境問題をとらえていかなければなりません。
そして、今後、県民、事業者、行政など県内すべての人々の参加により、地球にやさしく、また、人と自然とが共生する田園都市にふさわしい潤いと安らぎに満ちた地域づくりを進めていくことが必要です。
最近の環境問題は、従来の公害問題とは異なり、個別の発生源対策だけでは対応できないほど、複雑多様化しています。そこで、一人ひとりが、人々の様々な活動から環境への負荷が生じていることを認識して、経済社会システムのあり方や生活様式を見直し、事業活動や日常生活が環境に配慮したものとなるよう行動する必要があります。
地球の温暖化を例にとると、その主な原因は、経済的な利益や利便性の追求を最優先にした大量生産、大量消費、大量廃棄型の現代社会の構造そのものです。これは何も大企業とか工場といった一部の事業所に限ったことではありません。例えば、一般のオフィスや商店の通常の事業活動あるいは私たちの日常の生活の中で、必要以上の冷暖房や非効率的な輸送・移動手段によって大量のエネルギーが消費されます。これらのエネルギーのほとんどは、石油石炭等化石燃料の燃焼によって得られるものであり、その結果として二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に大気中に放出することになります。さらに、事業活動や日常生活の中で使われる紙、プラスチック等の多くがごみとして捨てられます。これらは、焼却や埋め立てによって処分されますが、その時にも二酸化炭素の放出、埋め立て用地の不足といった問題が生じます。
このように、私たちは、豊かで便利な生活を送るために普段あまり気がつかないうちに環境に対して負荷を与え続けています。そして、深刻な問題は、このように物質的な豊かさを求め続けた結果、限りある環境資源を私たちの世代で、今まさに使い切ってしまおうとしていることです。
この社会を持続可能なものとして、将来の世代へと引き継いでいくことは、私たちに課せられた義務です。そのためには、あらゆる社会活動の中に環境保全の要素を取り入れて環境に配慮した社会へと変えていかなければなりません。
私たちは、普段、社会のさまざまな場面の中で活動しています。たとえば、(i)家庭や職場といった日常生活、(ii)そのまわりの生活圏である地域社会、(iii)私たちの暮らしや地域を支えている社会システム、さらには、(iv)地域や国の枠を越える国際社会があり、それぞれに、共通したあるいは固有の環境問題があります。
そこで、「地球環境保全行動指針」では、地球環境保全に向け、次の4つを基本方向として21の具体的な行動指針を提案します。
私たちは、家庭や職場といった日常生活の中で、照明機器、エアコンなどのさまざまな電気製品や自動車を使うことによって、便利で豊かな生活を送っています。これらの工業製品は、製造や使用の過程でエネルギーが使用されています。このエネルギーの大半は、石油・石炭などの化石燃料を燃焼することによって得られており、その結果、大気中の二酸化炭素濃度の増加をもたらし、地球の温暖化を進めることになります。また、これらの製品を大量に生産することは、原材料となる資源の浪費につながり、将来、資源の枯渇等の問題が生じる恐れがあります。さらに、これらの製品は、使えなくなったり余ったりすると最終的にはごみとして廃棄され、今度はその処分の問題が生じます。
持続的発展が可能な社会を実現するためには、私たち一人ひとりが、地球環境問題に対して正しい認識を持ち、日常生活の中でエネルギーや資源の使用量をできる限り減らすなど環境への負荷を低減するよう努力し、環境にやさしいライフスタイルを確立していく必要があります。
私たちのまわりには、生活に必要な学校、病院、スーパーマーケット、工場、道路などのさまざまな都市施設があり、地域社会をつくっています。そこでは、大量の物質やエネルギーが消費され、大量の排気、排熱、廃棄物などが環境に排出されています。人間の活動による環境への影響を減らすためには、このエネルギーや資源の消費量をできる限り低減していくことが重要です。そのためには、交通や建物などといった地域における活動基盤を環境に配慮したものとするとともに、これまで捨てられていた熱を新たなエネルギー源として活用するなど、エネルギーや資源の有効利用を図っていかなければなりません。
また、私たちは、自然から多くの恵みを受けています。自然を守り、自然との共生を目指すことは、環境にやさしい地域づくりのために重要な要素です。そのために、地域の中の希少な動植物を保護し、生態系全体を健全な状態で維持していくとともに、自然と親しむための施設などの整備、都市の緑化などを行うことにより、私たちの暮らしと環境との健全な関わり合いが保たれる地域づくりを進めていく必要があります。
