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香川の魅力
目次
伝統工芸の技を掛け合わせた作品で、新たな魅力を世界に発信する「TASUKI - Int .(タスキインターナショナル)」。歴史的文様や色を世界が称賛するアートへ昇華させ、リレーの襷のように伝統の技を次世代につなげたいと願う。
伝統の文様を新たな視点で楽しめる万華鏡。
漆器は食器というイメージが強いが食洗機が当たり前の暮らしにはなじみにくい。食以外の目的で生かせないかと考え「かんざし」として商品化。香川漆器の箸に「讃岐の手まり」が揺れる。
かつて神戸や岡山のアパレル業界で活躍していた佳瑛さんは、香川県の伝統工芸「組手障子」を手掛ける森本建具店の森本隆さんと出会い、木組みの素晴らしさを知る。布の世界しか知らなかった佳瑛さんにとって、木を素材とする「組手障子」の技は新鮮で興味深いものだった。やがて隆さんと結婚し、建具の中に精密に作り込まれた文様を組み込む仕事「葉っぱ入れ」を担当するようになる。この素晴らしい技を残すにはどうすればよいのかと考えると、既存の品にはないアイデアがひらめくのだが、古参の職人さんたちはなかなか耳を傾けてくれない。それでも、佳瑛さんのデザインした組手障子が次々と賞を取り、3年後には一目置かれる存在となる。そこで、隆さんと共に文具やハンドバッグ、アクセサリーなど組手の技を使ったさまざまな品を生み出していった。
その中で、他の伝統工芸の技とのコラボレーションを試みるようになる。それぞれ妥協を許さない伝統工芸の技同士を掛け合わせることは簡単な話ではない。しかし、ひとたび信頼を得れば、見事な華を咲かせる。佳瑛さんは、「こうしてほしい」というオーダーは出さない。「こんなものがあれば良いのに」と提案をするのだ。すると技を駆使した想像以上の提案が返ってくる。
木組みの強度を生かした椅子は讃岐のり染とのコラボ作品。
基本型を身につける"守"、型を越え個性を発揮する"破"、舞台を変えて活躍する"離"。
" 守破離"を信条に伝統工芸の技を違うフィールドで輝かせる。写真はイヤリング。
一方、生活様式の変化や後継者不足により存続の危機を持つ、香川漆器、讃岐のり染、盆栽、讃岐装飾瓦、そして組手障子の職人が集まり、「讃岐ざんまい」が立ち上がった。伝統工芸の技を生かしコラボすることで、今の暮らしに合った品物を送り出そうという職人集団だ。香川県は小規模な生産地のため、分業化が進まず工程の全てを手中に収めている職人が多い。アーティストともいえる職人の一存で新たな試みを成功させやすい土壌があることが、このプロジェクトを加速させている。
「讃岐ざんまい」の活動の傍らで佳瑛さんは「TASUKI -Int.」を立ち上げた。組手障子や地域にこだわらず伝統工芸士の技を融合させ、新たな可能性を見いだすためだ。ここで生まれた商品は、基本的に国内販売をしない。海外での展開で、価値がわかる人のみをターゲットにしたいと考えている。また、従来の価値観や用途にこだわらず、その美を生かした作品を生み出したいと企画している。
そのビジネスモデルで香川県産業支援財団の「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2020」に応募、最優秀賞に輝く。受賞を追い風に、いよいよ海外に打って出るというタイミングで、コロナ禍で足止めを余儀なくされる。その間はじっくりと試行錯誤を重ね、ようやく再スタートの時を迎えた。作品にほれ込む協力者も増え、伝統工芸というよりアートとしての評価が返ってき始めたという。現在はネット販売に頼るのではなく、オンラインでの展示会やワークショップを計画中だ。佳瑛さんのグローバルなまなざしは、組手障子をはじめとした香川の伝統工芸界を、新たな世界に導くに違いない。
10歳の頃にはすでに自分の服をデザインしていた。当時は母がそれを仕立ててくれていたが、今は創り上げたアクセサリーに合う洋服を自らデザインし縫い上げている。
森本佳瑛(本名:理恵)さん 1962年岡山県倉敷市児島で誕生。1980年大阪モード学院に進学。1984年卒業と同時に神戸市の子ども服メーカーに就職。2002年岡山の制服メーカーに転職。2006年結婚により香川県へ。2020年TASUKI-Int.を立ち上げる。同年、香川県産業支援財団「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2020」最優秀賞受賞。 |
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