ここから本文です。
かつては農村の農業用排水路やため池の水は、子供たちが安心して遊ぶことができる程、美しく澄んでおり、農業用水以外としてもさまざまな用水として利用されてきました。
ところが、昭和30年代からの高度経済成長を契機に農村地域における混住化及び生活の高度化・多様化の進展に伴い、家庭からの生活雑排水量の増加とともに水質悪化が進み、自然が本来持っている力だけでは浄化することができなくなりました。このため、農業用水の水質汚濁が進行し、農作物の生育障害、農業用用排水施設の機能低下など、農業生産に悪影響を及ぼすとともに、集落内の水路における汚水の滞留、悪臭、蚊やハエの発生源となるなど生活環境にも支障を来すようになってきました。
農業集落排水処理施設 西山地区(東かがわ市)
農業集落排水事業は、し尿及び生活雑排水を処理するための施設を整備するという点では、他の汚水処理施設と同様の機能を有しているものの、その役割は単に生活排水を処理するということだけでなく、汚濁水の浄化を通じて、
など、農村における構造政策を推進するうえで不可欠な条件整備を行っています。
香川県においては、下水道、農業集落排水事業、合併処理浄化槽などの生活排水処理施設の整備をそれぞれの地域の実情や環境特性に対応して、より効率的、計画的に進めるため、平成8年6月に全県域生活排水処理構想を策定しました。その後、社会情勢の変化に合致するよう約5年後に見直しを行っています。平成27年度には平成37年度を目標年次とする「第4次香川県全県域生活排水処理構想」を策定し、県下全域を対象にそれぞれ地域の実情や環境特性に応じたより効果的・効率的な生活排水処理施設の整備構想の実現に向けた取組を推進しています。
構想では平成37年度(目標年次)までに生活排水処理率を概ね85%に向上させることにより、県下の全河川の環境基準達成を目指すとともに、瀬戸内海の水質保全を図り、快適でうるおいのある水環境を県民共有の財産として守り、次の世代に引き継ぐことや、処理水や汚泥の資源化に努め、リサイクル型で環境にやさしいまちづくりに推進することを目標にしています。
項目/年次 | 現況 (平成25年度) |
中間年次実績 (平成32年度) |
目標年次 (平成37年度) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
整備人口 | 整備率 | 整備人口 | 整備率 | 整備人口 | 整備率 | |
香川県総人口 | 1,005,911 | 937,300 | 899,700 | |||
下水道 | 437,960 | 43.5 | 443,047 | 47.3 | 440,627 | 49.0 |
農業集落排水施設 | 17,690 | 1.8 | 15,460 | 1.6 | 13,788 | 1.5 |
漁業集落排水施設 | 944 | 0.1 | 898 | 0.1 | 842 | 0.1 |
合併浄化槽 | 268,946 | 26.7 | 289,948 | 30.9 | 309,293 | 34.4 |
コミュニティ・プラント | 516 | 0.1 | 479 | 0.1 | 457 | 0.1 |
計 | 726,056 | 72 | 749,832 | 80 | 765,007 | 85 |
平成25年度末の生活排水整備人口は約726千人、整備率は、約72%となっています。整備率の全国平均が約89%となっていることから、全国的にみて香川県の生活排水整備は大変遅れています。
本県最初の農業集落排水処理施設
津田地区(さぬき市)
岡処理場(丸亀市飯山)
農業集落排水処理施設は、農村地域の特性に適した小規模分散型の生活排水処理方式を採用しており、処理水はため池や農業用用排水路に還元し農業用水として再利用できるなど、水事情に恵まれない本県にとって非常に有効な処理システムです。
一人一日当たりの水使用量は、約270リットルで、1,000人程度の農業集落を対象とした施設の場合、1日、270トンもの水が再利用できることとなります。一年では約10万トンとなり大規模ため池一箇所分にも相当します。
また、数集落を対象とした小規模な施設からの処理水は地域内の小河川や用排水路における自然の浄化能力を活用して、一段と汚濁物質を除去することができることから、自然の水循環を促進できる施設となっています。
このように農業集落排水施設は、生活雑排水の水質浄化や農村の生活環境の改善だけでなく、処理水の再利用や汚泥のコンポスト化による農地還元を通して、自然が自ら持つ浄化能力で昔の美しい自然環境に戻す側面を持っており、自然にやさしい水処理施設です。
現在、汚水(し尿、生活雑排水)のうち、75%が生活雑排水に係るものとなっています。この生活雑排水は、家庭での工夫により大幅に改善することができます。生活雑排水の処理化の有無にかかわらず、次のことに心がけて少しでも排水量や汚濁物質の量を減らすようにしましょう。
生活水準の向上に伴い使用水量が増加していきますが、水は使えば汚れます。私たちの暮らしと水質汚濁の問題は、一人一人が加害者であり被害者であるということを十分認識し、自分の手で汚す範囲と量を削減することからはじめてみませんか。
水質浄化は一人一人の心がけを基本として、農業集落排水施設の設置により、農村の水質保全やよりよい生活環境の実現を目指しましょう。
このページに関するお問い合わせ