今、私たちのまわりには、ものがあふれています。これは、戦後の日本経済のめざましい成長によるものであり、そのおかげで、私たちは物質的に非常に豊かな暮らしを送ることができるようになりました。しかし、その裏には、地下資源や生物資源などを大量に採取し、利用したあとは不用物として環境に排出するという現代の経済社会のしくみそのものに関わる問題が存在します。今、この問題をそのままにしておけば、必ず、将来になってより深刻な問題としてふりかかってきます。今の世代の繁栄のツケだけを将来の世代へ回すことにもなりかねません。
そうならないためにも、今日の経済社会システム自体を環境へ配慮したものへと転換していく必要があります。まず、リサイクル型の社会を実現し、大量生産・大量消費・大量廃棄といった、いわば一方通行的な物の流れを循環型の物の流れに変えて、資源の採取と不用物の廃棄の量を減らすことが重要です。また、経済社会において重要な役割を果たしている事業者にあっては、持続的発展が可能な社会を実現するために、自らの活動を環境への負荷の少ないものへと変えていく必要があります。
熱帯林の減少、開発途上国の公害問題などの地球環境問題は、海外における環境破壊ですが、その原因の一つには、日本をはじめとする先進諸国が原材料を開発途上国から輸入することも含まれます。地球環境の保全という人類共通の課題に対応していくためには、自分たちの国や地域の利益だけを考えるのではなく、国際的な連携・協力のもとに対策を進めていかなければなりません。
香川県においても、環境の保全に関する技術及び情報の提供等により、地球環境の保全に関する国際協力の推進に努めていく必要があります。
この章では、4つの基本方向とそこから派生する主な行動指針を示しましたが、それぞれの行動指針が明確に4つの基本方向に区分されるわけではありません。たとえば、「環境にやさしいライフスタイルの確立」から派生する行動指針は、主としてライフスタイルの確立につながる行動を示すものですが、一部それ以外の「環境と共生する地域づくり」や「環境に配慮した社会システムづくり」にもつながる行動を含むことがあります。
私たちの社会は、住民、企業、行政機関などさまざまな主体によって構成され、それぞれ互いに異なった形で環境と関わっています。地球環境保全についても、各主体の環境との関わり方や社会の中での立場、役割に応じて考えていかなければなりません。
また、どの主体においても一つの限られた立場や役割から環境と関わっているわけではありません。私たち一人ひとりについても、会社に勤めていれば、仕事中は会社人として、家庭では住民としてというように、一日の生活の中でもいろいろな立場で行動しています。同じことが、企業や行政機関についてもいえます。例えば、製造業においても消費者としての立場もありますし、県や市町でも事業者や消費者としての立場も持っています。
この章では、第3章で提案された21の行動指針をさらに具体的に示します。その際、地域社会を構成する主体を大きく県民、事業者、行政の3つに分け、それぞれの主体が、今、地球環境保全のためにどのような行動を起こせばよいのかを考えていきます。
今日の私たちの暮らしや経済活動の多くは、石油石炭などの化石燃料から得られるエネルギーに依存しています。地球の温暖化を防止するためには、これら化石燃料の使用を抑えることが重要です。そのため、日常生活や事業活動のあらゆる分野でエネルギー利用を効率化し、一般の家庭やオフィスの中で節電その他の省エネルギー対策に取り組んでいく必要があります。
今日の経済社会において、交通・物流はたいへん重要な役割を担っています。しかし、環境を保全していくためには、交通・物流の合理化を図り、エネルギーの使用量や排出ガスの発生量を抑えていかなければなりません。日常生活の中では、公共交通機関を積極的に利用するなど環境への負荷の少ない移動・輸送手段にかえていく必要があります。また、自動車を利用する時には、経済的な運転や日常の点検整備など環境への配慮を怠らないように心がけるとともに、一人ひとりが交通流の円滑化や交通量を減らすために努力をする必要があります。
一つの製品が私たちの手元に届くまでには、原材料としての資源だけでなく、製造工程、原材料や製品の輸送の過程で大量のエネルギー資源が使われています。持続的発展が可能な社会を実現するためには、物質の循環をよりよくコントロールし、物質やエネルギーを有効利用することによって、限られた資源を、私たちの世代だけで使い切ることなく、将来の世代へと引き継いでいく必要があります。
