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公開日:2020年12月10日

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外形標準課税Q&A 全体事項

全体的事項

Q1 外形標準課税の対象となる法人は、どのような法人ですか。

A

資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人が対象となります。ただし、公共法人、公益法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は除きます。

また、資本金の額又は出資金の額が1億円を超えるかどうかの判定は、各事業年度終了の日の現況によって判定します。仮決算に基づく中間申告を行う場合は、その事業年度開始の日から6月の期間の末日、清算中の法人については、その解散の日の現況によって判定します。(法72の2)

Q2 課税標準額を支払・受取ベースで算定してもよいですか。

A

各事業年度の報酬給与額、支払利子又は支払賃借料は、原則として、法人が支払う給与、利子又は賃借料のうち当該事業年度の法人税の所得の計算上損金の額に算入されるものに限られます。また、各事業年度の受取利子又は受取賃借料は、法人が支払いを受ける利子又は賃借料のうち当該事業年度の法人税の所得の計算上益金の額に算入されるものに限られることから、報酬給与額等が帰属する事業年度は、原則として、法人の所得の計算上損金又は益金の額に算入した事業年度と一致することになります。(法72の15、法72の16、法72の17)

よって、法人税の所得の計算上、損金または益金の額に算入する額と、支払・受取額が異なる場合は、調整を行う必要があります。

また、入出向者に係る負担金の支払又は受取を行っており、報酬給与額を給与台帳から抽出している場合において、入出向者の負担金に係る調整がなされていない事例が多く見受けられました。負担金(退職給与その他これに類するものを除く。)を支払っている場合、当該支払額を報酬給与額に加算する必要があります。逆に、負担金(退職給与その他これに類するものを除く。)を受け取っている場合、報酬給与額から減額する必要がありますので留意してください。

ただし、棚卸資産、有価証券、固定資産又は繰延資産に係るものについては、損金算入される事業年度ではなく、法人が支出する事業年度に報酬給与額、支払利子又は支払賃借料として計上することとされています。(令20の2)

Q3 いわゆるJV(共同企業体)の課税標準は、どのように算定しますか。

A

JVの各事業年度の給与、利子又は賃借料については、その出資割合(分配割合)に基づいて各組合員に分配したものを、各組合員の報酬給与額、純支払利子又は純支払賃借料として取り扱うこととされています。(取扱通知4の1の4)

また、JVにおいて協定給与が締結されている場合で、各組合員である法人が給与として自社からJVへの派遣職員に実際に支払った額と協定給与の額に差額が生じるときは、各組合員の報酬給与額にその差額分を加減算することとされています。(取扱通知4の2の16)

JVが構成されている場合には、以上のような取扱いに基づいて課税標準を算定しますが、これらの調整を行わず、給与については、自社からJVへ派遣した職員に支給した給与等をそのまま課税標準に含めている事例が見受けられます。また、利子、賃借料については、JVの幹事社である場合に、一旦費用化した賃借料等をそのまま課税標準に計上したり、あるいは、JVで発生した利子、賃借料は課税標準には反映させなかったりする事例が見受けられます。

経理方法の違い等により、全てが当てはまるわけではありませんが、自社からJVへ派遣した職員に支給した給与等を課税標準に含めて、それ以外の調整をまだ行っていない場合に必要な調整は以下のとおりになります。

  1. 自社からJVへ派遣した職員に支給した給与等(A)を課税標準から控除する。
  2. JVにおける給与等(協定給与の定めがある場合は、協定給与の積み上げ)を出資割合により各構成員に帰属させた額(B)を課税標準に計上する額の基礎とする。
  3. 協定給与の定めがある場合は、協定給与の額(C)と実際支給額(A)との差額を加減算する。

したがって、以上を計算式化すると、「-(A)+(B)-((C)-(A))」=「(B)-(C)」となり、(B)と(C)が分かれば、調整が可能であると考えられます。

Q4 外国に事務所がある場合、どのように取り扱いますか。

A

外国に支店・出張所・営業所、工場等(恒久的施設「PE」)を置いて事業を行っている場合、所得と同様に付加価値額・資本金等の額についても外国の事業に帰属する額を控除して算定する必要があります。(取扱通知4の10)外国の事業に帰属する所得のみを区分して申告していた事例がありましたので留意が必要です。

外国に事務所等がある場合でも、資産の購入・保管のためにのみ使用する場所や、広告・宣伝・市場調査等補助的な活動のみを行う場所についてはPEとして取り扱わないことになっています。この場合、国外分付加価値額・資本金等の額を算定して控除する必要はありません。

海外事務所等がPEに該当する場合、国内分付加価値額の算定は以下のように行います。

  • 国内事業と国外事業を区分計算している場合
    付加価値額総額(全世界付加価値額)-区分計算した国外分付加価値額
  • 区分計算を行っていない場合 従業者数按分により算定

付加価値額算定方法

※雇用安定控除は国内分付加価値額を算出した後に行います。

資本金等の額については、付加価値額総額のうちに上記により算定した国外分付加価値額の占める割合で計算した額を控除することになります。

資本金等算定方法

※付加価値額は雇用安定控除前のものです。

ただし、付加価値額で区分計算を行っている法人は、国外分付加価値額が0以下の場合、国内分付加価値額が0以下の場合又は付加価値総額に占める国内分付加価値額の割合が50%未満の場合は従業者数按分により算定します。

(「事業税における国外所得等の取扱いについて」(平成16年4月1日総税都第16号))

Q5 消費税の免税事業者の場合、消費税をどのように取り扱いますか。

A

報酬給与額、純支払利子又は純支払賃借料の計算に当たっては、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を除いた金額を基礎として計算することとされています。(取扱通知4の1の3)

