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香川の魅力
目次
丸亀うちわのさぬき風 サヌキモノウチワ
猛暑に清風を届けてくれる「うちわ」
夏に使うものとばかり思っていたら一年中人気の「うちわ」があるという
日本一のうちわ産地・丸亀市のうちわづくりの技から生まれた「サヌキモノウチワ」
讃岐らしいデザインの数々に暑さも忘れ思わず眺めてしまう
「サヌキモノウチワ」のロゴマークはオビカさんが制作したもの。
1600年(慶長5年)に始まったという丸亀うちわは、こんぴら参りのお土産として人気を博し、全国のうちわ生産量の9割を占めるまでに育った。その陰には、一本の竹から幾十ものうちわの骨を作り出し、鮮やかに和紙を貼って形を整えるという繊細な職人の技がある。「サヌキモノウチワ」の作り手である兵頭恵子さんも、そうした職人の一人である。16年前に職人の技を継承するための「丸亀うちわ技術技法講座」(※)を受講し、それ以来、うちわづくりを学び続け、今では香川県伝統工芸士の資格を持つ。
兵頭さんに、新しい丸亀うちわづくりのためのコラボレーション企画が持ち込まれたのは2013年。「私には荷が重い」と一度は参加を断ったのだが、その心を動かしたのはオビカカズミさんの作品だった。
オビカさんは、それまで当たり前のように思っていた香川の食や文化を、県外の人々が次々と褒めてくれたことで、ふるさとの魅力に気付いた。オビカさんの描く讃岐モチーフはどれも表情豊か。兵頭さんはその作品を見てうちわのデザインとして、こんな形にしたら面白い、とアイデアが湧いてきた。
何より二人は気が合った。姉妹のように親子のように気兼ねなく語り合い「サヌキモノウチワ」の作品が次々と生まれる。2014年には、かがわ県産品コンクールで審査員特別賞を受賞。お土産に、インテリアにと、各所から引き合いがあり、当初五つだったデザインは現在、十数種類になった。
オビカさんは「讃岐モノ」の愛嬌たっぷりの表情をデザインに込める。時には色や形の駄目出しをすることもあるという兵頭さんは、オビカさんの絵をにらんで唯一の形を模索する。讃岐ならではの絵柄に加え、懐かしの島フェリーやローカル電車も登場した。「乗り物が好きなので、次は列車を描いてみたい」と夢を膨らませるオビカさん。「今年こそは来年の干支を早く描いてね」と母の口調でほほ笑みかける兵頭さん。二人だから温かい、二人だから面白い「サヌキモノウチワ」の秘密を垣間見る。
初対面の折、兵頭さんが制作していたのが、ろうそくの火を消すための「御灯明(おとうみょう)うちわ」だった。ひょろっと長い柄がオビカさんの心をつかみ、基本のデザインが決定した。壁に飾っても、筆立てに入れても映える。
うちわの歴史をひもとけば、古墳時代に中国から伝わった木製のものも、「団扇(うちわ)」という言葉が生まれた十世紀頃のものも、ずいぶんと柄が長い。当時は、あおぐというより、邪気を払う道具として、あるいは高貴な人が顔を隠す道具として使われていたという。コロナ時代の「サヌキモノウチワ」は、丸亀うちわならではの柔らかな風と表情豊かで愛らしいデザインが、悪しきものを払ってくれそうに見えてくる。
国の伝統的工芸品である「丸うちわ」には47もの工程がある。写真はうちわの骨をつくる「割き」の工程。「切込機」を使い、同じ間隔で32~42本に裂いていく。
オビカさんの描く讃岐の名物は手ぬぐいにもなっている。
一本の竹から幾本ものうちわの骨を削り出していく。
(※)香川県うちわ協同組合連合会による「丸亀うちわ技術技法講座」。毎年10月頃に1日のみ募集があり、面接により8 人が決定。16日間かけてうちわづくりの基礎を習得する。問い合わせは「うちわの港ミュージアム」。
うちわの港ミュージアム |
かつてはこんぴら船の港としてにぎわった丸亀港にあり、丸亀うちわの歴史と技をわかりやすく伝え実演と販売も行う。 |
電話:0877-24-7055 営業時間:午前9時30分から午後5時 定休日:月曜日 |
関連リンク/「サヌキモノウチワ」の主な販売店
香川県伝統工芸士 愛知県名古屋市生まれ。夫の実家がある香川県へ移り住む。2019年に香川県伝統工芸士の資格を取得。伝統的な丸亀うちわのほかにオリジナルの創作うちわに取り組む。「うちわの港ミュージアム」で実演を行うこともある。 |
イラストレーター 香川県高松市生まれ。地元の短大卒業後、デザイン会社数社で経験を積んだ後、2006年に独立。県内のみならず東京での個展開催や、企画展への参加など精力的に活動。2021年2月、四国在住の仲間たちと「JPN47 にっぽん絵図(講談社刊)」を出版。 |
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