現代社会では、大量の資源やエネルギーを使用し、大量の製品が製造され、大量に消費された後、ごみとして大量に廃棄されています。ごみの問題については、処分場の整備など地域の環境問題の中で大きな課題となっているだけでなく、焼却されたり埋め立てられた場合にも、二酸化炭素などの温室効果ガスを発生し、地球環境に負荷を与えることになります。環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の実現のためには、ごみの減量化について、真剣に取り組む必要があります。
普段、家庭や職場で何気なく使っている品物の中にも、使用中や使用後、あるいは製造段階において環境へ大きな影響を及ぼすものがあります。販売、消費活動において、可能な限り環境への影響の少ない商品が使われるよう販売者、消費者がそれぞれの立場から気を配っていく必要があります。
本県の河川は、地理的条件から流量が少ないこと、流域の人口密度が高いことなどにより汚濁されやすく、地先海域の瀬戸内海は閉鎖性水域であるため赤潮の発生等が見られます。このため、県民、事業者、行政がそれぞれの立場から排水の浄化に努め、河川、瀬戸内海の水質を改善することが必要です。
環境保全に取り組むための土壌づくりとして、職場、地域、学校などのあらゆる場面で環境学習、環境教育を進め、地域社会を構成する全ての主体が、環境問題に対する正しい知識と理解のもとに、それぞれ環境に配慮した行動をとっていくことが必要です。
中でも、学校における環境教育は、将来を担う子どもたちが、現在の社会が抱えている環境問題を認識し、今後の環境に配慮した社会生活を営んでいく上での基礎を養うことになるので特に重要です。
今日の環境問題を解決していくためには、地域環境を保全することが地球環境の保全につながるという認識のもと、地域社会を構成する全ての主体が、自主的かつ積極的に地域における環境保全に取り組み、その活動の輪を広げていくことが必要です。
環境にやさしい都市づくりのためには、住まいやオフィスビルなどの建物自体を環境に配慮したものへと変えていかなければなりません。そのため、環境に配慮した住宅や建築設備の導入、環境に配慮した公共施設の整備、環境に配慮した建築物の開発、普及を進める必要があります。
交通輸送分野、特に自動車は、大気中の二酸化炭素の増加に大きな影響を与えています。また、窒素酸化物の排出による都市の大気汚染や酸性雨への影響も考えられます。これらを低減させるために、公共交通機関の利用を促進するための施設の整備、輸送・配送システムの情報化、共同・計画輸送などによる効率化や交通渋滞の緩和といった環境に配慮した交通物流体系の整備を図る必要があります。
化石燃料の使用量を低減させるためには、電力などのエネルギーを効率的に利用するほか、ごみ焼却施設からの排熱などの未利用エネルギーや太陽光などの自然エネルギーの利用、あるいは地域熱供給などエネルギー供給形態を見直すことによってより効果的なエネルギー対策を進める必要があります。
降水量が少なく、大きな河川もないという香川県の自然的特性を踏まえて、節水や水の有効利用に努めなければなりません。
そのためには、普段の生活や事業活動の中で節水を心がけたり、これまであまり利用されていなかった下水処理水の再利用や雨水等の有効利用を進めていくことが必要です。
森林は、木材生産、山地災害防止、水源かん養、二酸化炭素の吸収、大気の浄化などの機能を持つほか、多様な生物を育み、さらに、私たちの生活の中で森林との様々な関わりが保たれることにより、私たちの生活自体を豊かなものにする効果があります。こうしたことから、このような森林の持つ多種多様な機能が高度に発揮できるよう、森林の保全と整備を図る必要があります。
熱帯林の減少に対しては、商業材の輸入などにより、我が国も影響を及ぼしています。開発地域への配慮はもとより、熱帯材を使った製品、資材についてはその合理的使用に努めるなどの熱帯林の保護対策を進める必要があります。
都市などの生活空間にあるみどりは、快適な空間をつくり出すためだけでなく、二酸化炭素の吸収により温室効果を緩和させるとともに、蒸散により、周囲の気温を引き下げるなど都市気候を緩和する効果なども有しています。このため、現在あるみどりを守るだけでなく、これを積極的に増やしていくことが必要です。
希少な野生動植物の生息・生育地を保護するとともに、生態系全体の調和を考慮に入れて多様な生物が生息・生育できる環境を整えていかなければなりません。また、私たちの生活環境と生態系との調和を図り、常に野生生物との健全な関係を保つことのできる地域社会を形成する必要があります。