消費税法第9条第1項に規定する免税事業者であっても、仕入れの際は消費税等が含まれていますので、例えば支払賃借料が110万円(税込)であれば、消費税等相当額10万円を控除した100万円が純支払賃借料の対象になります。

しかし、免税事業者が受ける賃借料等には、課されるべき消費税等が存在しないものと解されますので、当該受取額の全額が純支払賃借料の対象になります。

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報酬給与額

Q6 通勤手当は、報酬給与額に含めますか。

A

通勤手当のうち報酬給与額とされないものは、所得税において非課税とされる額に相当する金額とされています。(取扱通知4の2の8)

したがって、所得税の非課税限度額を超えて支払われる通勤手当については報酬給与額に含めることになります。

次のような場合において、課税標準額を誤って算定している事例が多く見受けられましたので留意してください。

課税標準額の誤算定事例
  事例 経理方法 留意点
1 費用(資産)計上した通勤手当を基に、給与台帳から抽出した非課税通勤手当を控除して算出した場合。 税込経理 課税通勤手当に係る消費税等が含まれているため、課税標準額が過大になっています。課税通勤手当に係る消費税等を控除してください。
2 税抜経理 給与台帳の非課税通勤手当には消費税等が含まれているため、課税標準額が過少になっています。
非課税通勤手当に係る消費税等を加算してください。
3 出向負担金に通勤手当が含まれている場合。 - 出向負担金についても、通勤手当のうち非課税部分については報酬給与額の対象となりません。
負担金額から非課税通勤手当部分を控除してください。

Q7 宿日直手当は、報酬給与額に含めますか。

A

報酬給与額には、原則として所得税において給与所得又は退職所得とされるものが含まれ、所得税において非課税所得、事業所得、一時所得とされるものは含まれません。(取扱通知4の2の3)

したがって、所得税において非課税限度額内の宿日直手当は報酬給与額に含めないことになります。

なお、実務においては、通勤手当が独立した勘定科目又は補助科目となっていることが多いのに対して、宿日直手当は、給与又は諸手当等の科目に含まれていることが多いので、当該科目から抽出して非課税部分を控除する必要があります。

Q8 永年勤続記念品等の支給は、報酬給与額に含めますか。

A

使用者が永年にわたり勤務した役員又は使用人の表彰に当たり、記念として旅行、観劇に招待し、又は記念品を支給することによりその役員又は使用人が受ける経済的利益で、所得税において非課税とされる部分については報酬給与額には含めません。

金銭で支給する永年勤続者の表彰金については、額にかかわらず、給与所得として所得税上課税されることになります。

よって、所得税上給与所得として課税される永年勤続記念品及び表彰金については報酬給与額に含めます。

Q9 従業員に支給する報奨金は、報酬給与額に含めますか。

A

報奨金のうち、所得税において給与所得となる部分については報酬給与額の対象となります。

多く見受けられる報奨金についての取扱いについては次のとおりとなります。

  1. 業務上有益な発明、考案又は創作をした人に対して、その発明、考案又は創作に関する特許権などを会社に承継させることにより支払われる報奨金等
    譲渡所得又は雑所得となるため報酬給与額に含まれません。
  2. 事務・作業の合理化、経費節減などの考案をした者に対して支払われる報奨金等
    その考案等がその人の通常の職務の範囲内でなされたものである場合、給与所得となるため報酬給与額に含まれますが、その他の場合、一時所得又は雑所得となるため報酬給与額に含まれません。
  3. 災害等の防止又は発生した災害等による損害の防止などに功績のあった人に対して一時に支給する報奨金等
    その防止などがその人の通常の職務の範囲内である場合には、給与所得となるため報酬給与額に含まれますが、その他の場合については、一時所得となるため報酬給与額には含まれません。

Q10 産業医報酬は、報酬給与額に含めますか。

A

産業医の委嘱先が開業医(個人)である場合、その報酬は原則として所得税法上給与所得に該当しますので、報酬給与額の対象となります。

一方、産業医を医療法人に委託している場合は、その報酬は給与所得に該当しませんので対象にはなりません。

なお、産業医報酬は「福利厚生費」勘定等で計上されることが多く、申告漏れになる場合が多いので留意してください。

Q11 外国人技能実習生に支給する講習手当は、報酬給与額に含めますか。

A

講習手当とは、講習期間中の日本での生活に必要な食費や諸雑費などの実費として技能実習生に支払われるものです。講習については雇用契約に基づく労務の提供に該当しないため、報酬給与額の対象にはなりません。

なお、講習終了後の技能実習は、雇用契約に基づく労務の提供になるため、その対価は報酬給与額の対象となります。

Q12 歩合制で契約している外務員・外交員などの報酬は、報酬給与額に含めますか。

A

報酬給与額には、原則として所得税において給与所得又は退職所得とされるものが含まれ、所得税において非課税所得、事業所得、一時所得とされるものは含まれません。(取扱通知4の2の3)

したがって、外務員・外交員などに対する報酬について、固定報酬があるなど所得税において給与所得とされる場合(部分)は報酬給与額に含まれますが、歩合報酬部分などで事業所得とされる場合(部分)は報酬給与額に含まれません。

Q13 いわゆるマネキン紹介所から紹介を受けたマネキンに対する支払いは、報酬給与額に含めますか。

A

法人がデパート等に商品を納入している場合、そのデパート等の売り場にマネキン紹介所から紹介を受けたマネキンと呼ばれる販売店員を派遣することがあります。このマネキン紹介業は有料職業紹介事業に当たり、マネキン紹介所は自らマネキンを雇用することなく、依頼者の求めに応じてマネキンを斡旋し、その手数料を受け取ります。マネキンとの雇用関係は、マネキン紹介所との間に存在するのではなく、紹介を受けた法人とマネキンとが直接雇用契約(口頭契約を含む。)を締結することになります。

