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公開日:2020年12月10日

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資金の運用管理

経営にとって利益採算は非常に人切ですが、それに劣らず資金の運用管理が重要になります。"黒字倒産""勘定合って銭足らず"といった言葉がそのことを教えてくれます。資金運用管理のポイントは、資金の不足の原因、資金の不足額を正確に知ることです。
つまり資金運用の分析をきちっとすることなのです。
もう一つのポイントは資金繰りです。経営の流れの中で資金がどう動くかどう動かさなければならないかというタイミングを正確にとらえて対応することです。
新規就農を希望する方が稲作を始める場合を考えてみましょう。まず、適当な農地を探し、購入(または借入)します。次に農作業に必要なトラクター、コンバイン、田植機、乾燥機などの施設・機械装備を整えます。こうした設備に必要な資金を設備資金といいます。
農業はこうした最初の設備資金だけでは経営はできません。作物の種苗、肥料、農薬、機械を動かす燃料なども買わなければならないし、農繁期にパートを雇えば賃金も払わなければなりません。
種子代、肥料代、農薬代、燃料代などの直接生産に必要な生産資材費や労務費、諸経費などの支払いに充てる金が必要になります。これを運転資金といいます。
このように事業を行う場合、設備資金と運転資金の二つが必要になります。別に資金に色がついて、これが設備資金、これが運転資金というわけではありませんが、資金運用管理を考えるうえでは、この二つを分離して考えなければなりません。

調達がポイントの設備資金

農地や機械・施設などの設備は、一般的に固定資産といいます。固定資産は「1年以上経たなければ現金化の可能性のない資産」であり、現金や預金などの「1年以内に現金化の可能性のある資産」である流動資金と区分されます。
1年以上経たなければ現金化の可能性がないということは、資金的には長期的に資金を拘束する資産であるということです。
現金で設備資産を購入するということは、現金が設備に代わって長期的に寝てしまうことを意味します。設備資金は最初の計画段階でその量は明確になります。
例えば、農地を1ha購入するための費用は2千万円とすると、事前に必要な資金の大きさは明確になります。しかし、その農地の購入によって2千万円の資金が長期にわたって寝てしまうわけです。その資金をどう賄うか、調達するかが設備資金の問題となります。
長期的にわたって固定してしまう資金を賄う最良の方法は、常識的にいって固定化してもよい資金で行うことです。だが、資金を調達してくるとなんらかの意味で調達コストがかかるのです。農協、銀行から借り人れて調達すれば支払利息がかかるわけです。
利息のかからないのは自己資金ですが、いつでもそんな資金が手元にあるわけではありません。通常、長期で低利の制度資金がこうした設備投資には有効に働きます。
このように調達コストの最も低い利息で設備資金を賄うことが資金運用管理の重要なポイントなのです。

運転資金は量の把握が大事

経営を行うことによって、現金はさまざまなものに変わります。再び現金として経営者の手元に戻ってきますが、生産資材を購人し、農産物を生産し、販売し現金として戻ってくるまでには一定の期間を必要とします。
特に農業の場合は、稲作のように1年に1度しか収穫できないことからその期間は非常に長くなります。
ところで、その期間にも生産資材を購入したり、経費を支払ったりするための余分の資金が必要になります。
運転資金は、この期間に必要となる資金のことなのです。現金が戻ってくるまでの期間を予測し、どれくらいの現金があればいいのかを把握するのが重要になります。
つまり運転資金は、その金をどこから集めてくるかという問題より、現金が戻ってくる問にどのくらいの資金の量があれば経営がもちこたえられるのか、どのくらいでもちこたえられないのか、といったことを明確にすることが資金運用管理のポイントになります。
このように、設備資金と運転資金とでは運用管理のポイントが異なります。すなわち、設備資金では調達の問題が、運転資金では量の問題が運営管理のポイントになるのです。

 
 
 

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