さらに、自然環境とのふれあいは、私たちの生活を豊かなものにする効果もあることから、身近な自然環境に接し、自然環境を保全する気持ちを養っていく必要があります。
地球環境問題は、現代の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造自体が原因となっており、その解決策の一つとして、省資源や廃棄物の減量化の観点から、身近なごみであるびん、缶など容器包装材を含めた廃棄物全般のリサイクルを促進することは、重要な課題となっています。リサイクルルートの確立やリサイクルしやすい製品の開発・規格化に取り組むとともに、消費者の立場からも、不用品をリサイクルに出したり、進んでリサイクル製品を使用するなどリサイクル意識の定着に努める必要があります。
ごみは、その排出を抑え、可能な限り資源化を行ったとしても、どうしても焼却処理や埋立処分をしなければならないものが残ります。生活環境の保全を図る観点から、こうした最終的に処理・処分しなければならないものについては適正処理の一層の推進を図って行く必要があります。
フロンによるオゾン層の破壊の問題は、地球環境問題の中でも最も早く対策が進んでいます。オゾン層保護のための条約が締結され、オゾン層を破壊する物質の生産が順次中止されてきており、これからは、既に生産されているフロンの大気中への放出を防ぐことを中心に対策を進めていく必要があります。
酸性雨の問題については、県内における環境モニタリングや生態系への影響などについての調査を進めるとともに、工場からのばい煙や自動車排ガスなど酸性雨の原因物質の排出を抑えていく必要があります。
持続的発展が可能な経済社会システムを構築するためには、事業活動が環境へ与える影響を低減しなければなりません。それには、まず環境配慮型の企業経営に向けて社内の体制から変えていくことが重要です。環境への負荷の少ない商品の開発・生産・販売、環境にやさしい技術の開発など、事業活動による環境への負荷をできるだけ低減していく必要があります。
農林水産業は、他の産業とは異なり、生産力の基礎を自然の物質循環の中においているため、その適切な生産活動を通じて水田など農地の持つ水源かん養などの環境保全能力を維持するとともに、農薬・化学肥料の使用などによる環境への影響をできる限り抑えていくことが必要です。
また、土壌消毒用の臭化メチルについては、その使用がオゾン層の破壊につながることから、早急に使用量削減のための対策を進めていく必要があります。
地球環境問題の解決には、国際的な取組も重要な要素の一つです。これまでに培った公害防止技術などの海外移転、研修制度などにより、開発途上国の環境保全技術の向上に協力し、そのための人材の整備も進めていくことが必要です。
地球環境保全行動指針を実効あるものとしていくためには、ここに盛り込まれた行動指針に基づき、県民、事業者、行政が、それそれの役割に応じて、自主的に行動を起こすとともに、県民、事業者、行政が協力して地球環境の保全に取り組んでいく必要があります。
このため、県では、県民、事業者、行政が一体となって地球環境保全行動指針の推進を図るため、次のような取組を行います。
県民、事業者、民間団体に対し、地球環境保全行動指針の周知を図るとともに、地球環境保全に関する情報の提供など、県民等による自主的な行動が推進されるよう努めます。
県民と最も身近な関係にある市町との連携を保ちながら対策を推進するとともに、市町が実施する環境保全への取組を支援します。
地球環境問題に関する全庁的な取組を進めるため、庁内関係各課で構成する「環境・土地利用調整協議会地球環境部会」を中心に、県事業の推進状況についての把握や関連する施策間の連携を図るとともに、県が取り組むべき課題、方針等を検討し、総合的な取組を進めます。
地球温暖化対策、酸性雨対策、瀬戸内海の環境保全など広域的な課題については、国や他の自治体との連携を図りながら取組を進めます。
地球環境の保全に関する各種の施策を効果的に推進するため、市町、事業者、県民、民間団体との協力体制に整備に努めます。
地球環境保全行動指針について、普及・啓発版の作成・配付などにより継続的に周知を行い、実施の輪を広げていきます。特に、環境教育・環境学習の場において、普及・啓発に努めます。
地球環境保全行動指針は、地球環境の保全に関する取組状況、社会情勢の変化、対策技術の進展なども踏まえ、適宜、必要な見直しを行います。
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