よって、マネキンに対する支払いは給与所得となり、報酬給与額に含めることになります。

また、マネキン紹介所を経由して賃金を支払う場合が見受けられますが、この場合マネキン紹介所に支払った金額に紹介手数料が含まれていることがあります。当該手数料は報酬給与額の対象となりませんので留意してください。

Q14 国外で長期にわたり勤務している社員で、所得税法上非居住者となっている者への給与は、報酬給与額に含めますか。

A

所得税法上、国外にその源泉がある非居住者の給与は課税されませんが、当該給与は、雇用関係又はこれに準ずる関係に基づいて提供される労務の提供の対価としての性格を持つものであることから、報酬給与額となります。

報酬給与額を所得税徴収高計算書の俸給・給料等欄から抽出している場合、非居住者に係る給与が申告漏れとなっている事例が見受けられましたので留意してください。

なお、実費弁償の性格を有する手当等を支給しているときは、当該手当等の額は、報酬給与額に含めません。(取扱通知4の2の4)

Q15 労災休業補償の給付は、報酬給与額に含めますか。

A

所得税法上、休業補償は特殊な給与の取扱いのひとつに挙げられており、労働基準法第76条第1項《休業補償》の規定により受ける休業補償以外にも、労働基準法第8章《災害補償》の規定により受ける療養の給付や費用、障害補償、打切補償等も非課税とされています。(所得税法施行令第20条(非課税とされる業務上の傷害に基づく給付等))

また、労働基準法で定められている平均賃金の100分の60を超えて休業補償を行った場合や会社が行う休業開始から3日間の休業補償も課税されないことになっています。

報酬給与額には、所得税において給与所得又は退職所得とされるものが含まれ、所得税において非課税所得、事業所得、一時所得とされるものは含まれませんので、休業補償は報酬給与額に含めないことになります。(取扱通知4の2の3)

なお、実務においては、給与と一緒に振込みがなされ、給与台帳の総支給額に含まれていたため、支給額をベースに課税標準を算定する場合に控除漏れとなっていた事例もありましたので、留意してください。

Q16 障害者雇用調整金は、報酬給与額から減額できますか。

A

国や地方公共団体から、雇用対策等として給与相当分の補助金を受けている場合であっても、労務の提供の対価として支払われるものではないことから、報酬給与額とされるのは法人が支出した給与額となります。

したがって、補助金相当分の金額は報酬給与額から減額できません。これ以外にも委託料等の名目で給与相当分の補助金を受けている事例が見受けられますが、これらについても報酬給与額から減額することはできません。

Q17 事業承継会社に支払った退職金は、報酬給与額に含めますか。

A

法人が、事業の一部を別会社に譲渡し社員が転籍する場合があります。この場合の取扱いは入出向の場合と同様、給与については実質的負担者、退職給与等については形式的支払者の報酬給与額となります。(取扱通知4の2の14)

したがって、転籍した社員のために内部留保していた退職給付引当金を取崩して転籍先法人に支払った場合、転籍元法人の報酬給与額にはなりません。

なお、転籍する際に、同社員に対して退職金として支給した場合は転籍元法人の報酬給与額となります。

Q18 死亡した社員や役員の遺族に支払われる弔慰金は、報酬給与額に含めますか。

A

報酬給与額の対象となるものは、原則として給与所得または退職所得であり、かつ、法人税の所得計算上損金算入されるものですが、死亡した者に係る給料・退職金等で遺族に支払われるものについては、その性格が給与としての性格を有すると認められることから、所得税において給与所得又は退職所得とされない場合であっても、報酬給与額として取り扱うこととしています。(取扱通知4の2の3)

具体的には、以下のとおり、弔慰金のうち相続税において死亡した者に支給されるべきであった退職手当金等に該当するものは報酬給与額の対象となります。

弔慰金取扱い

Q19 退職一時金制度から確定拠出企業年金制度への移換に伴う掛金は、報酬給与額に含めますか。

A

退職一時金制度から確定拠出年金制度への資産移転に伴う掛金の額については、過去部分の積立資産を数回に分けて、「未払金」又は「長期未払金」勘定等の取崩により支払われ、その年度の移換額が法人税申告書別表4で減算され損金となるということが想定されます。

当該移換金は、地方税法施行令第20条の2の3第1項第3号に規定する確定拠出年金法第54条第1項の規定により移換する同法施行令第22条第1項第5号に掲げる資産に該当することになりますので、報酬給与額に含める必要があります。

Q20 厚生年金基金の掛金は、どの部分を報酬給与額に含めますか。

A

厚生年金基金の掛金について、報酬給与額の対象となるのは、法人が事業主として基金に拠出する掛金及び徴収金ですが、いわゆる代行部分については報酬給与額には含めません。

実際の算定においては、事業主が厚生年金基金に対して拠出した掛金の総額から、代行部分を控除して算出します。代行部分の額については、厚生年金基金を設立しなかった場合に厚生年金保険料として払い込むべき額から、実際に厚生年金保険料として払い込む額を控除した額の2分の1に相当する額となります。(取扱通知4の2の9(7))

なお、年金基金の事務費に充てるための事務費掛金や、福祉施設事業に充てられる福祉施設掛金については、報酬給与額には含めません。(取扱通知4の2の12)

厚生年金基金の掛金については、拠出金の全額(事業主負担分)を「法定福利費」勘定等で一括計上している場合がありますが、申告に当たっては、厚生年金基金の掛金率表や毎月の掛金計算書によって、対象外の代行部分や事務費掛金等を確認し除外する必要があります。

厚生年金掛金

基本標準掛金に代行部分及び付加部分が含まれており、付加部分、加算部分は全額事業主負担で、基本標準掛金の内訳が事業主負担800,000円、加入者負担600,000円の場合

  • 代行部分 1,200,000円(労使折半)
  • 付加部分 200,000円(1,400,000-(600,000×2))
(第6号様式別表5の3に記載する金額)
役員または使用人のために支出する掛金等 (↓参考:積算方法等)
厚生年金基金の事業主負担の掛金及び徴収金 8-9 7 540,000 200,000(付加部分)+300,000(加算標準掛金)+40,000(加算特別掛金)
  事業主として負担する掛金及び負担金の総額 8 1,140,000 1,900,000-160,000(事務費等)-600,000(加入者負担分)
代行相当部分 9 600,000 1,200,000×1/2

※掛金の内訳、負担率は基金ごとに違いますので、契約書等で確認してください。

Q21 適格退職年金の掛金は、どのように算定しますか。

A

適格退職年金として報酬給与額となるのは、適格退職年金契約に基づいて受益者等のために事業主が支出する掛金及び保険料です。

適格退職年金に係る掛金は、通常、純保険料と付加保険料からなっています。ここで、純保険料とは純粋に積立にまわる保険料、付加保険料とは生命保険会社の事務費等ですので、付加保険料を除いた額を課税標準として捉えてください。(取扱通知4の2の9、4の2の12)

なお、生命保険会社等から、年度終了後、通知書(純保険料、付加保険料及び外形標準課税で課税対象となる額を明示した書類)が送付されている場合もありますので参考にしてください。

Q22 退職給付引当金や賞与引当金の取り崩しによる支給は、報酬給与額に含めますか。

A

報酬給与額は、法人税の所得の計算上損金の額に算入されるものが対象になります。(法72の15①)

したがって、引当金勘定を取り崩して賞与や退職金を支給する場合においては、賞与や退職金として法人税申告書別表4で減算し、損金算入された額が当該事業年度において報酬給与額に含まれることなります。

なお、退職給付引当金や賞与引当金への繰入額で、法人税申告書別表4で加算した額は、当該事業年度の損金の額に算入されませんが、報酬給与額に含まれていた事例が見受けられましたので、留意してください。

Q23 入出向負担金に退職給付費用がある場合、報酬給与額に含めますか。

A

出向があった場合の出向者の退職給与その他これに類するものについては、形式的支払者の報酬給与額とすることとされています。(取扱通知4の2の14)

したがって、出向先法人が出向元法人に対して、出向期間中の退職給付費用(一時金)を負担するために負担金を支払った場合には、当該負担金は出向先法人の報酬給与額としては取り扱いません。出向元法人においては、受け取った退職金負担金を報酬給与額からマイナスすることはできません。実際に出向者に退職金を支払う事業年度において、当該退職金が出向元法人の報酬給与額になります。

一方、出向元法人が適格退職年金、確定給付企業年金契約等を締結しており、その出向者にかかる掛金、保険料等の額(過去勤務債務等に係る部分を含む)を出向先法人が負担した場合は、当該金額は出向先法人の報酬給与額として取り扱うこととなります。退職給付費用の負担金として一時金と掛金等の両方を負担している場合、内訳書等で掛金等の部分だけを抽出して申告する必要があります。

なお、出向元法人に退職金前払い制度があり、前払退職金相当額を出向先法人が負担している場合がありますが、前払退職金は所得税法上給与所得として取り扱われているので、上記一時金の場合に該当せず、実質的負担者である出向先法人の報酬給与額として取り扱います。

Q24 シルバー人材センターから派遣を受けた場合、派遣料は報酬給与額に含めますか。

A

シルバー人材センターとの契約は、一般的に請負又は委任に当たると考えられますので、その派遣料は労務の提供の対価ではなく仕事の完成に対する対価であることから報酬給与額に含まれません(Q25の名目上の請負契約となる場合を除く。)。(取扱通知4の2の5)

ただし、シルバー人材センターが労働者派遣事業の許可等を受け、契約内容が労働者派遣法第26条第1項に規定する労働者派遣契約に当たる場合は、派遣料の75%に相当する金額が報酬給与額になりますので留意してください。(取扱通知4の2の15)

Q25 雇用契約ではなく、委託契約や請負契約に基づき支払っている場合、報酬給与額に含めますか。

A

報酬給与額とは、雇用関係又はこれに準ずる関係に基づいて提供される労務の提供の対価として支払われるものをいいます。(取扱通知4の2の1)

よって、請負契約等に基づいて支払う代金は、労務の提供の対価ではなく、委託された事務をこなすこと又は仕事の完成に対する対価であることから、報酬給与額には含まれません。

ただし、請負契約に基づいて支払う代金であっても、仕事を請け負った法人の従業者と注文者である法人が雇用関係又はこれに準ずる関係にあると認められるとき(名目上の請負契約)は、注文者である法人の報酬給与額として取り扱うことになります。(取扱通知4の2の5)

名目上の請負契約に該当するか否かは、契約形式ではなく、技術指導、指揮命令、労働時間管理を注文者側で行っているか等、実態に基づき総合的に判断することになりますが、その判断に当たっては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)」や「労働基準法の『労働者』の判断基準について(昭和60年・労働省労働基準法研究会報告)」を参考にして下さい。

また、名目上の請負契約に該当する場合は、労働者派遣法に基づかない派遣と同様に、労働者派遣法に基づく労働者派遣の役務の提供に当たりませんので、契約代金の75%とする計算方法は適用されず、全額が報酬給与額に含まれます。

なお、契約代金のうち、労務の提供の対価に相当する金額とその他費用等が明確かつ合理的に区分されている場合は、その他費用等は報酬給与額から控除されることになります。

Q26 派遣労働者を受け入れた場合、支払う交通費は報酬給与額に含めますか。

A

派遣契約料とは、労働者派遣法第26条第1項に規定する労働者派遣契約に基づく労働者派遣等の役務の提供の対価として派遣元法人に対し支払う額をいい、この派遣契約料に旅費等が含まれている場合には、これも含めることとされています。(法72の15②、取扱通知4の2の15(1))

したがって、派遣契約に基づき派遣元法人に対して支払われる交通費・旅費・宿泊費・日当等は、消費税等相当額を控除した額に75%を乗じた額が派遣先法人の報酬給与額になります。(取扱通知4の1の3)

なお、派遣元法人が派遣労働者に係る交通費等を立替払いした場合においても、派遣契約に基づき派遣元法人に対して支払われる場合は、派遣先法人の報酬給与額になります。

Q27 所得税に係る税務調査において、新たに給与所得と認定された手当等がある場合、外形標準課税に影響はありますか。

A

報酬給与額は、原則として、所得税において給与所得又は退職所得とされるものが対象となります。(取扱通知4の2の3)

所得税に係る税務調査の結果、赴任手当等が新たに給与所得として認定された場合は、外形標準課税においても課税対象となりますので、報酬給与額に含めていないときは、自主的に加算して修正申告を行う必要があります。

なお、法人が役員又は使用人に対して廉価で社宅を賃貸している場合において、その経済的利益が給与所得として課税されても、法人が支払う賃借料及び役員又は使用人から受け取る賃借料は、純支払賃借料として取り扱われます。

よって、当該給与所得は、報酬給与額として取り扱わないことに留意が必要です。(取扱通知4の2の6(2))

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純支払利子

Q28 金利スワップ取引にかかる利息は、支払利子に含めますか。

A

金利の変動に伴って生ずるおそれのある損失を減少させる目的で法人税法第61条の6の規定により繰延ヘッジ処理を行っている場合又は特例金利スワップ取引等(法人税法施行規則第27条の7第2項に規定する取引をいう。)を行っている場合の支払利子の額は、当該取引等に係る受払額のうち、当該金利スワップ取引等の対象となった資産等に係る支払利子の額に対応する部分の金額を加算又は減算した後の金額とすることとなっています。(取扱通知4の3の3)

例)固定金利2%で借入れを行い、当該借入について変動金利で特例金利スワップ取引を行って、変動金利が3%の場合
金利スワップ
この場合、実質負担金利3%(借入金金利2%+スワップ取引で支払う金利1%)が支払利子の対象となります。

 

Q29 利子税・延滞金は、支払利子に含めますか。

A

利子税は支払利子に含めますが、延滞金については、法人住民税・法人事業税に係る納期延長の場合の延滞金が、約定利息としての性質を有し、かつ、法人税の所得の計算上損金の額に算入されることから、支払利子の対象になります。(取扱通知4の3の1(12))

これらは、「支払利息」勘定ではなく、「租税公課」や「雑損」等の勘定科目に計上されることが多く、申告漏れとなる場合がありますので留意してください。

 

Q30 手形割引料は、支払利子に含めますか。

A

手形割引料は、受取手形を支払期日前に現金化することにより金融機関等から割り引かれるものです。経済的な性質が利子に準ずるものとして支払利子となります。

買掛金を手形によって支払った場合において相手方に対して当該手形の割引料を負担した時における当該負担した割引料も支払利子となります。(取扱通知4の3の1(6))

なお、買い戻し義務を負わない支払無担保裏書手形を譲渡する際の割引手数料については、支払利子に含まれません。

Q31 いわゆるファクタリング契約における手数料は、支払利子に含めますか。

A

ファクタリング契約における手数料は、償還請求権(買戻義務)のないものについては、資産の譲渡に伴って発生した譲渡損であり、支払利子として計上する必要はありませんが、償還請求権(買戻義務)があるものについては、実質的に金融取引であり、金利の調整とされる部分の金額は支払利子となります。(法72の16②、令20の2の6)

なお、債権を買い取るファクタリング会社からみた場合、その取得差額の全部又は一部が金利の調整により生じたものと認められるときには、その認められる部分の金額は受取利子になります。(取扱通知4の3の11)

Q32 借入を行う際、銀行等に支払う保証料は、支払利子に含めますか。

A

銀行や信用保証協会等に支払う保証料は、支払利子として計上する必要はありません。

保証料を「支払利子」勘定に計上しているにもかかわらず、同勘定残高を申告額としている事例が見受けられました。その場合は、「支払利子」勘定残高から保証料を控除した額を申告額とすることに留意してください。

Q33 リース譲渡契約における利息相当分は、支払利子又は受取利子に含めますか。

A

リース譲渡契約で資産を購入又は販売した場合、当該資産に係る割賦期間分の利息相当額が、契約書等において、物品の購入代価又は販売代価と明確かつ合理的に区分されているときには、利息相当額を支払利子及び受取利子として取り扱うこととされています。(取扱通知4の3の4)

 

Q34 資産の売買があったものとされるリース取引にかかる利息の取扱いは、どうなりますか。

A

法人税法64条の2第1項の規定によりリース取引の目的となる資産の売買があったものとされるリース取引に該当する場合には、賃貸人による取得価額と利息相当額が明確かつ合理的に区分されているときに、当該利息相当額が支払利子及び受取利子として取り扱うものとされています。(取扱通知4の3の5)

このとき、契約書に利息相当額の区分がない場合でも、会計処理において、合理的な見積金額により、リース資産の取得価額と利息相当額を区分し、会計処理に沿った法人税の取扱いにより利息相当額が区分され、損金の額または益金の額に算入される場合には、支払利子又は受取利子に含めることになります。具体的な取扱いは以下のとおりとなります。

借手(賃借人)
  会計処理(法人税は会計に沿った処理を認める。)
利息区分あり 利息区分なし 賃貸借処理
利息法 定額法
契約書・利息配分表 利息区分あり × ×
利息区分なし × ×

○…支払利子の対象とする。×…支払利子の対象としない。

貸手(賃貸人)
  会計処理(法人税は会計を踏まえ長期割賦販売処理)
利息相当額の配分
定額処理 利息法 例外処理
(20%相当額)
法令124①一 法令124①二 法令124③④
契約書・利息配分表 利息区分あり
利息区分なし

○…受取利子の対象とする。(※法令…法人税法施行令)

Q35 還付加算金は、受取利子に含めますか。

A

還付加算金は、利息としての性質を有することから、受取利子の対象となります。(取扱通知4の3の2(15))

実務においては、還付加算金は「受取利息」勘定ではなく、「雑収入」等の勘定科目で経理されていることが多いことから、申告漏れとなっている場合が多くありましたので留意してください。また、還付金と還付加算金を一緒に経理している例もありましたので、このような場合に還付金まで受取利子に含めないようにしてください。

Q36 建設協力金に係る支払賃借料・受取利子の取扱いはどうなりますか。

A

金融商品に関する会計基準に基づき建設協力金を時価評価して資産計上し、返還までの期間に支払家賃及び受取利息を費用及び収益に計上している場合、当該費用及び収益が法人税の所得の計算上、当該事業年度の損金及び益金となるときは、支払賃借料及び受取利子として取り扱います。

建設協力金の支払時の時価と支払額との差額は、前払家賃の性質を有するものと考えられます。また、受取利息は、建設協力金の時価評価額を元本とした額の、元本×利率×期間で求められるものであり、受取利子に該当します。

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純支払賃借料

Q37 道路占用料、河川占用料、港湾施設占用料などは、支払賃借料に含めますか。

A

純支払賃借料の対象となる土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物又は附属設備を含みます。)の使用又は収益を目的とする権利には、地上権などのほか行政財産を使用する権利なども含まれるため、国・地方公共団体に対し支払う道路占用料や行政財産使用料なども支払賃借料の対象となります。(取扱通知4の4の2)

なお、土地上空や地中についても、地上権の範囲が及ぶため土地使用の対価に含まれ、支払賃借料の対象となります。

ただし、河川占用料や港湾施設占用料などの場合、占用許可等において土地又は家屋に係る使用の対価となる部分と公有水面部分が明確かつ合理的に区分できれば、公有水面部分の占用料は土地又は家屋に係る使用の対価ではないため、支払賃借料の対象となりません。

なお、公有水面とは、公有水面埋立法第1条において海、湖、沼その他公用の用に供する水流又は水面と規定されています。

Q38 建物の壁面を借りて広告物を設置したときの広告料は、支払賃借料に含めますか。

A

純支払賃借料の対象となるものは、土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物又は付属設備を含みます。) の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるものの対価です。(取扱通知4の4の3)

したがって、建物の壁面を借りて広告物を設置したときの広告料は家屋の使用の対価であるため支払賃借料に含めます。当該広告料が「広告宣伝費」勘定に計上されている場合においては、申告漏れになりやすいので留意してください。

なお、袖看板やビル屋上広告塔など、あらかじめ建物所有者等が設置した広告スペースに広告物を設置した場合は、構築物のみの賃借にあたるため支払賃借料には含めません。

Q39 従業員研修先の寮の宿泊料は、支払賃借料に含めますか。

A

純支払賃借料の対象となるものは、土地又は家屋(これらと一体となって効用を果たす構築物又は附属設備を含みます。) の使用又は収益を目的とする権利で、その存続期間が1月以上であるものの対価です。(取扱通知4の4の3)

したがって、寮を連続して1月以上使用している場合の法人が支払った宿泊料は支払賃借料に含まれます。

なお、ホテルに長期滞在している場合も同様で、連続して1月以上ホテルを使用している場合(部屋を替わった場合も含みます。)の宿泊料は支払賃借料に含まれることになります。

Q40 タンクの賃借料は、支払賃借料に含めますか。

A

支払賃借料の対象となるのは、土地又は家屋を使用又は収益を目的とする権利の対価の額で、使用又は収益できる期間が連続して1月以上であるものとされています。(法72の17②)

したがって、タンクが構築物に当たる場合、タンクのみの契約であれば純支払賃借料の対象になりませんが、タンクが土地又は家屋と一体となって効用を果たし、かつ一体となって取引されているときは純支払賃借料の対象になります。(取扱通知4の4の1)。

Q41 倉庫業者に対する保管料は、支払・受取賃借料に含めますか。

A

倉庫会社等に荷物を保管してもらう場合の保管料は、通常、一定の土地又は家屋を使用又は収益していると考えられることから、契約等において1月以上荷物を預けるものであれば、支払賃借料又は受取賃借料に該当します。(取扱通知4の4の9(5))

この場合の1月以上とは、個々の荷物の保管期間ではなく、契約等によりいつでも保管できる状態にある期間をいいます。

なお、保管料には単なる土地又は家屋の使用又は収益の対価のみならず、役務の提供の対価(例えば、出入庫料、温度管理費用、警備料)と考えられるものが含まれている場合がありますが、この場合において、契約等において出入庫料や保険料など役務の提供の対価の額が明確かつ合理的に区分されている場合には、役務の提供の対価の額を除いた額が支払・受取賃借料となりますので留意してください。(取扱通知4の4の5)

Q42 自動販売機の販売手数料は、受取賃借料に含めますか。

A

自動販売機を事務所や工場に設置させて、売れた本数に応じて販売手数料を受け取る場合、手数料には、土地家屋の使用収益の対価が含まれていると考えられることから、当該手数料は全額が受取賃借料の対象となります。ただし、明細書等で土地家屋の使用料と電気代や管理料が明確かつ合理的に区分されている場合は、電気代等は除きます。(取扱通知4の4の5)

なお、法人が自動販売機を賃借し飲料等を仕入販売している場合に受け取る販売手数料は対象外となります。

自動販売機手数料は通常「雑収入」勘定に計上され、申告漏れとなっている場合が多く見受けられましたので留意してください。

また、「雑収入」勘定等に計上されている電力会社等から支払いを受けた電柱敷地料、携帯電話基地局設置料等についても受取賃借料の対象となります。

Q43 社宅使用料は、受取賃借料に含めますか。

A

法人が社宅を借り上げて社員に貸与し、社員から一定割合の使用料を徴収する場合、使用料は受取賃借料となります。「福利厚生費」勘定等、賃借料が計上されていない勘定に使用料が計上されている場合、当該使用料が申告漏れとなっている事例が多く見受けられましたので留意してください。

土地建物を賃貸借する場合、水道光熱費、管理人費等を共益費等として支払っており、賃借料と契約書等で明確かつ合理的に区分されている場合は、共益費等は支払賃借料・受取賃借料に含めません。(取扱通知4の4の9(7))逆に、契約書等で明確かつ合理的に区分されていなければ全額が対象となります。(取扱通知4の4の5)

申告に当たっては、使用料の計算の中に共益費相当額が含まれていれば、支払う家賃、徴収する使用料ともに共益費の部分は除外する必要があります。社宅規程で共益費等の負担区分が明確になっていない場合は、使用料全額が受取賃借料となります。

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単年度損益

Q44 単年度損益は、法人税の所得とは異なるのですか。

A

単年度損益とは、法人の各事業年度における益金の額から損金の額を控除したものであり、原則として、法人税の課税標準である所得の計算の例によることとされています。(法72の18①)

しかしながら、法令において「損金の額に算入した所得税額がある場合の特例(令20の2の13)」等が定められており、法人税の所得の算定に当たって損金算入した所得税額は、法人事業税の単年度損益の算定については、当該所得税額を損金算入しないものとされるなど、単年度損益は法人税の所得とは異なる場合があります。

この他、法人税の例によらないこととして、次のとおり定められていますので留意してください。

  • 法人税法第57条に規定する青色欠損金の繰越控除等(法72の18②、取扱通知4の5の2)
  • 寄附金の損金算入限度額(令20の2の15)
  • 内国法人の外国税額の損金の額算入(令20の2の17)
  • 海外投資等損失準備金の積立金額の損金算入の不適用(法72の18②、令20の2の18)

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資本金等の額

Q45 資本割の課税標準となる資本金等の額とは何ですか。

A

資本金等の額は、「法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額に無償増減資等の額を加減算した額」と「各事業年度終了の日における資本金の額及び資本準備金の額(貸借対照表の額)の合算額または出資金の額」のいずれか高い金額を基礎とし、次の順序による算定を行った金額となります(内国法人の場合)。

  1. 収入金額課税事業(法第72条の2第1項第2号の事業)を併せて行う法人の資本金等の額の算定(令20の2の26①)
  2. 事業年度が一年に満たない場合の資本金等の額の算定(法72条の21③~⑤)
  3. 特定子会社の株式等に係る資本金等の額の算定(法72条の21⑥)
  4. 外国に支店等を有する場合の資本金等の額の算定(法72条の22①)
  5. 非課税事業を併せて行う法人の資本金等の額の算定(令20の2の26③)
  6. 1.から5.までの算定結果が1,000億円を超える場合の資本金等の額の算定(法72条の21⑦⑧)
  7. 所得等課税事業(法第72条の2第1項第1号の事業)、収入金額等課税事業(法第72条の2第1項第3号の事業)又は特定ガス供給業(法第72条の2第1項第4号の事業)のうち2以上の事業を併せて行う法人のそれぞれの事業に係る資本金等の額の算定(令20の2の26⑥)

 

Q46 自己株式を取得・保有している場合、資本金等の額から控除できますか。

A

平成18年4月1日以降に自己株式を取得した場合

資本割における自己株式の取扱いは、法人税法の「資本金等の額」の規定によるものとされますが、平成18年度法人税法改正により、自己株式が税務上も資本取引とされたことから、期末保有自己株式は法人税申告書別表5(1)では資本金等の額のマイナスとして処理されます。

したがって、外形標準課税上も自己株式の額のうち取得資本金額を控除する必要があります。

非上場株式を購入した場合は、取得時に株主に対して交付した金銭等の額のうち、対応する資本金等の額分(取得資本金額)については、直接「資本金等の額」を減少し(法人税法施行令第8条第1項第20号)、その金額を超える部分については「みなし配当」として利益積立金額を減少する(法人税法施行令第9条第1項第14号)こととなりました。

〈計算式〉

※計算した額が、交付した金銭等の額を超える場合は、交付した金銭等の額とする。
また、証券取引市場等で購入した場合は、取得価額を資本金等の額から減少させることとなります。(法人税法施行令第8条第1項第21号)

法改正に伴う「資本金等の額の経過措置」

平成18年3月31日現在保有する自己株式については、その帳簿価額を平成18年3月31日現在の資本積立金額から控除することとなりました。(平成18年度改正法人税法施行令附則第4条)

ここでいう自己株式の帳簿価額とは、改正前法人税法では、みなし配当の額がある場合は利益積立金額を減算(改正前法人税法第2条第18号カ)するため、帳簿価額は取得原価からこのみなし配当分を除いた後の額、つまり税務上の帳簿価額となります。

なお、以下の場合は自己株式の取得についてはみなし配当が生じないため、この経過措置において資本金等の額から控除する自己株式の帳簿価額は、会計上の帳簿価額と同一になります。(改正前法人税法第24条第1項第5号、改正前法人税法施行令第23条第3項)

  1. 上場企業による、証券取引所の開設する市場における購入
  2. 店頭売買登録銘柄として登録された株式のその店頭売買による購入
  3. 営業の全部の譲受け
  4. 合併、分割又は現物出資(事業を移転し、かつ、当該事業に係る資産に当該現物出資に係る被現物出資法人の株式が含まれている場合の当該現物出資に限る。)による被合併法人、分割法人又は現物出資法人からの移転
  5. 合併又は分割型分割により次に掲げる株式に対し株式割当等(当該合併又は分割型分割による当該株式の割当て又は当該資産の交付)を受けた場合のその株式割当等
    • ア 合併法人、被合併法人又は他の被合併法人が当該合併の直前に有していた当該被合併法人の株式
    • イ 分割法人の株式で、分割承継法人が当該分割型分割の直前に有していた株式
    • ウ 分割法人の株式で、分割承継法人が当該分割型分割により当該分割法人又は他の分割法人から移転を受けた資産に含まれていたもの
  6. 旧商法第220条の6第1項(端株主の端株買取請求権)の規定による買取り

Q47 いわゆる欠損填補を行った場合、欠損填補に充てた金額は資本金等の額から控除できますか。

A

平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間に、資本又は出資の減少(金銭その他の資産を交付したものを除く。)による資本の欠損の填補又は旧商法第289条第1項及び第2項に規定する資本準備金の取り崩しによる資本の欠損填補を行った場合、資本金等の額から欠損填補に充てた金額を控除します。(法72の21①Ⅱ)

また、平成18年5月1日以後に会社法第446条に規定する剰余金を損失の填補に充てた場合は、損失の填補に充てた金額を資本金等の額から控除します。(法72の21①Ⅲ)この場合の剰余金とは、会社法第447条又は第448条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し剰余金として計上したもので、損失の填補に充てた日以前一年間において剰余金として計上した額に限ります。(規3条の16②、③、④)

なお、旧商法又は会社法において当該欠損填補の効力が発生する日の属する事業年度より、欠損填補に充てた金額は資本金等の額から控除することとなります。

Q48 欠損填補に充てた金額を資本金等の額から控除する際に、提出する書類はありますか。

A

確定申告書を提出する際に、欠損填補を行った事実及び欠損填補に充てた金額を証する書類を提出してください。

具体的には以下の書類となります。

  • 株主総会議事録
  • 債権者に対する異議申立の公告を証する書面(官報の抜粋)
  • 知れたる債権者に対する催告を証する書面(催告書の写し)
  • 異議を申し立てた債権者があるときは、その者に対し弁済、担保等を供したことを証する書面(異議申立書、弁済金受領書、抵当権設定契約書等)

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分割基準

Q49 従業者数は、どのように算定しますか。

A

分割基準における事務所等の従業者については、当該事務所等に勤務すべき者で給与所得の対象となる給与等の支払を受けるべき者ですが、事業を経営する個人及びその親族又は同居人のうち当該事業に従事している者で給与の支払を受けていない者は受けるべき者として従業者数に含めます。その他、以下の点についても留意が必要です。(取扱通知9の1)

  • 役員は常勤・非常勤を問わず従業者数に含める。非常勤役員で2以上の法人の事務所等で勤務する者は、それぞれの法人の事務所等で計上する。
  • 入出向がある場合は、出向先の法人の事務所等の従業者として取り扱う。入向者は人数に含め、出向者は人数に含めない。
  • 派遣労働者は派遣を受けている法人の従業者として取り扱う。
  • 取扱通知4の2の5なお書きの名目上の請負の場合、請負側の法人の使用人は、注文者である法人の従業者として取り扱う。
  • パート・アルバイトの人数も従業者数に含める。

なお、資本金の額又は出資金の額が1億円以上の法人で主たる事業が製造業の場合、工場に勤務する従業者数は、期末の従業者数に当該数値の1/2を加えた人数とすることとされていますが、工場に本社や支店・営業所等が併設されている場合、これら本社や支店・営業所等の人数は工場の従業者に含めずそのまま数えます。

また、期中に廃止された工場の場合は1/2を加算する規定は適用されず、期中に廃止された事務所等の従業者の数え方に拠ります。

期中廃止の工場計算式

(法第72条の48第4項第1号、第5項第2号、第3号、令第35条、取扱通知9の2、9の3、「資本金の額又は出資金の額が一億円以上の製造業を行う法人の事業税の分割基準である工場の従業者の取扱いについて」(昭和37年5月4日自治丙府発第39号))

Q50 事業年度の中途で、事務所の新設、廃止等をした場合、事務所数はどのように算定しますか。

A

分割基準については、非製造業(鉄道・軌道事業、倉庫業及び電気・ガス供給業を除く。)の場合、課税標準の2分の1を事務所数で、2分の1を従業者数で関係都道府県に分割することとされています。(法72の48③)

事務所の数の算定に当たっては、事業年度に属する各月の末日現在における数値を合計した数値とされています。(法72条の48④Ⅱ)

例えば、事業年度の中途において、事務所を新設、廃止した場合においては、次のとおり算定することになります。

事務所数

また、事務所とは、それが自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所をいいますので、仮に支店登記をしていない場合であっても事務所として算定します。(取扱通知第1章第1節6(1))

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